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どうやら誕プレを求めて家に押しかけに来たみたいです。
「なあ村山。」
『⋯⋯』
「おーい、村山ぁ〜?」
『⋯なに。聞こえてるから。』
「聞こえてんなら返事してくれよ…
ってそれよりお前さ⋯」
「なんで今日に限って俺の家来た訳?」
『別に良くない?』
「いや、良いんだけどさ…
他に友達とか彼氏いないの?」
『⋯はぁ?友達は居るし
彼氏なんていたら○○の家来ないから。』
「にしても、自分の誕生日に俺の家来るか?」
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『⋯そういう気分だったの。』
俺の安息の地である1K7帖の部屋。
置かれているソファーを我が物顔で使われるのにはもう慣れた。
大学生活2回目の春休み。
俺が実家に帰らない事をいい事に最近入り浸っているのは同じ学部の村山美羽。
彼女とはなんとなく波長が合うからと
一緒に学生生活を過ごす事が多かったのだが⋯
普通に考えて誕生日に人の家で
怠惰な時間を過ごしに来るもんなのか…?
「はぁ〜あ……」
『⋯なに。』
「二十歳の誕生日なのに、
村山はぐうたらしてるだけで良いのかなと。」
『じゃあ、誕プレの一つや二つでもくれる?』
「お前っ…もしかしてそれ目的で今日来たのか?」
疑いながらそう尋ねると、
彼女は顔の半分だけが見える様にこちらに振り返って、
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『そうじゃないけど…そういう事にしとこっかな。』
今日初めて見せてきた笑みと共に、
数時間後には俺の財布が軽くなっているんだろうという悪寒を感じた⋯
"行きたい所がある"
と、言われ連れて来られたのは郊外の海辺。
高い買物に付き合わされると思っていたが
随分、意外な場所だった事になんだか拍子抜け。
『見て見てっ。アレ綺麗。』
砂浜を指差しながら
八重歯を見せて笑う彼女を見るのが新鮮で。
『あ。そんなに楽しくない感じ?』
「違う違う。」
『んー、私だけはしゃぎ過ぎてたね。』
「いや、村山ってあんな表情するんだなぁって
感慨に耽けてただけ。」
『⋯あのさ、難しい言葉使わないでくれない?』
「まあ良いもん見れたって事で…」
『⋯ね、ここでお酒飲んでみたいかも。』
それから、潮風に当てられながら二人並びで
海沿いの道を歩いてコンビニへ。
「何だったら飲めそう?」
『ん、チューハイとか。』
「じゃあ俺はハイボールにでもするかな。」
『後でそれ一口…頂戴。飲んでみたい。』
「ん?あぁ…村山が気にしないならいいけど。」
『○○のならいいよ。』
会計は勿論、俺持ちで。
レジ袋を持つのも。
長身な彼女でもれっきとした女の子なのでね。
海辺への帰り道、彼女は鼻歌混じりでご機嫌で。
もう酔ってる?なんて思ったりして。
"じゃ、村山おめでとう。乾杯っ。"
『っん…ジュースの中に変な味って感じ…』
「んー美味っ。
チューハイでそれなら俺の飲めないでしょ。」
『いやっ、何事も経験…だから飲む。』
「おいっ…そんな無理して飲むもんでもっ…!」
『⋯うええっ…私にはまだ無理かも。』
「まあこれから慣れてこうな…」
返された缶の口部分に付いた口紅。
それに気を取られていれば、
肩に重さと温もりを感じ出す。
「む、村山っ…?大丈夫か、酔った?」
『ううん。少しだけ…こうさせて。』
心地良さそうな顔をして海を眺める彼女とは
裏腹に心配になったりして。
香水の良い香りが潮風に乗って鼻腔に到達してきたり。
そうして空が茜色に染まるまで海を眺めていた。
『…ねえ。』
『⋯冬の海って人が少ないから良いよね。』
「ん…ああ。確かに静かでいいよな。
波の音も綺麗だし。」
『⋯その、今日は付き合ってくれてありがと…』
「それより誕生日過ごすの俺で良かったの?」
『鈍感っ、馬鹿…。
私は…○○が良かったのっ。』
「⋯は、はぁ!?って事は…」
『私はね、好きじゃない奴の家に誕生日なのに
わざわざ行ったりしないっ。』
肩に感じていた重さが痺れと変わった時。
視界に入っていた夕焼けが彼女で隠れた。
『⋯夏じゃ恥ずかしくて出来なかったかもねっ。』
いつも通り口元を手で隠して笑う彼女に
俺はただ呆気に取られていた。
彼女に好かれているなんて思っていなかったから。
『⋯あのさ。』
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"まだプレゼント欲しいなって……ダメっ?"
end.