「AI・データセンター・鉄鋼、すべてが絡む天然ガス産業に注目せよ!」第一回
皆さんこんにちは!アメリカ株式義塾です。
今日はグローバル産業トレンドを追っていきましょう。AI・半導体・データセンター・冷却・GX等々・・・
根元技術というか、これらを噛み砕いた先にある「エッセンス」はなんでしょう。我々アメリカ株式義塾は、このエッセンスをバラしていきます。
アメリカの景気が後退せず、いつか中国が景気後退から抜け出す場合、再び競争が過熱しそうな分野は何かわかりますか?
鉄鋼です。
鉄鋼こそがすべての経済活動の土台となる基礎的な材料だからです。特に今のアメリカのように、不動産が過熱の兆しを見せ、建築材料として鉄鋼が大量に求められるときはなおさらです。
さて、この鉄鋼は米中紛争の真っただ中にある関税問題や、アメリカの鉄鋼製造業の復活という政治的な問題などと密接に関連しています。
ところで、最近の地政学的環境やAIが支配する技術環境を鑑みたとき、強力に注目されているセクターとしては天然ガスがあります。安定したエネルギー供給の観点から最も柔軟に利用できるのが天然ガスだからです。
唐突に天然ガスが出てきました。
一見関係がなさそうに見える鉄鋼と天然ガスが、実は密接な関連がある…としたら、その理由が気になりませんか?天然ガスはただでさえ将来性が明るいのですが、景気後退を回避するアメリカと中国の鉄鋼需要の増加が天然ガスの需要増加につながるとしたら…?
もう魅力的でしか無いです。
一体この鉄鋼と天然ガスがどう関係しているのか、今日の記事で詳しく説明いたします。
その前にまず、鉄鋼産業について簡単に理解しておく必要があります。
「5分で鉄鋼産業の専門家になろう」
少し化学反応式が出てきますが、全く難しくないので、一緒に勉強していきましょう!
鉄鋼は、私たちが日常で使用する自動車や建物、家電など様々なところで使われるため、当然重要な産業です。しかし、具体的にどのように鉄鋼が作られるのかを学ぶのは簡単ではないという難しさがあります。
でも、ここで重要なのは別の点です。
今、世界中が温室効果ガスの排出、つまり二酸化炭素排出量削減のために必死になって取り組んでいますよね?
しかし問題は、温室効果ガス排出の主犯格の一つが鉄鋼産業だということです。
鉄鋼産業は温室効果ガス排出量全体の4%を占めています。多くないように見えるかもしれませんが、単一の産業が世界の温室効果ガス排出量でこれだけの割合を占めるというのは十分に大きな規模です。なぜこんなに多いかというと、鉄鋼を作る際に使用される伝統的な製錬方法が大量の二酸化炭素を排出するからです。
そのため、鉄鋼産業は二酸化炭素の排出を減らすための新しい方法を探しています。いや、探さなければならないのです。
水素は水を電気分解して得られる環境に優しい燃料です。2020年代以降の鉄鋼産業では、この「水素を利用して鉄鉱石から鉄を抽出する方法」を研究しています。このプロセスを通じて二酸化炭素の排出なしに鉄を作ることができるため、すべての非難を封じることができます。しかし現在のところ、水素を大量に生産して製錬するのにはコストがかかり、技術的にもまだ発展が必要です。
少し難しいかもしれませんが、今回は技術的な側面から説明をします。 鉄鋼や製錬産業に関心がある米国株の投資家なら、いずれにせよ知っておくべき内容です。
鉄鉱石
まずは原材料である鉄鉱石から詳しく見ていきましょう。
鉄鉱石の主成分は、鉄(Fe)と酸素(O)が結合した形態である酸化鉄です。私たちがよく知っている、鉄を含んだ石がまさに鉄鉱石であり、鉄を作るための原材料です。
多く使われる鉄鉱石には次の2つがあります。
磁鉄鉱(Magnetite, Fe₃O₄)
赤鉄鉱(Hematite, Fe₂O₃)
こうした鉄鉱石から鉄を抽出するためには、酸素と結合した形態(Fe₃O₄、Fe₂O₃)から純粋な鉄(Fe)に変える必要があります。これを還元反応と言います。
どうやってこれを行うのでしょうか?
先ほどの話を思い出すと…
水素を使えばいいのです。水素を使って鉄鉱石に含まれる酸素(O)をすべて取り除き、純粋な鉄(Fe)だけを得るのです。
化学式は難しいかもしれませんが、学生のテストのように暗記しろ!なんてことはいいません。「そうなんだ」と思って読んでいただければと思います。
赤鉄鉱を基準に説明します。この反応ではまず、赤鉄鉱(Fe₂O₃)が水素(H₂)と反応して酸化鉄(FeO)と水(H₂O)を生成します。この段階で一部の酸素が除去されます。
磁鉄鉱でも反応は似ています。
続いてこの2番目の反応では、酸化鉄(FeO)がさらに多くの水素と反応して、純粋な鉄(Fe)と水(H₂O)を生成します。最終的にここで鉄鉱石が完全に還元され、純粋な鉄が得られました。
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