枕
君が安心して眠れるような枕を作ってみたいと思った。そんなことがもしできるのなら、君はもう泣かなくてすむよね、君は眠れない夜を寂しく過ごさずにすむよね。
君は死ぬのが怖いという。それなら死なないでよ、死んでも死なないで。私のために生きてよ、君のために生きてよ。私が文字を打つ限り、私が文字を書く限り、私は死なない、死なないのなら、君もきっと死なないよ。私は君を愛しているから。文字と一緒に愛しているから。私が想いを文字に起こす限り、私は死なないと君が言うのなら、私が君を愛する限り、君はきっと死なないよって、私は君に伝えたい。
眠ったら死んじゃうかもしれないって、君は思うらしいけれど、私はそんなこと思わないよ。でも、それで眠るのが怖いというなら、やっぱり私は枕を作りたい。君が安心して眠れるような、そんな素敵な枕を。本当はね、私がずっと膝枕でもして、安心させてあげたいのだけれど、そんなのいらないって言いそうだから、私は私の思いをこめた枕を代わりに贈りたい。
死ぬまでのわずか数秒間、人によっては数日間、もっとある人もいるのかな、どちらにせよその刹那は、ずっと真っ暗闇らしい。その刹那、人は本来よりも明晰な思考を保つのだとか。私はまだ死んだことがないから、こんなどこかで聞いた情報が、本当かどうかなんてわからないけれど、死ぬ前にはっきりとした意識を持つのは嫌だな、なんて思うよ。明晰な思考を持つくせに、自分が何かとかもう死ぬのかとかそういうのはなにもわからないらしい。ずっと暗い闇の中で、死んだかどうかわからないまま、徐々に意識を失っていくのかな。死後最後まで残るのは、視覚でも触覚でもなく聴覚らしい。家族の泣き叫ぶ声をバックに、やるせない思いを抱きながら、静かに亡くなっていくのかな。なんて、死ぬ間際に近くで、家族が泣き叫んでくれるか、わからないけれど、ね。
少し死について調べてみると、やっぱり少しは怖いなって思った。でもね、私はもともと死のうとしていたから、実はそんなに怖くないのかもしれないね。この世界は明るすぎて、白黒はっきりつけたがるから、死ぬ間際の何もわからない闇は、私にとって心地のよいものかもしれない。少し、興味もあるけれど。
私は君に生きてといわれたので、誰よりも愛している君に生きてほしいといわれたので、もう少しだけ、生きてみようと思います。君もきっと大丈夫だよ。そんな簡単には死なないよ。
いつか君へ枕を贈ることができたら。
そのときは隣で一緒に眠ろうね。
「待ってて」
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