なぜBTSのFNS出演に抗議してはいけないか 【#BTSのFNS出演に抗議します】
K-POPアーティストが日本の市場を食い散らかすことが不愉快だという心情は理解しないわけではない。しかし、だからといって、このような「抗議」が何の益ももたらさないことが分かっているから私は批判しているのだ。
別に、道徳的見地から批判しているわけではない。もちろん「道徳的に正しくない集団」というレッテルを貼られてしまう、という懸念は批判の根拠の1つには含まれているが、それは私自身がその「道徳的正しさ」に同意しているということではない。
「自分の周りにBTSのファンなんて一人もいないし、自分もBTSの曲なんて聞いたことがない。だからBTSの人気は捏造だ」みたいな陰謀論を主張する人もいるが、感覚が古すぎる。現代は、昔みたいに「国民的な流行」は生まれにくいのだ。例えば、YouTube登録者数トップだったはじめしゃちょーのことを未だに知らない日本人は大勢いるだろう。ていうか、多分はじめしゃちょーの知名度調査したら多分50%もないと思う。わからんけど。で、はじめしゃちょーより登録者数が多いことが最近判明した「キッズライン」というチャンネル、私はその存在すら全く知らなかったし、今も「はじめしゃちょーより登録者数が多い」という事実以外は何も知らない。
要するに、「自分や自分の周辺には知られてないけど、実は多くの固定客を掴んでいるもの」というのは、現代では物凄くたくさん溢れている。カラオケに行くと、前の人が歌った履歴が見れたりするが、演歌でもJ-POPでもK-POPでもアニソンでもない、いわゆる「ボカロ曲」と呼ばれるものが上位を占めてたりする。これも、ボカロ曲に馴染みのない人から見れば「なんでこんなのがランキング上位にたくさん入ってるんだ?」と思うだろう。
それほどまでに、現代人の趣味・嗜好は細分化されている。それは、マスメディアの力が弱体化していることの証拠でもある。だから、自分の周りにK-POPファンが居なくても、それはK-POP人気が捏造である証拠にはならない。
だいぶ話が脱線したが、要するに、K-POPのファン、K-POPのリスナーというのは、日本国内の我々の知らないところに、ものすごく大勢、実在しているということである。これは事実として認めたほうが良い。事実から背を向けて陰謀論に逃げる人は、戦う前から負けが確定している。
もちろん、日本国内のK-POPファン、K-POPリスナーというのは、大多数が日本人である。「どうせ在日が聞いてるだけ」みたいな偏見も捨てたほうが良い。もしかしたら、10年前くらいはそんなことがあったかもしれないが、仮にそうだったとしても、もうその頃とは時代が違うのだ。10年も経てば、日本の若者には、もはや工作を必要としないくらい浸透していると考えるべきだ。
そして、彼ら彼女らは、別にK-POPだけしか聞かない韓国信者ではなく、K-POPも聞くけど米津玄師も聞くしあいみょんも聞くしヒゲダンも聞くしという普通の日本人である。もちろん、本当にK-POPしか聞かないという人もいなくはないだろうが、そんな人は極めて少数だ。
そして、これが一番大事なことは、K-POPファン、K-POPリスナーの大半は、政治的にはニュートラルだ。彼ら彼女らは、韓国文化は好きかもしれないが、慰安婦問題には関心がない。靖国参拝問題にも関心がない。K-POPも好きだけど「みたままつり」も好きって人は決して少なくないと思う。ただし、みたままつりは好きでも、「みたま」の意味はよく分かってなかったりするのだろうが。
良く言えば中立、悪く言えば政治に無関心なK-POPファン、K-POPリスナーは、味方ではないが少なくとも敵ではない。敵ではない彼ら彼女らに対して、彼ら彼女らよりもかなり年上と思しき見ず知らずのアカウントが、物凄く高圧的に、口汚い言葉で、彼ら彼女らが大好きなBTSのことを罵っていたら、彼ら彼女らはどう思うでしょう。
まず100%間違いなく、「怖い」と思うでしょう。さらに、彼ら彼女らはネトウヨを憎悪することも間違いありません。
ですから、#BTSのFNS出演に抗議します は、百害あって一利なし、なのです。
これは、BTSに限った話ではありません。日本のアーティストに対しても同じです。例えば、#検察庁法改正案に抗議します で炎上してしまった、きゃりーぱみゅぱみゅさん。確かに、多くの抗議によってツイートは削除されましたが、削除したことによってきゃりーさんは考え方を変えたのでしょうか?きゃりーさんの本音はきゃりーさん本人にしかわからないのであくまで想像になりますが、きゃりーさんはきっと「文句言ってくる人たち怖い」以外には何も感じてなかったと思います。そして、炎上させてしまったことによって、かえってマスコミにその事実は拡散されてしまいました。まさに「消すと増える」です。その意味では、完全にネトウヨの敗北でした。
私は5年前の桑田佳祐さんの一連のバッシングに対しても、バッシングした側を批判してましたし、原則として芸能人の政治的発信に対しては超甘いと思います。なぜかと言うと、彼らを叩くメリットがなく、デメリットしかないからです。人気芸能人は大勢のファンを抱えていますので、バッシングをするとファンが反発します。つまり桑田さんやきゃりーさんを叩けば叩くほどファンが左傾化するのです。彼らがバッシング側の意見に同調することは99.9999%ありません。
逆に言うと、左翼が松本人志やつるの剛士をバッシングしてくれることは、タレント本人にとっては迷惑でしょうけど、我々としては「棚からぼた餅」なわけです。