一日バーテン
12月17日の土曜日、北海道の小さな町の居酒屋での出来事である。毎年恒例のイベントに関連して、全国からの参加者80人ほどで懇親会を開催することになった。
私は企画を運営する側半分、参加する側半分くらいの感覚であり、懇親会では一参加者として飲み食いを楽しむつもりでいた。ところが少し会が進んだころ、店員のおばさんに衝撃的な依頼を受けた。
「お兄さんお酒注いだことある? やって」
ないです、と言う間もなく厨房に連行され、あれよあれよと一日バーテンダーをすることになった。混乱した頭に生ビールとサワーの注ぎ方だけパパッと説明され、おばさんは忙しそうに別会場へと姿を消してしまった。任命から5分も経たずに独り立ちである。
お酒に明るくない私は、無知を次々と露呈することになった。ウーロンハイをくださいと言われてウーロンハイとは何かを教えてもらったし、ハイボールを注文されたときには希釈の割合をググって調べた。
なんとかへっぽこバーテンのふりを演じ切った。たのしかった。ビールサーバーなんて初めて使ったし、お酒は自分好みに注ぎ放題だし、記念写真もたくさん撮れた。またやってみたい、と少し思ってしまったのが悔しいところである。