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本当にあった!個人レンタルビデオショップJ
まだTSUTAYAやGEOが覇権を握ってなかった時代に存在した個人レンタルビデオ店。仮にJ店としとく。
J店は髭モジャのおじさん店長(推定50歳)と鼻の真ん中にピアスを装着した顎髭坊主店員(推定25歳)の2人でシフトを回せる程に、こじんまりとしたレンタルビデオショップ。だが、中身は新作から旧作、自主制作映画までと文句の無い品揃えで、CDはなぜかレゲエとロックだけという謎セレクト。DVDも少量だが取り扱っている。
時はリング全盛期、多種多様な呪いのビデオなるVHSが全国で大量生産され、J店のホラー棚にも数本並べられる。
その呪いのビデオは真っ黒なケースに、白いラベルが貼られてあり、そこに"呪いのビデオ①"と記された簡素な作りだった。そして、そのシリーズと思われるモノが5本並べられ、"呪いのビデオ③"だけはレンタル中の札が掛けられている。
友達3人と早速"呪いのビデオ①"をレンタルし、自宅のVHSデッキで再生する。ブラウン管のTVに映ったのは、いかにも素人作家が作ったインディークオリティな映像。
内容は会社ロゴやクレジットが最初に表記される事もなく、戦争や合戦、肉食獣の捕食シーンを雑に編集した映像が淡々と流れ、最後に"完"という文字が、どデカく真ん中に出て終了するという、ぶっちゃけ全く面白く無い作品であった。
その後、呪いのビデオ②をレンタルする事はなかったが、スキモノな友人が②④⑤とレンタルし、①と似たような内容でつまらなかった。という感想を聞いた。
その数年後、ついにJ店もフランチャイズの波に飲まれて閉店する事に。店に置いてあるVHSやCD、DVDにポスターなどが閉店セールとして販売された。
そんなわけで、TSUTAYAフリークと化していた自分も久しぶりにJ店へ。いつもと変わらない風景と店長と店員。ちらほら品揃えは買われていったのだろうか?少しばかり寂しく見える。
2本選んでカゴに入れ店内をブラブラし、ホラー棚に来ると久しぶりの"呪いのビデオ"シリーズが数年の時を経ても変わらずある。つまり③だけがまだレンタル中だった。
レジに向かい、会計を済ませ、店長とJ店の思い出話しをするついでに、気になっていた、呪いのビデオシリーズの③だけがレンタル中である件について聞いてみる。
店長曰く、店長の友達が"呪いのビデオ"の制作者であり、ネット上にある呪いのビデオの作り方をマネて制作し、本当に呪いは起きるのか?という実験を面白半分で行っていた。
5本作られたが、当然呪われた!なんて報告なんて聞いた事もないし、何も起こらなかったよね。と店長は笑って話す。
呪いのビデオ③が一年近くレンタル中になっている事については、何度も延滞料金の電話をしたが一向に繋がらなくて、上手く逃げられた。借りパクされたな〜と話す。作品が作品なだけにどうでもいい話だわ。と話してくれたのでした。