窓越しの世界 2023年1月「旋律の中の日々: 一月の音楽的風景」
1/1【ただそれだけの豊かさ】
年越しを待たずに眠り、朝を迎えた。
南の窓から差し込む光が温かくて、南向きの価値を痛感する。
灯油もエアコンも必要なく、ただそれだけで暖が取れる。
ただそれだけの豊かさに触れることを、増やしていきたい。
今年も同じ土の上を歩き、ひと回りした季節の中。
1/2【数字の山に埋もれて】
半年分のレシートを3時間かけて仕分けする。
点火をしては経ち消えるガスストーブの不具合を直すたびにトトが僕を見上げる。
何度目かの調整で正常に灯る暖かさにトトも一安心。
僕は数字の山に埋もれて、止まっていた時間を引き戻している。
1/3【両者が混沌とする】
参道の明かりに誘われて鳥居をくぐる。
3年ぶりの屋台酒場の光景に胸が躍る。
進み方にもいろいろあり、決意を持って行く時と、諦めて一歩を踏み出す時。
両者が混沌とする2023年。
1/4【徐々に失われる実感】
まだ香る屋台の匂い。
初詣に執着がなくなっている自分が寂しい。
情報だけが増え、心の拠り所が徐々に失われる実感。
1/5【そのために生きているのかも】
祈るより、動く方がいいと思うし。
信じるよりも、疑ってしまう。
でも、心の底から祈り、信じるために、そのために生きているのかも。
1/6【今は無意識に】
家に誰もいいない。
そんな状態を懐かしく思う。
帰ると無意識にテレビをつけた。
そんな日々が恋しいのは、離れすぎた季節の作用だろう。
今は無意識に、トトを探す。
1/7【東京の夜】
二軒はしごして、帰りにはスーパーマーケットに寄った。
10分置きくらいに、トトはどうしてるかなと話題が逸れた。
人の気配を感じながら、それぞれの無関心が心地よい東京の夜。
1/8【もも肉だったのだ】
胸肉を買って、土鍋でご飯と一緒に炊いた。
こないだのように美味しくない。
そうか、あれはもも肉だったのだ。
1/9【脱帽】
荻窪の無印良品へ行くと、打ちのめされる。
無印さえあれば生きていゆけそうな気にさせられて、敗北を感じる。
このクオリティーを得るための時間に脱帽している。
1/10【相棒を探しにきた】
新宿高島屋へ来るのは父を夜行バスに送り届けて以来だった。
今日は枕売りコーナーで沢山の枕に頭を預ける。
睡眠を共にする相棒を探しにきた。
1/11【何となく許される気がする雰囲気】
阿佐ヶ谷の駅前でPCR検査を受けてから、実家への手土産に母の好きなパイ生地を使ったお菓子を買う。
この町のこじんまりとしたロータリーがなんとなく好き。
一般車両も気軽に入れて、車を停めていても何となく許される気がする雰囲気がいい。
もう一度書く。
何となく許される気がする雰囲気がいい。
1/12【人の尊さ】
1万年以上昔の、一万年以上続いた時代の跡を訪ねた。
確かにそこには人がいて、日々を営んでいた。
人は知識の保存庫として、長生きは保存行為であり伝達手段だった。
言葉に記すことをまだ発明していない遠い昔。
人の尊さが、人そのものに充満していたのかもしれない。
1/13【1度目の決断】
夜が明けて、再び竪穴式住居へ向かった。
即興で生む50音の連なり。
正解などないのなら、1度目の決断を信じてみたくなる。
1/14【僕の膝の上で】
大渋滞をトトとゆく。
サービスエリアで一休みする間に、1時間の渋滞がさらに膨らんでいた。
運転する僕の膝の上で、トトは何を思うのだろうか。
1/15【どちらの思考が先に走っているのか】
自分を大切にしたいと思うとき。
他人も大切にしたいと思う。
どちらの思考が先に走っているのか、自分にさえ分からないことの方が多い。
1/16【記録という行為】
12月26日の自分と向き合う。
