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政策金利50bp引き下げ+混乱した市場=今、どうする?
9月のFOMCの結果が出ました。
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FRB(連邦準備制度理事会)は9月のFOMCで、4年ぶりに政策金利を引き下げました。押さえておくべきことは、25bpではなく50bpの利下げだったことです。
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上記のグラフのように、市場は50bpの利下げに対し、非常に混乱した反応を示しました。しかし、結局はもとの値まで戻り、市場はまるで何も起きなかったかのように、特に大きな変動は見せませんでした。
2024年8月と9月に発表された各指標には急激な上下動で反応していたアメリカ株式市場が、今回は"冷めた"反応を見せたのです。
まず、いつものように、何が起きたのかを初めから確認していきましょう。FRBの公式サイトの情報から、今回何をどのように決定したのか、そしてパウエル議長が何を語ったのかをお伝えします。
Federal Reserve issues FOMC statement
今回の発表とパウエル議長の演説を要約したので一緒に確認しましょう。
リンクからもご確認いただけます。
9月のFOMCの結果とパウエル議長の演説・質疑
9月のFOMCの結果
全体的に前向きなトーンでした。
最近の指標によると、経済活動は堅調なペースで引き続き拡大しています。雇用の伸びは鈍化し、失業率は上昇したものの依然として低い水準にあります。インフレはFRBの目標である2%にさらに近づいてきていますが、依然としてやや高い状態です。FRBは、長期的には最大雇用と2%のインフレを目指しています。
FRBは、インフレが持続可能な形で2%に向かっていることに対する確信をさらに強め、雇用とインフレ目標の達成を達成するためのリスクがほぼ均衡していると判断しています。経済の見通しは不確実であり、FRBはこの二つの目標に付随するリスクを常に注視しています。
インフレの進展とリスクバランスを考慮し、FRBは政策金利の目標範囲を50bp引き下げ、4.75~5%に決定しました。
政策金利の追加調整を検討する際には、FRBは新しいデータや見通しの変化、リスクバランスを慎重に評価します。なお、FRBは引き続き保有する米国債および機関債、機関MBS(住宅ローン担保証券)の保有を削減していく方針です。FRBは、最大雇用を支え、インフレを2%の目標に戻すことに強いコミットメントを示しています。
金融政策の適切な姿勢を評価するにあたり、FRBは引き続き経済見通しに関する新しい情報が何を意味するのか監視していきます。目標達成を妨げるリスクが発生した場合には、金融政策の姿勢を適宜調整する準備もできています。FRBは、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融および国際的な動向に関する広範な情報を考慮して評価します。
今回の結果発表文には、驚くほどに特別な内容がありません。
「インフレが収束しつつあるという確信を得た。しかし、データをもう少し注視する。政策金利は50bp引き下げる」というのが内容のすべてです。
つまり、この発表文はFRBが過去1年間に毎月のように行ってきた発言とほぼ同じで、今回の特徴は25bpではなく50bpの利下げが行われたことだけです。ただ、ある熱心な海外記者が7月FOMCの発表文と9月FOMCの発表文の違いを以下のように示していました。この違いは非常に意味深いと思われます。ぜひ一緒に見てみましょう。
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7月のFOMCの声明から削除された言葉は赤で取り消し線が引かれています。そして、9月のFOMCの声明で初めて登場した言葉は赤字で記されています。
9月のFOMCの声明文
今回のFRBの声明では、雇用の増加が「緩やかになった(slowed)」と述べられています。以前は「穏やかになった(moderated)」と表現されていたため、前回から変更されています。他の部分はほぼ同じです。もう一つの違いは、「FRBが、インフレが2%に持続可能な形で進んでいるという確信を強めた」という点です。
この2つの変更点を整理すると…
・雇用の増加が「穏やかに(moderated)」から「緩やかに(slowed)」という表現に変わった
・インフレが2%に持続可能に進んでいるかどうかわからない →持続的に進んでいるという 確信(greater confidence)を持った
つまり、パウエル議長は7月と9月の間で雇用の増加が緩やかになったという確信と、インフレが抑制されつつあるという確信を得たようです。
白カブ部長: これって、完全に景気後退の話じゃないの?
