止まらない女子スポーツの拡大

2024年、米国の女子スポーツは史上初めて年間収益が10億ドルを超えると予測されています。 この成長は、視聴者数や観客動員数の飛躍的な増加によるものです。


全体的な傾向と主なハイライト

Horizon Sports & Experiencesの新報告によれば、過去3年間で女子スポーツ全般の視聴率が急上昇しています。具体的には、女子大学バスケットボール、WNBA、女子の国際・クラブサッカー、女子バレーボールの視聴率がいずれも75%以上増加しています。

• NCAA女子バスケットボール: 史上初めて、女子の決勝戦の視聴者数が男子の決勝戦を上回りました。
• WNBA: 新人のケイトリン・クラーク選手の活躍により、視聴率が過去最高を記録し、観客動員数も22年ぶりの高水準に達しました。 
• NWSL(女子サッカー): チャンピオンシップのテレビ視聴率と試合当日の観客数が記録的な数値を示し、いずれも前年比で大幅な増加を遂げました。 

メディア配信契約の拡大

• WNBA: 歴史的なシーズンを背景に、年間2億ドル以上の価値がある11年間のメディア権利契約を締結しました。
• Unrivaled: 2人のWNBAスターが立ち上げた3対3の女子バスケットボールリーグであるUnrivaledは、TNT Sportsと複数年のメディア権利契約を結びました。
• NWSL: 2023年に4年間で2億4,000万ドルのテレビ放映権契約を締結し、今年は100試合以上が全国放送されました。

拡大に向けた注目すべき動向

メディア企業やテクノロジー企業は、消費者の関心の高まりを受けて、女子スポーツの報道を急速に拡大しています。
• All Women’s Sports Network: ウーピー・ゴールドバーグ氏が、女子スポーツ専用の初のテレビプラットフォームであるAll Women’s Sports Networkの創設を発表しました。
• 5wins: 女子大学スポーツの報道に特化した新プラットフォームである5winsが今年デビューし、The GistやJust Women’s Sportsなどの専門サイトとともに活動しています。
• YahooとThe Athletic: Yahoo Sportsのウェブサイトとアプリ上で、女子スポーツ報道の新ハブを共同で立ち上げました。Yahooは、2024年のオリンピックに向けて、多数の女性オリンピアンを特派員として起用しています。
• 「The Offseason」: サッカースターのミッジ・パース氏による新しいドキュメンタリーシリーズ「The Offseason」が、今秋にXで独占的に公開されました。


女性アスリートの活躍

これらの動向は、女子スポーツの市場価値と影響力が急速に拡大していることを示しています。これを受けて近年、女性アスリートが競技の枠を超えてビジネス界や投資の分野で活躍する動きが加速しています。彼女たちは、スポーツで培ったリーダーシップや戦略的思考を活かし、新たなキャリアパスを切り拓いています。

女性アスリートのビジネス進出

多くの女性アスリートが引退後、ビジネス界で成功を収めています。例えば、元テニス選手のビリー・ジーン・キング氏は、プロフェッショナル女子ホッケーリーグ(PWHL)の設立に関与し、新リーグの理事会で助言者として活動しています。また、元WNBA選手のスー・バード氏は、シアトル・ストームのオーナーグループに参加し、女性スポーツチームの所有者となりました。

投資家としての女性アスリート

女性アスリートは、ベンチャーキャピタルやスタートアップへの投資家としても注目されています。セリーナ・ウィリアムズ氏のベンチャーファームは、設立以来、10年以上にわたり10億ドル以上の資金を調達し、数多くのユニコーン企業に投資しています。また、WNBAの2度のチャンピオンであり、アトランタ・ドリームの共同オーナーであるレネー・モンゴメリー氏は、2021年にベンチャーキャピタリストとしてValor Venturesに参加しました。

若手女性アスリートの台頭

若手の女性アスリートたちも、NIL(ネーム・イメージ・ライケネス)契約を通じて早期から成功を収めています。大学レベルの女性アスリートは、平均して男性よりも多くのNIL契約を結んでおり、その影響力を拡大しています。

女性スポーツの市場価値の上昇

女性スポーツチームの評価額も急上昇しています。2024年には、エンジェル・シティFCが2億5,000万ドルで売却され、女性プロスポーツチームとして最高の評価額を記録しました。また、サンディエゴ・ウェーブFCやダラス・ウィングスも1億ドルを超える評価額で取引されました。

メディアと企業の関心の高まり

これらの成功により、メディアや企業も女性スポーツへの投資を強化しています。新たなメディア権利契約やスポンサーシップが増加し、女性アスリートを起用した広告キャンペーンも増えています。例えば、2024年のパリ・オリンピックに向けて、多くのグローバル企業が女性アスリートを起用したマーケティングキャンペーンを展開しています。 

日本における取り組み

日本でも、女性アスリートの社会進出を支援する動きが見られます。EY Japanは、ビジネス分野への進出やリーダーシップスキル向上に意欲的な女性アスリートを対象とした「WABNアカデミー」を実施しています。 また、デポルテ社は、女性アスリートのデュアルキャリア・セカンドキャリア問題を解決するためのマッチングプラットフォーム「Next-One」を運営し、社会進出をサポートしています。 


まとめ

女子スポーツの人気急上昇を受けて、女性アスリートたちは、競技場内外でその影響力を拡大し続けています。彼女たちのビジネス界や投資分野への進出は、スポーツ界全体の多様性と包括性を促進し、次世代の女性リーダーたちにとっての道を切り拓いています。

https://www.reuters.com/sports/olympics/paris-olympics-marketing-blitz-powered-by-female-athletes-2024-07-17/

いいなと思ったら応援しよう!