ニャンコ🐱UssayNakajima

作家・アーティスト パリ在住 パリ第8大学院映画科 イラスト・英仏翻訳 lit.link/UssayNakajima

ニャンコ🐱UssayNakajima

作家・アーティスト パリ在住 パリ第8大学院映画科 イラスト・英仏翻訳 lit.link/UssayNakajima

マガジン

  • 魔法使いのジュリア

    7歳の少女ジュリアは、魔法を使える女の子。大きな木の上に秘密の隠れががあって、棚の中には魔法全書や魔法の薬が並んでいます。隠れがを守るのはひょう、子グマ、レッサーパンダの三人組。ほかにも色んな生き物たちが遊びにきたり、みんなで冒険に出かけたり…。

  • 黒山羊の家の紡ぎ歌

    至急電報を受け取ったグレゴールは、雪に閉ざされた山奥の「黒山羊の家」を探してやってきます。ところが、村人たちは気味悪がっているようすで、なかなか道を教えてくれません。ようやくたどり着いたその家では、ふしぎな出来事が次々と起こり…。 14歳のときに構想して半分くらいまでしか書ききれず、おとなになってからやっと書き上げられた物語です。

  • 魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン

    ユマとリオナは、同じコレージュ(中学校)に通う13才。ある日、町のデパート「ラ・フォンテーヌ」が突然空を飛びはじめ…。 謎のバイオリンと魔法使いナンジャモンジャを追って、ふたりはバイオリニストのブラウンさんとともにひと夏の冒険に乗り出します。 12歳のときに書いた小さな本から、続きを書き継いで膨らませた作品。

  • サングラスをかけたライオン

    象といっしょにジャングルの中の一軒家に住んでいる小さな女の子、トザエモ。 ある日、家の扉に残されたふしぎな張り紙を見つける。 謎はいつしか、店の常連の語るライオンの話や、コナン・ドイルの古典的名著と絡みあい…。 ミステリの形をとった大人のための童話、もしくはフェーブル(寓話)。 そういうコンセプトのもとに書かれた物語です。

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サングラスをかけたライオン 1/5

はじめに(あらすじ) 象といっしょにジャングルの中の一軒家に住んでいる小さな女の子、トザエモ。 ある日、家の扉に残されたふしぎな張り紙を見つける。 謎はいつしか、店の常連の語るライオンの話や、コナン・ドイルの古典的名著と絡みあい…。  ミステリの形をとった大人のための童話、もしくはフェーブル(寓話)。 そういうコンセプトのもとに書かれた物語です。 第1章 物語の始まり 1.夏のある朝  その女の子は、たしかにまだそんなに大きくなかった。八つにはなっていなかっただろう

    • 魔法使いのジュリア9 さらわれたジャルゴン

       竜のジャルゴンが、盗賊たちの一味にさらわれた! ジュリアとみんなでホウキに乗って、助けにいったときのお話です。  いうまでもなく、ホウキで空を飛ぶのは、ジュリアにとって、まっ先にやってみたかったことの一つでした。《魔法全書》を手に入れる前でさえ、家の近くで、飛ぶ練習をしていたものです。  木の上の動物たちもいっしょに、岬の森の上を飛ぶのはとても気もちのいいもの。森のみどりや沼の水の広がりを見渡しながら、岬の灯台のまわりをぐるっと回って帰ってくるのが、お決まりのコースです。

      • 魔法使いのジュリア8 ひみつの暗号

         ジュリアと親友のマーシャが、自分たちだけの想像の島へ、ほんとに冒険に出かけたときのお話です。  ジュリアとマーシャ、仲よしのふたりが、お互いだけの間でひみつの通信ができるように色々な方法を編み出したことは、前にもお話しましたね。片手を使ってメッセージを送る《ハンドサイン》、小石をポストに入れておく《小石通信》、ひみつの文字で書いた手紙をビンに入れて送る《空き瓶通信》などです。今回は、こうした通信が大活躍したお話です。  ジュリアとマーシャの家は、互いに3軒分くらいしか離れて

        • 魔法使いのジュリア7 大平原と宝石の谷

           ジュリアの家のうしろの方、何軒かの家が固まって集まっている先には急な土手があって、一度に人ひとりがやっと登れるくらいの細い道がついています。そこを登った先には、草がほとんどジュリアの肩くらいまで丈高く生い茂った、大きな平原が広がっていました。  まだ、近所にマーシャが引っ越してくる前のことです。ジュリアは、ほかの何人かの子供たちといっしょに、この平原へ探検に出かけたことがありました。  この日、ジュリアはインディアンの戦士です。羽飾りをつけ、自分でつくった弓矢を携えていま

