真実
首都圏からさほど遠くない地方都市にでかけると、いわゆる「シャッター商店街」に出くわすことが少なくない。
昭和の時代はさぞかし賑わっていたであろうアーケード街だが、人通りがなくなり一度シャッターを下ろした店がふたたび開店することはない。
多くは、少し離れた別の場所、車で行きやすい郊外に大型店が出店し客の出足をそちらに奪われたことに起因する、と思われている。
同じものを売っている場合、昔ながらの商店が大型店舗に勝てる確率はほとんどない。どんなに個店としての魅力を磨いたところで、できる努力には限界がある。
そのような中で空き店舗を劇的に減らし、シャッターを上げさせた商店街は多くはないが存在し、同じような悩みを抱える他の商店街のモデルケースとなっている。
このような商店街はどうやって生き残っているのか。
経済産業省が視察先として斡旋するほど優良な商店街の、外からは見えない部分に光をあてると数々のうそが垣間見える。
この商店街では、空き店舗解消や商店街に人を再び呼び込むために様々な事業を計画した。
子育て中の家族だったり、若者だったり、買い物難民のお年寄りだったり、事業によって対象は異なるがどの事業もいわば社会の中で何らかの支援が必要な層である。
このような支援事業は、補助金・助成金の類の認定が受けやすい。
事業内容は、イベント、コミュニティスペース作りなど多岐にわたる。
不動産に着目し、商売をやりたい若者やスモールビジネスを起業する人向けに、気軽に借りられるインキュベーション的なスペースを用意した例もある。
これらの事業に数百万、数千万円単位で国や自治体から補助金・助成金が注入されるのだ。
これらの立ち上げやイベントの開催には、店舗改装、資材の調達、宣伝PRに関わる費用など諸々の経費が当然かかり、この経費はある場合には商店街の構成員である商店や事業所に振り分けられる。
イベントでPA機器が必要ならその機材は商店街の中の電気店に発注するという具合である。
受注した商店街の構成店舗は、金額を少し上乗せした領収書を事業主体に発行する。
だが実際には、損が出ない程度に値引きをした金額で、物品は事業主体に売られている。
補助金の申請には、この経費の明細が必要でそれは当然領収書の金額を記載するのだから、若干の差額が出ることになる。
この差額は事業主体にプールされていく。
この繰り返しである。
本来は立ち上げた事業で収益を出さなければならない。
だが、収益が出る事業に育つかどうかは、事業主体のセンスや手腕によるところが多い。
だが耳ざわりのよい支援事業を次々と繰り出し、補助金助成金に頼り切っている場合、特に苦労して経営をしなくても維持はできる。
また、店主が高齢化し後継者がいない店や、なぜ商売が成り立っているのか首を傾げたくなる商店が、こういった商店街には存在する。実は他所に不動産を持っていて、特に店舗で収益を上げなくても不動産収入だけでやっていけているのである。
店舗経営は趣味のようなものということか。
こうして、なぜか客がいないのにシャッターだけ開いている商店街ができあがる。
これが、地方都市における商店街の真実のひとつである。
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