禍話リライト「とおりゃんせ降ろし」
禍話リスナーであるAさんの体験談。
小学生のころ、誰から聞いたのか憶えていないが
神社に向かって「とおりゃんせ、とおりゃんせ」と歌うとお化けが”降りてくる”
そんな噂が流れたことがあった。
興味を持ったAさんは試してみることにした。
下校途中にある、なんの変哲もない神社。
Aさんはそこの社に向かって「とおりゃんせ、とおりゃんせ」と歌い始めた。
すると、確かに何かが近づいてきている感覚がある。
(来る!来る!)
すぐそこまで気配が迫ると慌てて逃げだした。
お化けの姿は見えない。
しかし、何かが”来る”感覚と、ぎりぎりまで耐える緊張感がなんとも面白かったAさんは四日ぐらい続けて遊んでいた。
ある日、近所の上級生と一緒に帰る日があった。
神社の前を通った時、先輩にもあの遊びを教えてあげようと思ったAさんは
「先輩、こうするとお化けが降りてくるんですよ!」
と、先輩の前で「とおりゃんせ」を実演して見せた。
「とおりゃんせ、とおりゃんせ
ここはどこの細道じゃ、天神さまの細道じゃ」
「怖いからやめろよー」
「ちっと通して下しゃんせ
御用のないもの通しゃせぬ」
「ほんとに出てきたらどうすんだよ」
「この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります」
「……」
始めのうち、先輩は怖がるフリをして茶化していた。
しかし、だんだんと口数が少なくなり、やがて黙ってしまった。
「行きはよいよい、帰りはこわい
……あれ?」
不思議に思いAさんが先輩のほうを振り向くと、彼の顔は青白くなり、ガチガチと歯を鳴らして震えている。
「やばい、やばい、やばい、やばい」
震えながら、小さな声でそんなことを繰り返している。
「先輩、大丈夫ですか?」
「……とりあえず逃げるぞ!」
先輩はAさんの手を引っ張り始めた。
「先輩、ここからが面白いんですよ」
なおもAさんは遊びを続けようとするが、先輩は聞く耳を持たず黙って走りだした。
「先輩、もしかして何か見えてるんですか?」
状況が呑み込めないAさんは、手を引かれるかたちで逃げながら尋ねる。
「お前…電線の上とか…あちこちから真っ黒の男と女が覗いてるだろうが!」
Aさんには何も見えなかったが、ようやく事態の重さを理解した。
二人は全力でAさんの家まで逃げる。
家にいたおばあちゃんに塩を持ってきてもらい、顔面蒼白の先輩にそれをぶっかけて家に入った。
「まだだめだ、窓から黒いやつらが覗いている」
と、家の中でも先輩はガタガタと震えている。
相変わらずAさんには何も見えない。
夜になってもその調子なので、彼の親に迎えに来てもらった。
「先輩、大丈夫かな……」
完全にAさんのせいなのだが、さすがに心配したそうだ。
しかし、次の日になると先輩はもとの元気な姿に戻っていた。
塩が効いたのかどうかは分からない。
例の遊びの話を振ると怒るので詳しいことは聞けず仕舞いだが、その後は何も起きていないようだった。
可哀想なことに、今でも先輩は「とおりゃんせ」と暗いところが大嫌いだという。
どことなく不気味な雰囲気のある「とおりゃんせ」。
都市伝説的に怖い話と結び付けられるが、真相は分からない。
あくまで童謡、遊びの歌ではあるのだが、神社でお化けを降ろす遊びに使うのは”よくない”。
この遊びを噂で聞いたというAさん。
いったい誰が最初にこんなことを試すというのか。
Aさんが伝聞で聞いたという事は、他にも遊んでいた人がいることになる。
その人たちは果たして無事だったのだろうか。
この記事は、毎週土曜日夜11時放送の猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス「禍話」から書き起こし・編集したものです。
元祖!禍話 第二夜(2022/04/30)
「とおりゃんせ降ろし」は1:36:35ごろからになります。
参考サイト
禍話 簡易まとめWiki 様
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