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年下先輩からのアプローチが地味に凄い件について。

緊張するなぁ…

そう思いながら桜が散った木々を眺め、足を進めている僕は大学進学の機会とともに上京をした。

つまり、都会で夢の一人暮らしだ!

だけれど、食費に光熱費に家賃…
仕送りは貰っていても足りない部分は自分でどうにかするしかない⋯

引っ越して数日。
この街を散策していると雰囲気の良さそうな喫茶店を見つけ、僕の直感がビビッときた。

ここで働きたい!

思い立ってはすぐ行動という事ですぐに連絡をして、面接の結果は無事採用。

今日がその初出勤というわけで。



「今日からお世話になります。△△○○です。」

そう挨拶をすると、お店には面接を担当してくれた店長さんともう1人、
黒髪が似合っている綺麗な女の子がいた。

店長さんには笑顔で手を振りながら挨拶をされ、和やかな人だな〜なんて思っていた。
女の子の方はというと⋯

"店長。誰ですかこの人⋯"

"この前言ったじゃない!好青年くんが新しく入るよって!"

"この人がその…"

"そうよ、美羽ちゃんも晴れて先輩!
△△くんの方が歳は1個上だけどね。"

"先輩か⋯"

会話は筒抜けで、どうやら僕が来る事を美羽ちゃんと呼ばれていた女の子は分かっていなかったらしい。
最後にボソッと呟いた後、
嬉しそうな表情をしていたのが可愛かった。

『あ、村山です⋯』

さっきとは裏腹、
無の表情になった彼女に簡潔な挨拶をされて村山さんから基本的な仕事を教えて貰うことになった。



あんまり良く思われていないんだろうなと考えていたけれど、仕事内容については優しく丁寧に教えてくれる。

意外にも親切でなんだか掴めない人だな…なんて思っていると、

『△△さんはどうしてこの店で働こうって思ったんですか?』

と質問が飛んできた。

「うーん、直感ですかね?店長さんも優しそうな感じがして。雰囲気がいいなって。」

『⋯えっ、私も。
でも今はこの店のタルトが好きで。』

『⋯なんか仲良くなれそうです私達。』


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ようやく緊張した初出勤が終わりを迎え、帰る準備をしていると二人の好意でさっき話していたタルトを食べさせてもらえることに。

『美味しいですよね?』

なんてじっと目を見つめてくる彼女は数時間前とは全く違う印象をしていて。

『歳近いしタメでいいですよ。美羽ちゃんって呼んでくれれば。』

『あ、でも先輩って呼ばれるのも…』

と、一人で押し問答した村山さんの事を結局、美羽先輩と呼ぶ事になった。


それからはシフトが重なると、



『○○くん、あれ取って。』

「はい。ってあっ…」

『んふふっ。お手手触れちゃった。』

「⋯よくよく考えたら
美羽先輩身長高いから取れたよね?」


だったり⋯


『後輩くんやい。大学で仲良い子できた?』

「まあそれなりにはいるけど。どうした?」

『その、女の子とかは?』

「何人かはね。
今度遊びに行こうって話してたりするけど…」

『⋯⋯む、、
終わったら一緒に遊び行く。先輩権限。』


美羽先輩から物凄い勢いで距離を詰められている気がする…
知らない土地で不安だった中、こうして仲良くなれる事は嬉しくて悪い気はしないけど。

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ざわざわ⋯

大学の講義終わり。いつものように友人と帰路についているとなんだか妙に正門前が騒がしい。


"なにあの可愛い子⋯"

"制服姿だから高校生じゃね⋯!?"


『あ、○○くん来た。』

まあ自分には関係無いでしょなんて思っていたら、
聞き覚えのある声で話しかけられる。

「⋯はっ!?美羽先輩!?」

『待ってたんだよ。
今日シフト入ってないし放課後デートしたいなってー。』

「いや、ちょっ……」

何のためらいも無くデートだなんて言われ、突然の出来事に戸惑っていると、
美羽先輩は友人たちの間に割り込んだと思えば
自分の腕と僕の腕を絡ませて、手のひらまで繋いで。

そして、小声で耳打ちを。


『見せ付けとこっかなって。』


"お前、高校生とどんな関係してんだよ…"

"○○こんな可愛い子をたぶらかして…"

などと友人たちの罵詈雑言が後ろから聞こえてきたが、反論の余地すら与えさせてくれない笑顔の美羽先輩に強引に腕を引っ張られて連れていかれた。



「あの、ちなみにこれはどこに向かってるの⋯」

『決めてない。』

「デートしよって言ったのに?」

『それはそうだけど。
⋯こないだ女の子の話聞いて、○○くん取られるの嫌だなあって。』

「いやわざわざ来なくても…」

『他の女の子の所行かない?』

「そりゃ…うん。」

『んふふ。そっかぁ。』

「⋯本当に僕でいいの?」

『⋯じゃなかったら迎えになんて来ないもん。』


『ちゃんと好きだよ。』


繋がれていた手をよりギュッと強く握られてこれは夢じゃない事を自覚した。
並んで歩く君の横顔は薄ら桜色に染まっていて。



数日後。

『ねえ○○くん好きだよ。』

「可愛いなぁほんと。僕も大好き。」

『えへへへっ。ぎゅーしよ?』

「うん。って…見られてる。」


"こら〜!急に仲良くなったと思ったら…お二人さんイチャイチャしすぎ!仕事終わってからにしなさい!"

end.

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