【Twitter連携企画】クイズ★進振りケース(CASE19)
オンライン授業が始まって早1ヶ月。新しい生活様式での「大学生活」に慣れてきた人も多いのではないだろうか。しかし一方で、定期試験や成績評価、そして特に、進学選択、いわゆる「進振り」には不安を抱えているだろう。コロナ禍の影響を完全に取り除くことはできないが、我々にできるのは進学条件を今一度確認し、問題なく志望学部・学科に進む準備をすることだ。
UT-BASE公式Twitter( https://twitter.com/UtBase )で行われている、進振りのあれこれを具体的な例を用いて理解する「クイズ 進振りケース」。第19回は「要求科目」についての出題だ。解説もあるので、ぜひ参考にしてみてほしい。なお、断りの無い限り、既習外国語(英語)と初修外国語を選択した非TLP生を想定しているので、これに該当しない人は適宜、『履修の手引き』を見て確認してほしい。
CASE19 【要求科目】
【問題】
文科X類2年の吉(きち)君は、「農学部の生命化学・工学専修」志望である。画像に掲載されている情報を基に考えて、彼はそこの内定を得られるだろうか?なお、彼は「進学選択が可能となる条件」を満たしている。
【選択肢】
① 内定する
② 内定しない
③ ア~オだけでは不明
(Twitterでの出題はコチラ)
知識の確認
今回は、意外と見落としがちな進学条件である「要求科目・要望科目」について見ていく。特に要求科目は文科各類から理系学部に進学する際に重要になってくるので、後期課程での理転を検討している人は要注意だ。実は、理科生にも要求科目が課せられている場合もある。自分には関係ないと思っていると痛い目に遭うので、よく確認しよう。
■要求科目とは
『履修の手引き』28ページの「8. 要求科目・要望科目の履修」によると、
要求科目は、令和2年4月現在、理系の学部・学科等が設けており、文科生が当該理系学部・学科等への進学を志望する際には、2S2ターム・2Sセメスター終了時までの単位取得が必須となる。
とある。(51ページにも同様の記述がある。)そして要求科目のほとんどが理科の基礎科目である。すなわち要求科目とは、文科生が理系各学部への進学を希望する場合に最低限必要となる理系の知識を補うための科目であり、通常の「進学選択が可能となる条件」に加えて満たさなければならないものなのである。「理転するならこれぐらいの覚悟で来い」という大学側からのメッセージだ。
学部・学科別の要求科目の一覧は『履修の手引き』の87ページに(別表6)という形で掲載されている。
ただ、実は理科生でも要求科目が要求されるケースが稀にある。理科一類から医学部医学科への進学を希望する場合がそれで、基礎科目(生命科学)として理科二・三類生の「生命科学Ⅰ、生命科学Ⅱ」から1科目(2単位)取得しなければならない。ただ理科生への要求科目はこの1件だけなので、いかに理転のハードルが高く設けられているかが分かる。
■要望科目とは
一方要望科目とは、単位取得は必須ではないものの、進学後の学習内容を考えると「履修しておくことが望ましい」科目のことを指す。これは特に文科・理科の区別はないため、純粋にその学部・学科に進学したい人はなるべく履修しておくと良いということになる。こちらは『履修の手引き』の91ページに学部・学科別の(別表7)が掲載されているので、随時チェックしよう。
■履修に当たって注意するべきこと
要求科目・要望科目はイレギュラーな制度であるがゆえに、いくつか気をつけなければならない点がある。留意点は主に以下の3点。
①要履修許可科目登録が必要
②基礎科目(基礎実験を除く)はその内容に応じて総合科目に振り分けられる
③キャップ制の対象である
①については、履修登録の際に特別な手続きが必要になるということである。教務課前期課程窓口にて配布される「履修認定カード」に必要事項を記入の上、授業において担当教員の許可をもらい、所定期間中に教務課に提出しなければならない。これは他クラス聴講や補修の場合でも同じ手順である。詳細は『履修の手引き』31ページの「②要履修許可科目登録(履修認定カード)」の項目を参照。
②について、要求・要望科目である基礎科目を履修した際、その単位は進振りの制度上、そのまま基礎科目として扱うとこが難しい。そこで、要求科目を総合科目の単位とみなすことが行われる。単位取得した基礎科目が総合科目のどの系列とみなされるかは下<表>を見てほしい。例えば工学部の応用物理・物理工学科の要求科目は(1)基礎科目(数理科学)「微分積分学①、微分積分学②、線形代数学①、線形代数学②」の計6単位と、(2)基礎科目(物質科学)「力学、電磁気学」の計4単位である。(1)の数理科学各科目は総合科目のF系列に、(2)の物質科学各科目は総合科目のE系列にそれぞれ振り分けられるということになる(<図>参照)。
<表>
────────────────────────────────────
要求科目・要望科目と 総合科目 系列
される基礎科目
────────────────────────────────────
物質科学・生命科学の各科目 総合科目E(物質・生命)
数理科学の各科目 総合科目F(数理・情報)
────────────────────────────────────
