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爽やかな初夏の朝 コーヒーショップの窓の外では スズメ達が噴水に集まって 小さな翼をシャンプーしている 音大行きのバス乗り場では 客はバスの屋上にハシゴで登り ピアノを楽譜初見で弾かないと 乗せて行ってもらえないそうだ ラヴェル先生が入試用に作曲した 『プレリュード』を上手く弾けない人は スズメの冠婚葬祭のための祝い歌や レクイエムを補習させられている 遠い昔 私も高校の体育館で ザ・ローリング・ストーンズの曲の イントロをトチったことがあるから 何処かで補習を受ければよかっ
コーヒーショップに夏が来て 向かいの席の女子高生が ブルーソーダを飲み始めた 青い液体をストローでチュー コップの中身が減っていくにつれ 女子高生は足先から海になっていく 水位は下腿から太ももへ お尻からウエストへ胸へと上昇し ブルーソーダを飲み干した時には 頭のてっぺんまで真っ青な海になった 途端にバッシャーン! 身体が崩れて 海水が一気にぶち撒けられた 店内はたちまち一面の海になり セーラー服がゆらゆら浮かんでいる 客達は取りあえず泳ぎ始めた 潮汐と潮流の循環が始まり セ
お昼過ぎには スーツ姿のサラリーマンが多い コーヒーショップでほっと一息だね みんなノートパソコンを開いて 液晶画面を覗きながらコーヒーを飲む 私のはもっと小さいミニノートパソコン いいでしょ 仕事用じゃないもんね えっへん 詩を書いておるのだぞ なんてお仕事中ごめんなさいっ! 愚にも付かないことをコソコソと‥‥ ここまで書いてコーヒーを一口啜ると 隣りのテーブルのサラリーマンが覗き込んで 「きみ、それは違うよ」と言ってきた 「我々は現在はリーマンと呼ばれている。 ベルンハル
トーストセットを注文すると 今は春のキャンペーン期間中とのことで 赤い三角くじを引かされた 「お目出とうございます。当選です」 グラマラスなウェイトレスが言うには 姪っ子が一人当たったのだそうだ 長い間会ってないなぁ…… テーブルに着いて待っていると ずいぶん成長した姪っ子が現れた うんうん可愛くなったじゃないか ふふ 胸もふくらんできているな 私はなんだか気分を良くして 姪っ子の顔にマーガリンを塗りたくり ペタッ! 額にぽち袋を貼り付けてやった それはいいとして 今日はあの
コーヒーをひと口飲んで カップを皿に戻すと バッチコーン! 右頬に張り手が飛んで来た もうひと口飲んで カップを皿に戻すと バッチコーン! 今度は左頬に張り手が飛んで来た ひるまず三口目を飲もうと カップに手を伸ばしたら 中からセピア色の雲みたいなものが もくもくもくもく湧いて来て ヤッ トッ トゥ! ドッス コイッ! すもう取りの摺り足で前進しながら 私の胸や肩を突き押しして来る おおっと! おっ? おおっ? 即座に立って応戦を試みたが 相手のマワシを掴むことはおろか いな
コーヒーショップで冷コ中 窓の外ではトウモロコシが 半被を着てイカ下足を焼く夏祭り 駅前広場に設営された 野外ステージではカラオケ大会 たまにはこういうのもいいな 近くの信用金庫のOLが 敏いとうとハッピー&ブルーの 『ぎんざのお地蔵さん音頭』 (S.55 キャニオン)を歌うと スイカが裸足で逃げ出した 続いてケアハウスなごみの事務長が 森雄二とサザンクロスの 『母性本能』(S.53 クラウン)を歌うと タイ焼きが身悶えして衣を脱ぎ捨て あんこを投げ付けて抗議している よりに
ベビーカーを押すお母さんが コーヒーショップに入ってきた 乗っている赤ん坊は周囲への目配りが鋭い スマホで大声で話している人がいたが 赤ん坊はまるでカメレオンみたいに 眼にも止まらぬ速さで舌を伸ばし スマホを取り上げてしまった 取り戻そうと詰め寄った人は 赤ん坊の眼から照射された光線で アヒルに変えられてしまった ほわふらっくぅ~と唸っている お母さんは「まあダメよ」と言って 乳頭から解除液を噴射して人間に戻すと 「すいませんねぇ」 謝りながらスマホを返していた こないだテレ