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「不機嫌」について考えたよ


ついこないだ、不機嫌について考えざるをえない機会があってね。


ぼくはDA PUMPを愛好していることもあり、できるだけごきげんでいたい人間でして、他人の不機嫌にはけっこう不寛容。

研修医の頃、腕は良いんだけど手術中によく不機嫌になる外科医がいた。
その医者が執刀するときは、無駄に空気がピリついていて、周りが振り回されていた。
みんながその医者ひとりの地雷を踏まないように異常に気を使っている様子が息苦しくて、気持ち悪いなあとおもっていた。
その時から、「機嫌で仕事するやつ、超ダセエな」とおもうようになった。


不機嫌を露出しても怒られない立場のひとが、その不機嫌さ遺憾なく発揮して周囲に当たり散らしている様子をみると、ひととして悲しくなる。
「善き人間とはなんだ」とか、考えちゃう。


クラッシャー上司といわれるひとの本質にあるのは「身内への甘え」だと言われている。

「部下ならば、このぐらいやってもいいだろう。」
「家族だから、このぐらいわかってくれて当然だ。」

そうやって身内だからといって他人との境界を越えた振る舞いは、成熟した大人のやることではない。ラインオーバーだ。

桜林家の「不機嫌禁止」のルールを聞いたときに、我が意を得たりという感じだった。じぶんの心根にあった不快感が言語化された気分だった。



そうなのだ。
「不機嫌になる」という手段を使って、じぶんの思い通りに周囲をコントロールしようとする魂胆が浅ましくて嫌だったのだ。



不機嫌には「操作性」がある。
ベースにあるのは「怒り」感情であり、怒り感情を怒りのまま撒き散らすのは強力だが、怒りという感情は刺激が強すぎて、胸焼けをとても空気が悪くなってしまう。


怒りは伝染しやすい感情で、心が毛羽立った感じが伝染してどんどん侵食していくあの感じが嫌なのだ。まわりの心が毛羽立っているときは、HPが減りやすい。余計に疲弊しちゃう。
ポイズンミストだ。インクが回復しない。


ところがね、こないだ大切な診療所のメンバーの前で、不機嫌な態度をとってしまったのね。
「安心」とか、そういうのを大事にしよう、そういう組織にしよう、って言っているのに。
それが、ほんとうに情けないなぁと感じてしまった。



同じことをしたくないので、じぶんの「不機嫌」を振り返って分析し、病理を明らかにしようとおもう。

不機嫌には「こんなはずじゃなかった」「本当はこうしてほしいのに」という怒りが隠れている。
不機嫌である(=怒りを表明する)というサインを送ることで、何かを察してほしいというメッセージでもある。


そんなめんどくさい方法を取らずに、相手に直接「こうしてほしい」と伝えられればいいんだけど、そうできないのには理由がある。


ひとつは、余裕の問題。
相手に伝えるべき適切な言葉を頭の中で整理する余裕がない。
余裕とは「とっさに適切な言葉が出ない」という時間的余裕だったり、「怒りに占拠されて考える余裕がない」という精神的余裕だったりする。
じぶんの感情にマッチした適切なボキャブラリーを選ぶことができないという技術的な問題もある。

怒りは第二次感情なので、その怒りに隠れた「不安だ」だの「寂しい」だのといった「一次感情」がある。怒りにフォーカスすると「相手が悪い」というモードになってしまいやすいのだけど、「本当はこうしてほしい」という自分の一次感情に気づけていないと、うまく言語化できない。

そんなだから、不機嫌なときに相手の心情に配慮した適切な言葉を選ぶのは難しいよね。
ただ、裏を返せば、時間と心の余裕をもって言葉を選べれば、対処できる問題でもある。


ふたつめは、勇気の問題。
じぶんの「こうしてほしい」という要望が言語化できたとしても、それを相手に伝える「勇気がない」ということ。

こんなことを言ったら、このひとに嫌われてしまうのではないか。
小さいやつだとおもわれてしまうのではないか。
幻滅させてしまうのではないか。
それが怖いから、おもわず本音を飲み込んでしまう。
でも、感情の整理がついていないから、不機嫌な空気が漏れ出てしまう。
こっちのほうが、対処が難しい。

それでも、なるべく攻撃的な言葉を使わないように丁寧に選びながら
「そういうことをされると、私は悲しいのだ。寂しいのだ。」というような、「わたし」を主語にしたことばで伝えるしかないんだとおもう。
そこに、相手との関係性への信頼が問われる。


それは、「このひとには本音を言っても、関係が壊れないだろう」とお互いに信じられる安心があってはじめて成り立つ、わりと高度なコミュニケーションなのかもしれないとおもった。


不機嫌な姿を見せあっても、そのことで関係性に亀裂が入らないっていうのは理想的だよなあとおもうけど、なるべく「怒り」という感情を混ぜないで、拙くても「ことば」をつかって、何をわかってほしいかを伝える。

そういうコミュニケーションを選択できるじぶんでありたいなあ。



余談だけど、サクちゃんは相手が不機嫌だと「ちょっと『おさんぽ』行ってきてよ!」って言うらしいw

「おさんぽ」っていう語感が絶妙だなあ、これはいいなと。

今度同じようなことになりそうなとき、いったん頭を冷やして相手に伝える言葉を紡ぐ時間を稼ぐために

「・・・ちょっと『おさんぽ』いってくる!」

といってタイムアウトを取るのをルールにするのもいいかもしれないね、という話になりました。ルールにしとくとハードル下がるしね!

(不機嫌になっちゃったスタッフにはめちゃ謝った)


おわり。

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Dr. ゆうすけ
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