<図>
<参考>
『履修の手引き』28ページ
③について、そもそもキャップ制とは履修登録が可能な単位数の上限を定めるもので、一部の科目を除いて1セメスターに30単位を超えて履修登録することはできないという制度であった。これは要求科目の単位数が多い際に注意しなくてはならない条件だ。
例えば理学部の物理学・天文学・化学科の要求科目は、理科の基礎科目のうち自然科学全てに渡るうえ、合計24単位(最低限)必要である。2S時点で当該学科への進学を決めて要求科目の履修に励もうとする学生がいるとする。この学生は、要求科目を履修しつつ、かつ、2S終了時までに「進学選択が可能となる条件」も同時に満たさねばならないことを考えると、その人が1A終了時に多くの単位を取りこぼしていれば、2Sでその単位もカバーしなくてはならないので、2Sでキャップ制に抵触する可能性があるのだ。その場合は降年を回避するために理学部への進学をあきらめるしかないだろう。
■取得時期
上記理学部のように、かなりシビアな要求科目を科してくる学部・学科も存在する。さらに、要求科目は理科生の必修科目がほとんどなので、開講されている時期が限られているものが多い。したがって、単位取得には相当の労力を要する場合があることを念頭に置き、理転を視野に入れている学生は1年次から計画的に履修するのがベストだろう。要求科目は2Sまでに単位を取得していなければならないので、1Aで単位取得に失敗するとやり直しが利かなくなる可能性もある。ふと理転を思い立ったがもう手遅れである、という場合もあるので注意しよう。
要望科目については単位取得がマストでないことから、1年次に必要な単位を概ね揃えてから2Sで履修するというスタイルでも構わない。もちろんこの場合でも注意事項の①〜③には留意しなくてはならない。
■薬学部
薬学部は、「要求科目」という括りではないが、次の条件を要求しているので、薬学部志望の文科生は注意されたし。2Aまでに、「前期課程修了要件」(『履修の手引き』9ページ)と要求科目(『履修の手引き』90ページ)を含めた63単位を取得しよう。(※要求科目は2Sまでに取得)
2015年度以降の入学者で、文科各類から薬学部を志望する学生は、前期課程修了時までに「前期課程で各科類の学生が取得すべき必要単位数」の合計56単位に加え、7単位(計63単位)取得しなければならない。
(2021年度『進学選択の手引き』17ページ)
問題の解説
【問題】
【選択肢】
① 内定する
② 内定しない
③ ア~オだけでは不明
【解答】
②
【解説】
画像の「ウ)」と「エ)」によると、吉君は、農学部生命化学・工学専修の要求科目(『履修の手引き』89ページ)の「(2)基礎科目(基礎実験)」の方は満たしているが、「(1)基礎科目(生命科学)・総合科目E」は満たしていないことが分かる。『履修の手引き』87ページ冒頭の1で書かれているとおり、( )で書かれている条件は「かつ」であって全て満たす必要があるから、吉君は修得すべき要求科目を修得していないことになる。よって、彼は内定を得ることができない。内定を得られるようになるには、
(1)「生命科学、生命科学Ⅰ、生命科学Ⅱ」から1科目(2単位または1単位)
または「現代生命科学Ⅰ(文科生、理一生)、現代生命科学Ⅱ(文科生、理一生)」から1科目(1単位)
がさらに必要である。
(終)
以上のことは基本的にほぼ全て『履修の手引き』に掲載されている。万が一履修条件の抜け漏れがあった場合は、すぐに手引きを参照しよう。特殊な成績計算方法を採用している学部・学科もあるため、各位志望に合わせてチェックしてほしい。
また、進振りに関する詳細な情報を掲載しているUTaisaku-Webや成績を入力すると自動で基本平均点を計算してくれるUTESなどのサイトを活用するのも有効だろう。
もちろん、UT-BASEでも進振りに関する耳より情報をご提供していく予定なので、参考にしていただければ幸いである。次回は「指定重率・履修点」の問題を出題する。お楽しみに!
補充問題
【CASE19 補充問題】
文科Ⅹ類のA君は基礎科目の「物性化学」と「生命科学Ⅰ」の計4単位を取得し、無事、薬学部への内定が決まった。しかし、彼には少しおっちょこちょいな面があり、2Aセメスターの終わりになって「総合科目D~F系列はD系列の2単位しか取得していないじゃん!」と騒ぎ出した。さて、彼の今後の進退として最も妥当なものは次の内どれか?
① そのまま進学可能
② 内定取り消しで留年
③ 内定取り消しで「降年」
④ 内定を維持したまま留年
⑤ 内定を維持したまま「降年」
【解答解説】
『履修の手引き』28ページの「8. 要求科目・要望科目の履修」を見ると、文科生が、理系の基礎科目である物質科学・生命科学の各科目を履修すると、それは総合科目E系列の科目として扱われるということが分かる。すると、A君は総合科目D系列の2単位に加えてE系列として「物性化学」と「生命科学Ⅰ」の計4単位を履修したことになるから、これによって「2系列にわたり6」単位の条件(『履修の手引き』9ページ)が満たされる。よって、A君の懸念は杞憂に終わり、そのまま後期課程に進学することができる(①)。
なお、「前期課程進学要件」(9ページ)が満たせない場合の処理はCASE02、CASE03を確認してほしい。