イオンの駐車場

イオンモールの立体駐車場に車を駐めた。エスカレーターのすぐ脇にある軽自動車スペース。とても狭いが、小さい車なのでぴったりだった。

買い物があるという家族を降ろし、自分ひとり車で待つことになった。エンジンを切ってスマホを取り出し、Twitterの通知を確認していると、やたらと周囲から視線を浴びていることに気付いた。

見ると、車の両脇をたくさんの家族連れが窮屈そうに抜けていくではないか。前方、右サイドミラー、ルームミラーと、パッと見ただけで3組のファミリーが自分の車のすぐ脇を抜けようとしている。なるほど隣にエスカレーターがあるし、車と売り場とを行き来する歩行者の通路になっているらしいことがわかる。私に向けられた視線は車が邪魔ということか、それともエンジンを切って車に居座る不審者に対する好奇の目か。

一組、また一組と私を見つめては、車の脇を邪魔そうに歩いていくファミリーたちが気になって、Twitterどころではなくなってしまった。車を動かそうか、でも移動すると家族が帰ってこられなくなる、などと頭のなかで一通り押し問答を繰り広げ、せめて見られても恥ずかしくない態度でいようと決心したものである。

ところがこの「見られても恥ずかしくない態度」というのがまた難しい。スマホを触るのは恥ずかしいことか? スマホを触っている人くらい電車にもカフェにも無限にいるではないか。いやそういう場では通りがかる人から視線を向けられたりはしない。この状況では画面を覗き見られる可能性もあるし事情が違う。とりあえずスマホを見るのはやめておこう。あと、車内にいるのにシートベルトを外しているのはよくないのではないか? 動くつもりはないけどとりあえずシートベルトをしよう。お正月からさほど日数が経っていないしおみくじを見返すのはどうだろう? おみくじが入ったお財布は後部座席。シートベルトを外さねばならない。今付けたばかりのシートベルトをすぐ外すのは恥ずかしくない態度と言えるのか? 視線を向けてくるのは通行人ばかりだし、今付けたばかりなことは気にしなくてよいだろうか。よし、おみくじは見ることにしよう。おみくじを見るときはニヤニヤしないように気をつけないと。

こんなことなら買い物に付き添って車を降りるんだった。もうエスカレーターの脇には駐めない。


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