3倍レバレッジの罠:TQQQ投資に潜むリスクとは④
TQQQは1倍レバレッジの3倍得をするわけではない?
高リターンの夢と隠されたリスク。TQQQを巡る投資家の必読ガイド
※本記事は連載となります。前回はこちら※
連続性のある記事ですので、第1回から読んでいただくことを強くお勧めします。
第1回
第2回
第3回
第3回までの間に、TQQQのすべてを掘り下げてきました。
1回目ではNASDAQ100について、2回目ではTQQQの構成銘柄からスワップ、リバランスについて学びました。
第3回では、TQQQの安定した運用を支える流動性プロバイダーについて、また、意外な利益を狙うことができる乖離率についても勉強しました。
諦めずにここまで来られた皆さん、本当にお疲れ様でした!
さて、これで皆さんはレベル2の投資家になりました。
レベル30の投資家まで、これから乗り越えなければならないことはたくさんありますが、
皆さんなら十二分にできると私たちアメリカ株式義塾は確信しています。
レベル30の投資家になるその日まで、
私たちアメリカ株式義塾が皆さんの伴走者になっていきますので、これからもよろしくお願いいたします!
今回の最終編では、過去数年間のTQQQの動きと実績研究から、アメリカ株式義塾ならではのインサイトを発表したいと思います。
3倍レバレッジの悲しい真実
さて、ここまで見てくださったみなさんならきっとこのことが分かったはずです。
改めて復習してみましょう。
①: TQQQは毎日リバランスを行うため、横ばい相場では3倍レバレッジのパフォーマンスが著しく落ちる。ハイリスク・ハイリターンと言うが、3倍の損失リスクを背負った代償が3倍以下のリターンの結果に終わるのは割に合わない。
②: 投信はLP(流動性プロバイダー)と契約を結んで、基準価額との乖離率を常に0に近づけるようにしている。ただ、それでも2021年冬のように乖離率が0.6%と大きく開くこともあり、 これを活用すれば、乖離率で収益を上げるチャンスも!
③: 毎年1%ほどの運用手数料がTQQQの運用会社であるProSharesにより取られるので、長期投資には不向き。
では最後に、今日の学びと照らし合わせながら3倍レバレッジの現実を教えます。もしかすると少し残念なことをお伝えすることになるかもしれませんが、目をそらしてはいけない真実です。
横ばいの値動きをする時に3倍レバレッジがレバレッジのない上場投資信託(例えばQQQ)より少し損をしてしまう理由については先ほど説明しましたが、
運が悪いと、上のグラフで見るようにTQQQとQQQの損失率差が-6.85%対-1.93%と、3倍よりはるかに悪い損失倍率が出てしまうこともあります。
では逆に、指数が上昇した場合、3倍以上稼ぐことができるのでしょうか?先ほどのシミュレーションでは答えは「はい」でしたし、理論的にも、3倍レバレッジは右肩上がりの上昇相場で1倍よりも3倍以上の収益をあげるはずです。
しかし、現実は…。
「えっ、これ新型コロナウイルスの初期相場じゃないの? なぜ上昇しているのに上昇率が3倍じゃないの?」
「QQQが48.62%上昇したのに、TQQQが3倍をはるかに下回る110.1%上昇って、これってどういうことなの?」と思った人もいるかもしれません。
上記の上昇相場期間中のリターンは、TQQQの実際のレバレッジ比率3倍よりもかなり低い2.2倍のレバレッジを意味しています。
この不一致はボラティリティが原因です。 ボラティリティは「上昇相場でも」3倍レバレッジのパフォーマンスを低下させる可能性があります。
このチャートを見ると..「入れ替わってる!?」
いいえ。
グラフが入れ替わったわけではありません。紫がTQQQ、オレンジがQQQを表しています。
1倍のQQQが1.85%上がる間に3倍レバレッジTQQQはなんと…0.4%(!!!)の上昇でした。
これくらいでしたら、レバレッジをかけるメリットが全くないです。
上昇する過程で一度も下落することなく右肩上がりし続けない限り、つまり、天国行きの新幹線に乗って一度の調整もなく上がり続けない限り、ナスダック100指数が上昇してもTQQQは確実にQQQより損をしてしまうのです。残念ながら。
TQQQ(3倍)、QLD(2倍)、QQQ(1倍)を比較してみると面白い事実が分かります。上のグラフは2021年3月以前に開始点を設定して、TQQQ、QLD、QQQが利益を出せた区間を表示したものです。
四角の中に入って部分が赤色で表示されている、私たちの証券口座に赤色数字で表示されている(大歓迎の利益区間)ですが、TQQQが一番利益区間が短く、次がQLD、次がQQQの順であることがわかりますよね?
TQQQは収益区間が一番短いのに、損失区間が一番長いんです。
もしTQQQ、QLDが理想的な3倍、2倍、1倍のレバレッジの動きをするなら、右上の「私たちの予測」のように同じ時点で損失が出たり、利益が出たりするはずですが、現実には3倍レバレッジが利益区間が一番短く、損失区間が一番長いのです。
これをまとめると、
『レバレッジは上昇トレンドが強く、調整がほとんど見られず、ボラティリティが低いときが一番良い。上記以外のほどんどの場合は、パフォーマンスが悪い。』
ということになります。
1倍レバレッジはボラティリティのある相場では最も強力ですが、上昇相場ではそれほど儲けを得られません。3倍レバレッジは、上昇相場で最も収益を得られますが、途中で調整や変動が少しでも起きると収益率が下がります。
結論
結局、3倍レバレッジは「これは上がると強い確信を持っている状態で」短期間の大幅な跳ね上がりが予想される時に買う時以外の、残りのすべての場合には私としてはお勧めできません。
では、何倍レバレッジが一番収益は大きく、損失は少ないのでしょうか?
外国で、とある人が、ITバブル(ドットコムバブル)を含めて1985年から2022年までのすべての区間に対する1~6倍レバレッジの一括投資(Lump Sum Investment, 一度にまとまった金額を一気に投資する方法)をシミュレーションしたものがあります。
結果には驚かされました。
3倍レバレッジの年平均収益成長率(CAGR)が
むしろ2倍レバレッジのCAGRよりも低いという結果になったのです。
シミュレーションによると、おおよそ2~2.5倍程度のレバレッジが最もパフォーマンスが良かったそうです。
当然、米国史上最悪のバブルであったITバブルや、サブプライムローン危機も含めた結果であるため、最終成長率ではなく年平均成長率の面で2倍レバレッジが最もCAGRが高かったというのはかなり大きな意味を持ちます。
現在の基準で見ると、ナスダックは以前とは大きく異なることは間違いありません。AIがもたらす技術株の躍進や依然として存在する米中紛争や中東紛争など、地政学的なリスクは以前よりはるかに高くなっています。
アメリカ株式義塾はこう思います
過去よりもリスク負担が高い市場環境では、1985年から2022年までの分析で得られた最適な結果である2倍レバレッジよりも少し保守的に、1倍レバレッジと2倍レバレッジを混ぜて最終的なレバレッジ比率を1~2倍の間に合わせながら、市場の動向を見るのが最も安全で長続きする近道ではないかと思われます。
さて、4編まで長いシリーズでしたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。
ここまでたどり着いた皆さんなら3倍レバレッジについて一通り抑えられたといえるでしょう!
レベル30の投資家への道のりを一緒に歩んでいきましょう。
※TQQQシリーズは今回で完結になります※
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