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リアル桃太郎
桃太郎の3人の家来中随一の熱血漢であり、正義感あふれる犬は悩んでいた。
鬼ヶ島で暮らしていた鬼たちを宣戦布告なしに襲撃し、問答無用で成敗という名の虐殺、あまつさえ島の金銀財宝を根こそぎ接収…
そこに本当の「正義」はあったのか?…と。
そんな懊悩の帰路の中、パーティ内の知恵袋でもある最年長の猴が、こう言って手を差し伸べてきたのだ。
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「猴さん…」
犬は思った。
もう一度、桃太郎を信じてみよう。
いや、猴が信じている桃太郎を信じてみよう、と。
差しのべられた猴の手をしっかりと握りしめ、立ち上がる犬。
見つめ合う二人の目には熱い力がこもっており、
もうそれ以上言葉は要らなかった。
そんな二人を、少し離れてところで見ている雉のホロロ。
生来涙もろい彼の顔は、すでに涙でぐしょぐしょになっている。
ケーン、ケーンと嗚咽したいところをぐっと堪える。
鳴いてしまうと、どこからともなく撃たれる危険性があるからだ。
――『リアル桃太郎』第4章 正義の名のもとに
より一部抜粋
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