あの日見えなかったことが沢山見えてきて、あの日の仲間に感謝した。
記録という行為は、進化のための必須項目。
1/17【自分の体のことだけど】
朝に感じた体の不調が少しずつ治る。
夜になって、その理由を考えていた。
葛根湯なのか、頂き物の牡蠣エキスが効いたのか。
そのどちらでもないのか。自分の体のことだけど、さっぱり分からない。
1/18【怠らなかった者たちだけが集える時間】
3つの人生が歩み寄って、音楽が生まれるのを見ていた。
歩むことを怠らなかった者たちだけが集える時間だ。
モニター越しの音楽家たちを、僕はいつでも尊敬している。
1/19【出会いにゆくのだ】
アメリカの旅を思い出していた。
日帰りだけど、僕は奈良県までピアノに逢いに行った。
行く理由よりも、行かなくてもいい理由の方がきっと多い。
でも、行く。
行かないと分からないことに、出会いにゆくのだ。
1/20【今日はそんな作りかた】
テンポが決まれば、自ずとメロディーは導かれる。
コードはいらない。
今日はそんな作りかた。
1/21【夜のドライブと】
夜のドライブ。この時間だと30分。
多摩川を越えたあたりの街まで。
帰りは高速道路を使った。
再びスタジオに戻って、ちょっとのつもりが、かなりの時間。
1/22【さすがに疲れた】
曇り空の夜明けをスタジオの窓越しに感じて、全ての動作がおぼつかない。
バッテリーの切れそうなコードレス掃除機と僕。
家に帰るとトトが元気に走りよってくる。
早起きだねと、トトに話しかけて風呂にお湯を張る。今日はさすがに疲れた。
1/23【そろそろ】
昨日の徹夜が後を引いている。
久しぶりに昼食をレストランでゆっくり過ごして、郵便局へ行き、スーパーに買い出しへ出て、
電気屋を覗き、そろそろスマホを買い替えようと思っている。
6年は使ったので、そろそろ。
1/24【やるべきことはやった】
どこかの喫茶店で事務作業をしようと思ったが、朝の公園のベンチで考えが変わる。
机をもう一つ用意してスタジオでパソコンを開いた。
今日もやりたいことができなかった。
やるべきことはやった。
1/25【あたりめと芋焼酎で晩酌】
本当に久しぶりにゆっくりギターを弾いた。
気がつくと午前2時で、さすがに明日に響くと思いスタジオを後にする。
家に帰ってもなかなか眠れず、あたりめと芋焼酎で晩酌。
1/26【そんな一日】
涙がキラリ(スピッツ)で心のリセットをし、
CHARAの声、ナレーション(ドラマ:すべて忘れてしまうから)がもう素晴らしすぎて、
Blake Millsの演奏を見てからギターを触ると、新しい気持ちになって楽しい。
そんな一日。
1/27【切に】
目を閉じればもう別の朝だった。
そんなふうに眠りがリセットの機能を果たしていた子供の頃。
また眠りの作用がそこに戻らないだろうか。
切に。
1/28【育み】
近くないと育まれないものを感じた。
今から行きます!
オッケー!
1/29【大衆である自分】
新宿の歩行者天国を歩く。
真ん中を堂々と歩こうとしない自分。
アップルストアで不具合のあるノートパソコンを預けた。
新型iPhoneのカメラ機能のデモンストレーションをしている。
大画面に映り込む僕を眺めて、大衆である自分を確認していた。
1/30【両方だと思う】
何から書き始めていいかわからないけれど、とりあえず書き始めた。
書き始めると、明らかになる思い。
それは本当に思っていたことなのか?
それとも、書きながら作られた思いなのか?
両方だと思う。
1/31【幻想と本当】
その場所に行かなければ得られないことがある。
しかし、それは幻想だだったり、あるいは本当だったりする。
幻想と決めつける前に、行ってみたらいい。
それが結局幻想だったとしても、本当に触れることになる。