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大人の絵本~part1

大人向けの絵本、短編ストーリーです📕
テーマは『心の癒しや人生の静かな発見』を描きました。

utaの絵本の世界へようこそ。。。

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月明かりの図書館    uta

深夜の街には、眠らない図書館があると言われている。
その図書館は、月が満ちる夜にだけ扉を開く。
誰もその建物がどこにあるか知らないが、必要な人の前には必ず現れるという。

ある日、忙しさに追われて心を失いかけた女性、リサは、ふとした偶然でその図書館を見つけた。木の扉を開けると、中は古い本で埋め尽くされ、かすかな灯りが棚の隙間を照らしていた。

カウンターに座る老紳士が、リサに優しく微笑む。
「ここに来たということは、君の心に足りないページがあるのだろう。」
彼女は戸惑いながらも、頷いた。


紳士は一冊の本を棚から取り出し、そっと差し出す。
「この本を読んでごらん。君のために書かれたものだ。」

リサが開いたその本には、彼女自身の物語が記されていた。
過去の悲しみ、現在の迷い、そしてまだ見ぬ未来への希望。
読めば読むほど、胸の中の重みが解けていくのを感じた。

ページをめくるたびに、不思議なことに、言葉が空に溶け込むように消えていく。「この本は永遠には残らない。けれど、君の心に必要なものはもう刻まれた。」紳士の声に、リサはそっと本を閉じた。

外に出ると、月は静かに沈み、朝が近づいていた。
図書館はもう跡形もなく消えていたが、彼女の胸の中には確かな温かさが残っていた。

それからリサは、少しずつ忙しさの中に自分の時間を見つけ、日々を味わうことを覚えた。月明かりの図書館は、二度と現れることはなかったが、その一晩で彼女の人生は少しだけ変わった。

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詩-uta
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