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クレア・ビショップ『人工地獄』を解読する ー「創造性」と「敵対性」の対比について

「参加型アート」について考え、実践するうえで避けては通れない一冊の本があります。それはクレア・ビショップ『人工地獄 現代アートと観客の政治学』です。

この本の重要性は、「アートを通じて人々が関係性を作ることが大切だ」という抗い難い倫理的な価値が標榜される事柄にたいして、明確に批判したところにあるでしょう。アートにおいて大切なのは、関係づくりでもアイデンティティ形成でもなければ、アイデンティティを揺るがしたり、関係を問い直したりすることだと。

このようなメッセージを、今日はいくつかの対比軸をベースに考えてみたいと思います。それが、以下の対比軸です。

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