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詩・散文詩の倉庫02
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2023年3月の記事一覧

受付

砂浜に受付のデスクが ぽつんと一つ   前方には潮の引いた藻場が 遥か遠くの波打ち際まで ずっと拡がっている   こんなところで 何を受け付けるんだろう   デスクの上に置いてあった 海の図鑑を開いてみると いろんな星の海が泳いでいた   地球の海は昼寝をしていたけど 月の海のキスで目を覚ますと 上機嫌で泳ぎ出した   ぼくも誰かとキスしたいのに 今はここで椅子に座って 受付の準備だ   遙かな沖合から ブルーの戦慄がやって来る

Co., Ltd.

トラスケぇ! こりゃあなんなら。コンクリ引っぺがしたら虫がうじゃうじゃおるど! Co., Ltd.  Co., Lt d. Co.,Ltd. Co., Ltd.Co., d. Co.,  L td.  Co., Ltd.Co., Lt d.Co., Ltd.  Co., Ltd. Co.,  Ltd. Co.,  Ltd.Co., Ltd. Co., Ltd.  Ltd.Co., Lt  d.Co.,Co., o., Ltd.Co.,  Lt  d.  Lt  d.Co.

クリプトビオシス

瞑目した胎児が抱いている灰色のあぶくは、光と色彩を閉じ込めたまま、徐々に干からびてゆき、固い小さな意識のしこりになる。胎児は海老の干物のように丸まって、街に降り積もる灰の中に埋もれてゆく。   ある種の線虫は、白銀の極冠に発生時の記憶を影のように落とすと、瞬時に凍結してしまう。双翅目昆虫の幼生は、永久に溶けない樹氷に緊縛されると、若草色の時間をじわじわと氷の中に吸い取られてしまう。   同様に、乾燥してゆく胎児は、冬の到来を待つことなく、視界の遮られた灰の砂漠の中で、濃紺の夢

おきよ

事務机の引き出しを開けると そこには丘陵みたいなものがあり 頂きの白っぽい通信塔から ヒトの鼻の嗅球に オカラみたいなものを放射する   丘陵みたいなものに立つと 向こうに海みたいなものが見えて 輪っかのある惑星みたいなものが 半分くらい沈みかけていて 惑星みたいなものに立つ建物には おきよという事務員がいる   望遠鏡で覗いてみると おきよは黒い腕ぬきを外し 経理の仕事を放っぽり投げて 向井のチヨミ姉さんという ブガルーパンツ女と出奔した   二人がしけ込んだ温泉宿は わが