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少年ジャンプへの挑戦③
大学入学後に漫画を再開
そんなこんなの中高生活でしたが、一応私立の進学校だったので、高校の後半は受験一色。漫画を描く機会はありませんでした。僕は進学校では珍しく、美術系の進路を選んだので実技的に絵を描くことはありましたが、漫画を描きたいことはすっかり忘れていました。
なんとか大学には合格し、実技の課題に追われる日々となりました。そんな中で夏休み中、実家の車を車庫から出す際にハンドルを切りすぎて、ガリガリっと車体を削りました!その修理費用は5万円!
漫画賞で車の修理費用を稼ぎたい!
いや、バイトしろよ。って言いたくなるけど、当時はこれが最善だと思っていました。少年ジャンプの月例漫画賞の最終候補は賞金5万!入選なんかは取れるあけないけれど、最終候補はワンチャンいけるんじゃないか!?
ちょこっと漫画描いて5万円もらって、ジャンプに名前だけでも乗れば良い思い出になるし。漫画家なんかなれるわけないし。そんなわけで何を描こうかな?
あ〜、高校時代にノートに描いていた「消しピン」があるじゃないかと。そうして大学の夏休みを利用して31ページの漫画を描き始めるのでした。
どこの雑誌の賞に出すのか?
僕は週刊少年ジャンプが大好きで、コロコロコミックを卒業してからはジャンプ一色だったので、ジャンプ以外の選択肢はありませんでした。一番好きだった漫画はガモウひろし先生の「とっても!ラッキーマン」で、中学生の頃にはファンサイトもつくるほど推していました。憧れのガモウ先生と同じフィールドを目指したいという思いが強かったのですね。
最終的に漫画家を諦める時にも「他誌にも持っていけば?」という方も周囲にいましたが、ジャンプという最高峰にチャレンジしたことで実力の無さを痛感して潔く諦めることができたので、この選択に後悔はありません。しかしながら、雑誌によって毛色も全く違いますし、近年は他誌で実績を作ってからジャンプに連載する作家さんも増えてきています。
僕は「ジャンプが無理なら漫画はもういい!」と腹を括っていましたので、その決意による勢いもあったのかも知れませんが、就職活動と同じで人生を左右することなので、一旦は様々な雑誌の傾向や賞をリサーチすることおおすすめします。
漫画を描いてみる
ネームという物語の下書きは高校時代に下地を作っていたので、ネームはわりと早くできました。そこから原稿用紙に漫画を描いていきます。
いちおう美術大学に入学できるほどの実技を身につけてはいるのですが、漫画ってめちゃくちゃ難しいです。同じ顔のキャラを何回も、角度を変えて描かなきゃいけない。なのでキャラの顔立ち、ブレます。近年はデジタルで背景やベタ塗り、トーンもデジタルが当たり前ですが、当時は全部手作業でした。ですので背景とはもめちゃくちゃしょぼい。そうして夏休みの終わり頃、信じられないくらい下手な原稿が出来上がりました。
漫画賞に応募する
完成した原稿を出版社に応募するのですが「直接持ち込み」もOKとのこと。
漫画を描くのは大変だから原稿はもう描きたくないし、どうせ下手くそな原稿では受賞することもないだろう。
でも「集英社に漫画持ち込みしたことある」っていうのは話のネタにはなるんじゃないか?そんな軽い気持ちで、最初で最後のつもりで編集部に持ち込みを電話予約。数日後のアポイントを取りました。
最初で最後の持ち込みのはずが、そこから壮絶な戦いが始まるとは、この時はまだ思ってもみなかったのでした。
つづく。