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ありがとう

それは寝苦しい夜だった。
汗のせいでべっとりと背中にパジャマが張り付き、水をいくら飲んでも喉が渇き、なんどもベッドで寝返りを打った。

ありがとう

と、最期に記した君が、とても気持ち悪かった。ありがとうは残された者には呪詛だった。

君はお父さんにも、
お母さんにも、
私にも、

誰にも大事にされなかった。

なのに、

【ありがとう】?

それは憎しみの言葉なのかい?

その言葉を思い出すと。
君の死に顔を思い出すと。

叫びたいくらい怖かった。

ほんとは何が言いたかったの?

【許さない】?

知ってる。君がそう言う人間じゃないこと。

人を恨むことを
極端に恐れていたね

悪意の連鎖は止められたかい?

不気味な君を
だけど愛してもいた。

本当だよ。
ポクは君に決して優しくなかったけど。

さよなら、君というボクの片割れ。

もう一生出会うことはないけれど。

こころからの
【ありがとう】を
君だけに。

さよならは、まだ早すぎたね。
君は若すぎた。
ボクもまた。

さあ、これからどうやって生きていこう。

試しに書いてみるよ
君の書きかけだった小説。

君を辿って生きてみるよ。

そうしたらいつか
わかるかな?

きみの【ありがとう】の意味

透明で優しくて繊細な君の
最期の【ありがとう】の意味

深夜、諦めてビールを一缶
花を添えよう

君のありがとうに

それがボクにできる
最大の感謝の印

ありがとうの意味

一生かけて
かんがえてみるね


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