私は仕事柄矛盾を残さないようにする性格なのだが、私生活では支障のない限り、矛盾しているものもなるべく矛盾したままそのままの形で受け入れるようにしている。そして、自分の子どもにも、ありのままを見せるように心がけている。 例えば、妻は子どもに「お手伝い」させる際、対価を与えることが多い。具体的には、夕食後の食器洗いをしたら10~20円を与えるという具合だ。働くということがどういうことか、お金を稼ぐというのがどういうことなのかを教える、経験させる、という意図があるそうだ。それはそ
ボストンの大学に通う少年がいた。少年には気になる人がいた。いつもキャンパス横のコーヒーショップでけだるそうに煙草を吸っている二つ上の先輩だ。シェアハウスでのパーティーで、裏庭の木にもたれかかり吐けずに苦しんでいる少年に、少年を心配するでもなく、ライターを持っていないか聞いてきたことが、彼女を知ったきっかけだった。 彼女はいつも一眼レフのカメラを用い歩いていて、たまに写真を撮るほかは、特に何をするでもなく、コーヒーを飲んでいる。知り合いづてに聞いた話しでは、彼女はニューヨーク
この世で一番初めに歌を歌ったのは誰だったのだろうか。 何を考え、誰を想い、言葉を音に乗せようと思ったのだろうか。 ずっぷりと長時間労働に浸され終電で帰ってきた深夜、ラジオやSNSからぽつぽつと転がる声を聴きながら眠りに落ちたい。休日の朝、ゆったりとした音楽を聴きながら、ただコーヒーに映る木漏れ日を眺めていたいーーー 私が「音」を欲しているときは、心にわずかに何かが足りないときだ。 人の話し声があれば、声の隙間に滑り落ちていくように眠れそう。静かすぎるコーヒーは記憶を辿るの