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        サングラスをかけたライオン 1/5

        マガジン

        • 魔法使いのジュリア
          9本
        • 黒山羊の家の紡ぎ歌
          9本
        • 魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン
          8本
        • サングラスをかけたライオン
          5本

        記事

          魔法使いのジュリア6 七色猫のエルム

           あるときジュリアのつくった虹から生まれた、ふしぎな猫エルムのお話です。  ジュリアの住んでいるところでは、地区の子供会というのがあって、イベントをやるときには、ジュリアも駆り出されるのでした。  夏が近づいてくるころには、近くの公園に花壇をつくることになりました。  れんがで枠組みをつくり、土を掘り返して、みんなで種をまきます。あさがお、ひまわり、ホウセンカ、キンギョソウ・・・。ときどき、水やり当番がまわってきて、その日は公園の水道から、じょうろに水を汲んでまくのでした。

          魔法使いのジュリア6 七色猫のエルム

          龍ヶ淵奇譚 ばけもの列車

           これは、なかよしの二人、茶トラ猫のニャンコとブチ猫ブッチーが、学生時代に通っていた鉄道のお話です。  関東鉄道竜ヶ淵(りゅうがふち)線、略して竜鉄(りゅうてつ)は、田貫(たぬき)、狐木(きつねぎ)、竜ヶ淵(りゅうがふち)と、たった3つの駅を結ぶ小さな鉄道です。百年以上むかしにつくられました。 ニャンコとブッチーは、毎朝田貫から乗り、竜ヶ淵で降りて、竜ヶ淵市内の学校に通っています。  田貫駅の駅長はタヌキです。毎朝タヌキ山から出勤してきます。  自販機では葉っぱの切符を売

          龍ヶ淵奇譚 ばけもの列車

          ポプラ小路(こうじ)のハロウィーン

          ニャンコたちが住んでいるのは たぶんパリの片隅  大通りの雑踏からひっそりと隠された たとえばポプラ小路 霧にけぶる10月の夕暮れ 街灯のぼんやりした光が石畳を照らすころ 手に手にお菓子の袋を抱えたニャンコたちが そっと闇にまぎれて 秘密の会合へ急ぎます 魔女の仮装に身を包み 物置から引っぱりだした箒にまたがったら 風を切って 夜空も飛べそう もう冬みたいに寒い通り 足早に歩きながら ふと過ぎた 光もれる窓の向こう 楽しそうなざわめきが聞こえてきたら それはハロウィンニャ

          ポプラ小路(こうじ)のハロウィーン

          魔法使いのジュリア5 ガラス山へ!

           今回のお話には、木の上の動物たちは出てきません。これはある晩、ジュリアが相棒の馬といっしょに、世界の果てまで行ったときのお話です。  ママが若いころに使っていた、桜材のアンティークの小さな椅子は、ジュリアのお気に入りでした。足の一本が少し短くて、背もたれに向かってまたがるとカタンカタン、馬に乗っているような気分になれたんです。  その日は全速力で馬を走らせて、漆黒の荒野を一路、ガラス山へ向かっていました。囚われのお姫様を助けに行く騎士になっていたのです。  急いで急いで!

          魔法使いのジュリア5 ガラス山へ!

          魔法使いのジュリア4 島へキャンプに

           7歳の少女ジュリアは、魔法を使える女の子。  大きな木の上に秘密の隠れががあって、棚の中には魔法全書や魔法の薬が並んでいます。  隠れがを守るのはひょう、子グマ、レッサーパンダの心づよい三人組。ジュリアがやってきて口笛を吹くと、縄ばしごを下ろして迎えてくれます。  ここには竜のジャルゴンもいるし、ほかにも色んな鳥や動物たちが、入れ代わり立ち代わり遊びにやってきます。  それだけでなく、ときにはみんなでどこかへ出かけたこともありました。今回は、そんなときのお話です。  ある

          魔法使いのジュリア4 島へキャンプに

          魔法使いのジュリア3 きまぐれ風見鶏

           7歳の少女ジュリアは、魔法を使える女の子。  大きな木の上に秘密の隠れががあって、棚の中には魔法全書や魔法の薬が並んでいます。  隠れがを守るのはひょう、子グマ、レッサーパンダの心づよい三人組。ジュリアがやってきて口笛を吹くと、縄ばしごを下ろして迎えてくれます。  あるとき、ジュリアの家の屋根から逃げ出した風見鶏が、少しのあいだ暮らしていたこともありました。今回は、そのときのお話です。  岬の中腹にあるジュリアの家は、赤いとんがり屋根のすてきなおうち。みどりの谷を見下ろす

