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ハンフリー・ボガートのベルト

11/26/24
ジャン・ルノワール『捕えられた伍長』(1962)

映画館で見ようと思ってたら終わっていた。濱口竜介と三宅唱の対談を読む前に見なければと思い、調べたら国会図書館デジタルアーカイブにあったので、初めて利用した。視聴用のモニターにはヘッドフォンがついていて、本館に1台、新館に2台あるという。てっきり視聴覚室があるのかと思っていたら、これだけ?と呆気にとられる。国立の施設なのに。タイミングよく、そのPCを使用していた人が作業を終えて離席したので、すかさず使わせていただく。
ドイツの捕虜となったフランス兵たちが収容所からの脱走を繰りかえしては失敗する。長い月日が過ぎ、繊細なメガネ青年はある夜、仲間へ「脱出しようと欲していないからこそ可能なのだ」と無茶な演説をして別れ、正面突破の脱出へと挑む。この場面、シュールレアリズムの写真作品にあるような光で不気味に照らされる彼の顔がきれいで、ハッとした。この人こんなにきれいだったのかと。しかしあっけなく彼は死ぬ。出ていってから銃声が鳴り響くまで、仲間が数をカウントする苦しい場面が挟まれる。すぐにその重さは流れていくのだが。こういう切り替えの早さは戦前のコメディー映画みたいで、60年代の映画と後から知り、へえー!と思う。主人公の伍長(ジャン=ピエール・カッセル)はついに脱出成功してパリへ戻り、もうひとりと笑顔で別れ、誰もいない街を妻の待つ家へと歩く。そのすらりとした後ろ姿が急に洒落て見え、そこで私は単純に、おお、パリだ!これはフランス映画だったな、と思ったのだが、まるで戦前から現代にタイムトリップしたようにも見えたのだ。

そして、これは後で読むためのメモ。

特集上映「生誕130周年記念特集 ジャン・ルノワールの現在をめぐって」三宅唱×濱口竜介
『捕えられた伍長』アフタートーク 2024/10/5@東京日仏学院

11/29/24
ラオール・ウォルシュ『ハイ・シエラ』(1941)

恩赦でシャバに出た伝説の強盗犯ハンフリー・ボガートが、道中で偶然に足の悪い孫娘を連れた老夫婦と知り合い、その娘に入れ込む。しかし彼女に振られて、強盗仲間の女だったアイダ・ルピノと恋仲に。
この時代の映画、若い女が歳の離れたおっさんに簡単に惚れがち。そしてボガート、ベルトの位置が高過ぎ。ニューヨークで学校に行ってた時、美術クラスで教えていた爺さん先生のウエスト位置も高かったなあ。授業中にベルトが緩んでパンツが落ちてきてしまって、I’m loosing my pants! と恥ずかしそうにしてた。それを見た姐さんっぽい生徒が、あらかわいい、と微笑んでいたのを思い出す。

それはさておき。

ボガートは再び泥棒を試み、警察に追われる。山道のカーチェイスは完全に無理な運転で、おそらく車何台か潰してるんではないか?迫力がすごい。よく谷に落ちなかったものだ。そして注目すべきは犬、演技がうますぎ!この時代からハリウッドは動物役者が豊富に揃ってたのだね。ラストシーン、アイダ・ルピノが夢遊病者みたいな目でcrush out(脱出)ってなに?と刑事に尋ね、それはfreeと答える会話がとても良かった。この最後のセリフのおかげで、おもしろい映画を見たという感覚を得られた。


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