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話すことと、歌うこと。

話すことと、歌うことは違う。そう言われて、確かにそうだと思う一方で、同じ口から発せられるのになぜ「違う」のだろう?と、余計に謎が深まる人も多いでしょう。私もそのひとりでした。話すことと、歌うこと。違いがわかるようでわからない。なんともぼんやりした世界なのです。

どのように「違う」のか?参考書に書いてあることを、私がここで偉そうに引用したところで恐縮でしかないのですが、何を調べたらいいのかわからない、お堅い文章での理解が苦手、という方もいらっしゃると思うので、イラストと合わせて以下ご紹介します。

音声学では、声音と語音との違いを厳重に区別している。すなわち「付属管腔(共鳴腔)のいろいろ異なった運動によって、音声が変形されることによって語音が生じる」※のである。

フレデリック・フースラー/イヴォンヌ・ロッド=マーリング 著 須永義雄/大熊文子 訳『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ―』音楽之友社 122頁25行(第13章 歌うことと話すこと)

いわゆる話し言葉である語音(ごおん)は、そもそもの声・歌声である声音(しょうおん)が、鼻腔などの共鳴腔を使って「変形」した音なのだ、ということです。語音は声音で「言葉づくり」した結果とも言えます。

上のイラストを見てみましょう。声音を一次的、語音を二次的と表現しています。一次的・二次的という表現は、上記の引用の著書、フースラーの『うたうこと』でも用いられています。一次的な「声」というものがあり(根っこ)、その上に二次的な「言葉」がある(幹・枝葉)。つまり「声」が先で、「言葉」が後なのですね。

なんでこんなことを書くかと言えば、世の中では一次的な声(声音)よりも、二次的な言葉(語音)をどうにかして、声がよくならないと嘆いていらっしゃる方が多いからです。もしくは、声ではなく言葉で歌っているといいますか、土台がない声で歌おうと頑張っている状態です。

これの何がよくないって、土台がない声で歌おうと頑張っていると、自分でも「コレジャナイ感」が出てくるじゃないですか(笑) 自己嫌悪になります。歌が好きで、真剣に芸事と向き合おうとしている人は、だいたい自分でも良し悪しがわかっているんです。声は出てる。だけどコレジャナイんだよな~とモヤモヤしている。なんか違う、コレジャナイ感の正体が知りたいのです。

私はボイストレーニングを教えていますが、レッスンでは「話し方を磨く」「よく魅せる」などの二次的なことはやらず、一次的な「声音」の質を上げることに専念します。声は発声器官を使って鳴りますから、顔の筋肉をストレッチするとか、呼吸法などもやりません。喉の中の神経支配がよくなり発声器官が「解放」されれば、呼吸器官との連携も上手くいきます。面白いことに、呼吸器官がよくなったから発声器官が「解放」されるわけではないのですよね。鍵を持っているのは発声器官。だから声をよくするには「発声」をするのです。

最初にご紹介した木のイラストのように、声の質からガラッと変えるには、一次的な部分からよくするとよいです。声音のよさは、語音のよさに確実に影響します。実際に、一次的な部分を磨くと、話し声、笑い声、どんどん変わってきます。私もボイトレを始めてから、声がうるさくなってきたと夫に言われます。くしゃみの声も変わりましたね!(笑)

ボイストレーニングでは、普段、話しているときにはほとんど使わない筋肉も動かします。そうするとそこの神経支配がよくなります。これは、土台(根っこ)の工事が着々と進んでいくイメージです。普段、話すような発声でトレーニングしても声は変わらない― 一次的な声のは上げられないので、やはりボイストレーニングは一次的な声に焦点を当ててやって欲しいなあ!と願うのです。

今回のような話は、頭の中で理解しようとしてわかるものではなく、思い違いも起きやすいですから、ボイストレーニングをするなら、やはりトレーナーについて実践的に理解するのをお勧めします。私の教室では、オンライン&リモートレッスンもやっております。対面レッスンは埼玉(新座・志木エリア)です。一緒に「声」を磨きましょう!ご連絡お待ちしております!

▼なかむら詩子ボイストレーニング教室
埼玉県(新座・志木)&オンラインでボイストレーニングと歌を教えています|声の土台である声音の質をボイトレの聖典フースラーメソードを使って覚醒めさせます!プロ向け、本気の人向けの教室です🎤✨
ご予約お待ちしております☺

引用※について
「」内は、語学教師・音声学の研究者であるジュリオ・パンコンチェッリ=カルツィア(Giulio Panconcelli-Calzia)の『Experimentelle Phonetik』(デ・グロイター社 1921年)からの引用です。フースラーの『うたうこと』巻末の文献一覧 No.28をご参照ください。パンコンツェッリ=カルツィアについてはこちらWikipediaにも掲載がありわかりやすいです。

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