          魔法使いのジュリア3 きまぐれ風見鶏

          魔法使いのジュリア2 竜のジャルゴン

           岬の中腹にあるジュリアの家は、赤いとんがり屋根のすてきなおうち。みどりの谷を見下ろす高台の端っこに建っていて、ぐるりを生垣と果樹園に囲まれています。  ある晩、ジュリアはベランダから、星の観察をしていました。小さな双眼鏡を買ってもらったので、星座盤と突き合わせて、じっさいの星の動きを眺めていたのです。  でも、小さな双眼鏡はあまり性能がよくないのか、星もちょっぴり大きく見えるだけで、肉眼で眺めるのとそうそう変わりはありません。寒いし、そのうち飽きてきて、 「そろそろ部屋に入

          魔法使いのジュリア2 竜のジャルゴン

          魔法使いのジュリア1 魔法の木のこと

           7歳の少女ジュリアは、魔法を使える女の子。  大きな木の上に秘密の隠れががあって、棚の中には魔法全書や魔法の薬が並んでいます。  今回は物語のさいしょの回ですので、この木のことをお話ししましょう。  それは、とても大きな古い木でした。  岬の高台へ、土手の細道を登った先の、森の中にありました。  親友のマーシャと、探検に来ていたときに見つけたのです。  さいしょこの木を見つけたときは、上の二股のところまで、どうしても登れなかったんです。こぶこぶのところに足をかけて、めいっ

          魔法使いのジュリア1 魔法の木のこと

          ポプラ小路のクリスマス

          クリスマスのために新しく書いた物語。パリ市内でたぶんいちばん好きな「ポプラ小路」を舞台にした二作目です。    *** リリとマックスは、小さな田舎町に住む恋人同士。 リリは真っ白ネコ、マックスはタキシード柄の白黒ネコです。 「結婚式にぴったりの柄だね!」とよく言われます。 リリは女優志望で、将来、パリで舞台に立つのが夢です。 夏になると、二人は自転車に乗って、近くの少し大きな町まで出掛けます。 広場でマルシェを見て歩き、通りや川辺を散歩して、カフェでゆっくりコーヒーを

          ポプラ小路のクリスマス

          黒山羊の家の紡ぎ歌 9/8

          あとがき  この物語は、14才のときの構想です。これも、いつか書き上げたいなと、ずっと思っていたものです。 「サングラスをかけたライオン」の少し前、つまりほぼ同時期。なので、ビートルズの赤盤青盤でいえば、「サングラスをかけたライオン」の夏版に対して冬版、みたいな感じです。長さも3万字ほどで、ほぼ同じくらいですね。 新潟へスキーに行ったときの印象がおおもとになっています。「トンネルを抜けると雪国だった」みたいな世界。自分も、自分の「雪国」みたいなのを書いてみたいなと思いました

          黒山羊の家の紡ぎ歌 9/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 8/8

          第8章 大かがり火  …今日は大かがり火だ! 興奮したささやきが、あちらからこちらへと伝わっていった。 …今日は大かがり火だぞ! ささやきが繰り返されて、隅々まで広がっていった。 <黒山羊の家>では年に一度、春の訪れを祈って大かがり火が焚かれる。 家の外に要らなくなったものを積み上げて燃やし、ついでに家の中も掃除して、一年の汚れを落とすのだ。 その日は朝から、家じゅうがゴトゴト、バタバタ、慌ただしく活気に溢れた。 グレゴールもせっせと働き、壊れた家具を運び出し、天井のクモの

          黒山羊の家の紡ぎ歌 8/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 7/8

          第7章 去りゆくものたち  次の朝、グレゴールが目を覚ますと、ジーホはいつものようにラジオの音楽をかけながら、何やらバタバタと忙しかった。 藤籠の中に敷いていた毛布を窓へ持っていって埃をはたき、きれいにたたんで棚へ収めている。 「何やってるんだい? 大掃除?」 「違うよ、帰るんだよ。休暇は終わり! 日常に戻るんだ」 不意を突かれて、グレゴールは思わずベッドの上で起き上がった。 「もしかして、夕べ狩りに行ったことで、気を悪くしたのかい」 「違うよ、そんなこと、僕にとっちゃ関係な

          黒山羊の家の紡ぎ歌 7/8