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賛歌 ダダ漏れのDark Matter 鉛色の重力 ―—街を歩いてもアスファルトに走る無数の 亀裂から滲み出てくる闇を見つめるだけだ―— ああ この皮膚がすべて剥がされても 感じているか? 動いている 動いている 闇の中で 蠢く者がいる おう 耳孔で劣化ウラン弾が爆ぜようとも 聴こえているか? 無限に遠く 無限に近い 闇の中で 囁く者がいる 押し黙った孤独な獅子の心音を聴く どこか森閑とした場所で 赤ん坊がむずがっている 夜の
瞑目した胎児が抱いている灰色のあぶくは、光と色彩を閉じ込めたまま、徐々に干からびてゆき、固い小さな意識のしこりになる。胎児は海老の干物のように丸まって、街に降り積もる灰の中に埋もれてゆく。 ある種の線虫は、白銀の極冠に発生時の記憶を影のように落とすと、瞬時に凍結してしまう。双翅目昆虫の幼生は、永久に溶けない樹氷に緊縛されると、若草色の時間をじわじわと氷の中に吸い取られてしまう。 同様に、乾燥してゆく胎児は、冬の到来を待つことなく、視界の遮られた灰の砂漠の中で、濃紺の夢
・Geometrical arachnida・「|/「/│/┌─―|/┌─―/― 幾何学的なくせにネバネバした、巨大な蜘蛛の巣に過ぎなかった都市は、街のそこら中で汚れた糸が筋を引いて、互いにくっ付き絡まり合って、全くにっちもさっちも行かなくなった。あちこちに転がる黒灰色の塊の中には、大量のアブラ虫やシデ虫や、臨海工業地帯ではフナ虫が巣を作り、ザワザワ出入りしてはそこら中を這い回っている。 /┌─―/「」/│/┌─/─/ ・Three-dimensional lattice