話すことと、歌うこと。
話すことと、歌うことは違う。そう言われて、確かにそうだと思う一方で、同じ口から発せられるのになぜ「違う」のだろう?と、余計に謎が深まる人も多いでしょう。私もそのひとりでした。話すことと、歌うこと。違いがわかるようでわからない。なんともぼんやりした世界なのです。
どのように「違う」のか?参考書に書いてあることを、私がここで偉そうに引用したところで恐縮でしかないのですが、何を調べたらいいのかわからない、お堅い文章での理解が苦手、という方もいらっしゃると思うので、イラストと合わせて以下ご紹介します。
いわゆる話し言葉である語音(ごおん)は、そもそもの声・歌声である声音(しょうおん)が、鼻腔などの共鳴腔を使って「変形」した音なのだ、ということです。語音は声音で「言葉づくり」した結果とも言えます。
上のイラストを見てみましょう。声音を一次的、語音を二次的と表現しています。一次的・二次的という表現は、上記の引用の著書、フースラーの『うたうこと』でも用いられています。一次的な「声」というものがあり(根っこ)、その上に二次的な「言葉」がある(幹・枝葉)。つまり「声」が先で、「言葉」が後なのですね。
なんでこんなことを書くかと言えば、世の中では一次的な声(声音)よりも、二次的な言葉(語音)をどうにかして、声がよくならないと嘆いていらっしゃる方が多いからです。もしくは、声ではなく言葉で歌っているといいますか、土台がない声で歌おうと頑張っている状態です。
これの何がよくないって、土台がない声で歌おうと頑張っていると、自分でも「コレジャナイ感」が出てくるじゃないですか(笑) 自己嫌悪になります。歌が好きで、真剣に芸事と向き合おうとしている人は、だいたい自分でも良し悪しがわかっているんです。声は出てる。だけどコレジャナイんだよな~とモヤモヤしている。なんか違う、コレジャナイ感の正体が知りたいのです。
私はボイストレーニングを教えていますが、レッスンでは「話し方を磨く」「よく魅せる」などの二次的なことはやらず、一次的な「声音」の質を上げることに専念します。声は発声器官を使って鳴りますから、顔の筋肉をストレッチするとか、呼吸法などもやりません。喉の中の神経支配がよくなり発声器官が「解放」されれば、呼吸器官との連携も上手くいきます。面白いことに、呼吸器官がよくなったから発声器官が「解放」されるわけではないのですよね。鍵を持っているのは発声器官。だから声をよくするには「発声」をするのです。
最初にご紹介した木のイラストのように、声の質からガラッと変えるには、一次的な部分からよくするとよいです。声音のよさは、語音のよさに確実に影響します。実際に、一次的な部分を磨くと、話し声、笑い声、どんどん変わってきます。私もボイトレを始めてから、声がうるさくなってきたと夫に言われます。くしゃみの声も変わりましたね!(笑)
ボイストレーニングでは、普段、話しているときにはほとんど使わない筋肉も動かします。そうするとそこの神経支配がよくなります。これは、土台(根っこ)の工事が着々と進んでいくイメージです。普段、話すような発声でトレーニングしても声は変わらない― 一次的な声の質は上げられないので、やはりボイストレーニングは一次的な声に焦点を当ててやって欲しいなあ!と願うのです。
今回のような話は、頭の中で理解しようとしてわかるものではなく、思い違いも起きやすいですから、ボイストレーニングをするなら、やはりトレーナーについて実践的に理解するのをお勧めします。私の教室では、オンライン&リモートレッスンもやっております。対面レッスンは埼玉(新座・志木エリア)です。一緒に「声」を磨きましょう!ご連絡お待ちしております!