そうとも言い切れません。というのも、パウエル議長は50bpの利下げを発表した直後の記者会見での発言や、記者からの質問に対する回答では、また異なるニュアンスを示しているからです。彼の考えをもっと詳しく探る必要があるでしょう。では、今回のパウエル議長の演説から主要なポイントを抜粋してみます。
パウエル議長の演説の要点
急いで50bpの利下げをしたわけではない。アメリカ経済は依然として強固である
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パウエル議長:インフレ率は私たちの目標にかなり近づいており、インフレが持続的に2%に向かっているという確信が強まりました。
パウエル議長は冒頭で、今回の50bp利下げは特別な出来事ではなく、FRBが常に行っている「再調整」だと述べ、今後の会合でも同様の措置を約束することはありませんでした。
パウエル議長:この再調整は経済と労働市場の強さを維持するのに役立ち、より中立的な立場に向かう過程で、インフレ抑制のさらなる進展を引き続き可能にするでしょう。私たちは事前に決まった道筋に沿って進んでいるわけではなく、各会合ごとに判断を下していきます。
=まとめると、今回急いで50bp利下げしたわけではなく、次回も50bpの利下げをすることを期待しないでほしいということです。
パウエル議長は、現在のアメリカの労働市場は最大雇用にかなり近いと述べましたが、中央銀行は雇用成長が鈍化している兆候を把握していると繰り返し強調しました。特に、ここ数ヶ月で給与のある職の創出が明らかに減少しており、これは注視すべき点だと述べました。
パウエル議長:私たちは待ちました。そして、私はFRBの忍耐力がインフレが2%以下に持続可能に進んでいるという確信をもたらし、それが実際に利益をもたらしたと考えています。だからこそ、今日この大きな動きを取ることができたのだと思います。誰もこれを見て「これが新しい常態(ニューノーマル)だ」と言ってはいけないと思います。私たちは会合ごとに慎重に進めており、その過程で判断を下していきます。
=繰り返しますが、50bpの利下げは急な措置ではなく、慎重に決定して行われたものだと示されています。
さらにパウエル議長は明確に述べました。
パウエル議長:アメリカ経済は良好な状態にあり、しっかりしたペースで成長しています。インフレは低下しています。
また、投資家はFRBの50bp利下げを目標達成への強い意志の表れとして受け取るべきだと付け加えました。
しかし、パウエル議長はコロナ禍以前の超低金利時代が戻ってくるとは期待しないとも発言しました。具体的にはこうです。
パウエル議長:何兆ドルもの国債がマイナス金利で取引され、長期債がマイナス金利で取引されていた時代には戻ることはないでしょう。私は私たちがその状態に戻ることはないと思います。
景気後退の問題についても、はっきりと線を引いていました。50bpの利下げは、景気後退を心配してとった措置ではなく、それだけ自信があることを市場に示したかったからだという話です。パウエル議長はスピーチの中で明確に「現在の経済で景気後退の可能性が高まっていることを示すものは何も見ていません」と述べました。
その後のパウエル議長と記者たちの質疑応答はほとんどが雇用関連に集中していました。それを要約すると以下の通りです。
パウエル議長と記者の駆け引き
記者たちが同じ質問ばかり繰り返すので、あくびが出そうでした…。
パウエル議長:経済は好調。景気後退の兆候は一切見られない。
記者:雇用は壊滅的なのでは?
パウエル議長:違います。雇用は減速しているだけで、壊滅的ではありません。
記者:雇用が悪いなら景気後退といえるのではないでしょうか?
パウエル議長:雇用は悪いけど、景気後退ではない。
(この部分はほとんどコントみたいなやり取り)。
記者:景気後退ではなくても、とにかく雇用が悪いんですよね?
パウエル議長:雇用は悪いけど、経済は良好です(同じことを繰り返す)。
記者:雇用はどうあれ、景気後退は悪いことですよね?
パウエル議長:失業率を4%にして君も仲間に入れてやろうか?(冗談)
今後の米国株式市場、どうアプローチすべきか?
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