幻のクロワッサン。
日曜の夜、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私は93連休という史上最長の春休みを終え、社会復帰1週目。
慣れないオンライン授業に急すぎる社会復帰、なかなかハードな一週間でした。
さて、noteの更新が滞っていた言い訳をさりげなくおいたところで本題に。
10日ぶりくらいのnoteですかね?
今日はひたすら1つのクロワッサンを褒め称えて、寝ます。笑
「幻のクロワッサン」ってタイトルになっていますが、すぐに売り切れちゃう名店のクロワッサンの話、、、ではありません。
経験とセット、1回きりでもう永遠に出会うことはできない、幻のクロワッサンのお話です。
このクロワッサンとの出会いはそう、日本からは未だ直行便が出ていないヨーロッパのとある国の首都・・・いや、はい、ハンガリーのブダペストなんですけれども・・・の駅の中でした。
この日はブダペストから電車で4時間、ハンガリー西部の「トカイ」という町に行く日でした。
私、心配性なところあるんですよ。
初めての国で初めて乗る電車、何が起こるか分からないじゃない!と、駅に着いたのは電車が出る1時間近く前の朝7時。
はやすぎる。
まだ乗る電車が来ないどころか、前の電車だって着いていない。
いくらなんでもはやすぎる。
ベンチに座ってひたすらぼーーーっとする。
そういえば朝ご飯も食べずに宿を出てきてしまった。
食べるもの、なにも持っていない。
トカイで何か食べられるかも分からない。
トカイにいつ着くのかもわからないし、なんならトカイから帰ってこられるかも分からない。
待ち時間、何か食べよう。(使命感)
駅の中を散策して、遠目に売店のショーケースを覗く。
混雑している売店に割り入ってショーケースから商品選ぶ、なんてのを朝からやるのはちょっとキツい。
ぐるり見回すとちょうどお客さんが切れたタイミングのコーヒースタンド。しかもお姉さん優しそう!なんとかなるかもしれん!
正直ね、この際食べられれば何でもいいとすら思っていましたよ。
並んだパンを見ても、クロワッサン以外なにか分からないな・・・。
朝から冒険する気力も無い、まして3週間にわたる旅の最終日前日。
もう安心安全定番をゆく甘えも許されていいはず。
ショーケースの中のクロワッサンを指さす。
「これ?」と言われたものを買う気でいたが、想いが通じたようでクロワッサンをゲット。
値段はなんとびっくり200フォリント。
・・・日本円でいってくれなきゃわかんないよってねそりゃそうです。
えっとですね、65円です。
計算してみて、1回私がバカになったのかと思いましたね。
電卓使ってもやっぱり65円です。
ミニチュアサイズでもなく、いわゆる普通のクロワッサンのサイズ。
10個買ったら650円。100個買ったら6500円。
1万円くらいあればもう、クロワッサンの海で溺れる。
これはもしかして、安かろう悪かろうなのでは????
いや、安かろう悪かろうでもこの際かまわん!
異国の地、ローカルな鉄道駅、朝の覇気ゼロの中で手に入れた貴重なクロワッサン。
「COFFEE STATION」ってね、いや、パン屋でもないんかい。
心の中でツッコミを入れる。
手渡された紙袋をそっと開くと・・・。
「わあ、いい匂い・・。」
思わずニヤけてしまいました。
ちょっと冷めちゃってるけど、それでもまだいい匂い。
ぽろぽろこぼれそうだな、クロワッサンって食べにくいよなあ・・・とか風情ないこと思いながらも、落としたら鳩が食べてくれそうだったので気にせず「いただきます!」
冷めてはいるんだけど、外側サクッとして、ふんわり優しくバターの香り。
中はしっとりもっちり。食べてるあいだもすんごく優しいバターの香りに包まれ続ける。
え、なにこれおいしい。どういうこと??
クロワッサンってこんなおいしい??
バターの香りしっかりなのに全然重くない。
おいしい。
幸せ。
無心でひたすら食べる。
全然飽きない。
むしろ食べれば食べるほど、もっとほしくなる。
あぁ、しっかりこのバターは私の身体に蓄積されていくのでしょうね。
でも気にしない。なぜなら美味しいから。(?)
袋の中に落ちたサクサク、最後の1かけらまでつまんで食べる。
少しでも地面に落として鳩にあげるものか。
私が全部食べる。
包み込まれるような優しい香りで、サクサクとしっとりもっちりが合わさって、食べ終わればほっとする。ほんわかあったかい気持ちになる。
最高だ。
いつだったか母が、フランスで食べたパンが美味しくて感動したという話を聞かせてくれたことがある・・・気がする。
「いやそんなまさか、ゆうてもパンでしょ??」って思ってました。
けっこうずーーーーっと思っていました。笑
あー、やっと伝わった。
こういうことか。
本当においしいクロワッサン。
電車に乗ってもずっとニコニコ。
「なんで1個しか買わなかったんだ、なんならなんで2個目を買いにも戻らなかった??」なんて言いたくなりますが、なんか1個食べて、幸せに包まれて満足しちゃったんでしょうね。
たいそうなレストランでたいそうな演出のなか出てきたクロワッサンだったとしたら、高級ホテルの朝食で出てきたとしたら、同じように感動したかは分からない。少なくとも感動の主役にはならなかったんじゃないかな。
知らない土地で、一人で不安な中で、偶然目に入ったコーヒースタンドで買ったクロワッサン。その特別感もきっとある。何割増しにも美味しく感じている。分かってる。
それでも、いや、だからこそ?
そのときの情景や、日が昇っていく朝の明るさ、ブダペスト西駅の慌ただしい賑やかさと共に、きっと一生忘れることはないでしょう。
今度は開店前から待ち伏せしたら、まだほんのりでも、あたたかいクロワッサンを食べられるだろうか??
そもそも、まだお店は駅にあるだろうか??
それともこの1回の記憶は、大事に大事にしまってもう食べない方がいいだろうか??
写真1枚見返しただけで、思考全てがクロワッサンに支配される。
このままだと本当に、クロワッサン1つのためにブダペストに飛びかねない。
クロワッサンがほんとうに美味しかった、なんていう、小さすぎる思い出。
案外こういう方が、悲惨な旅のトラブルや有名な観光地の目視確認よりもずっと、記憶がなくなってもずっと、残り続けるのかもなんて。
ブダペスト西駅で出会った、そしてもう二度と同じように出会うことはできない、私の「幻のクロワッサン」のお話。