感謝、精神科の先生

妻が双極性障害と診断されてから、二人の先生にお世話になってきた
精神科というのは、どこも患者さんであふれかえっていて、
基本的には、予約以外の診察は受け付けてもらえない
世の中にはこんなにも精神疾患で悩んでいるんだと思うと、ゾッとする
おそらく知らないだけ、公言していないだけで、自分の身の回りにも、
たくさんの人が悩んでいるものと思う

最初の入院までは、クリニックにお世話になっていて、
とても物腰の柔らかい先生で、私も妻もずっとその先生にお世話になりたいと思っていた
月一の診察で、薬の調整をしてきたものの、妻の症状は悪化をたどり、
自傷行為がやめられず、入院を勧められた
ところが、当然、クリニックには入院施設はなく、転院せざるを得なかった

そしてその転院先の先生というのが、これまた物腰の柔らかい先生
これまでいろんなお医者さんを見てきたが、この人だけは一線を画していて、
先生というより、カウンセラーかと思うほど、いろんなことを気にかけてくれる
患者である妻だけでなく、家族である私にまで優しい言葉で投げかけてくれる

その先生にお世話になって、かれこれ1年が過ぎた
その間、2度の入退院があり、入院中の異性間トラブル、2度の不倫、3度離婚を切り出された
精神患者の家族の辛さをよく知っているからこそだとは思うが、
それでもその先生の一言がグッとささり、涙が出そうになってしまう

最近の妻の病状といえば、躁鬱の状態が混在しているようで、
もはや躁なのか鬱なのか判断が難しい状況が続いていた
もう私の手には負えないと思いつつ、入院がいい結果を及ばさないことは経験済みだし、
彼女の血縁を見れば、精神疾患を持っている人が数人はいるので、
もしかしたら双極性障害以外の何かがあるのではないかと思っていたので、
その線も踏まえて、今後の治療をお願いしようと先生に話そうと思っていた先日の診断の日

いつも通りの3者での診断の最後に、旦那さんだけ残ってもらえますかとのこと
どんなことを話されるのかと、内心恐怖と言えるほど、緊張していた
『双極性障害という名前では、整理できないかもしれない。彼女のこれまでのことを踏まえても、統合失調症、もしくはそれの合併症として、様子を見ていきたい』
とのことだった
本当に心を見透かされているようなのだが、自分から切り出せないこともあるので、先生の口から言ってもらえることは、非常にありがたい

お世辞にもお話の上手な先生ではない
その代わり、ゆっくり、慎重に、自分の言葉で、絶対に相手を傷つけないように話してくれる
お医者様というのは、ちょっとやそっと勉強して慣れるものではないし、
相手にするのは、お客様ではなく、それぞれ病を持った患者さんが全てなわけで、
精神的にも相当タフで、高尚な考えの持ち主でなければ、やれないと思う
更に、この先生を見る限り、単なる頭のいい人ではない
莫大な知識と経験から、患者さんへ最大限の配慮をし、言葉を選び、薬を選ぶ
その場しのぎの答えのない会議とは違う
月一程度の大事な診察
この診察が終われば、向こう一カ月の患者の命がかかっている
たった数分か十数分の診察で、多くの選択をしなければならない

会社のしょうもない会議のように、ではまた次回とか、情報を持ち寄ってとか、
有識者にも同席いただいてとか、そんな流暢な事は言ってられない
1回1回、必ず一人で選択、決定をしなければならないどころか、
それを多く患者さんに対し行い、外来だけでなく、入院の患者さんにまで目を向けている
とても普通の人がこなせるものではない

今は、妻の経過がよくなく、月一どころか、2週に一度の通院になっている
その2週間がどれだけ長いことか
次の診察が、どれだけ待ち遠しいことか

先生には、感謝、尊敬しかない
今自分にとっては、神様よりもずっと大事な人だと言える

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