民族自決とダイバーシティ

かつてアジア・アフリカ諸国が欧米列強の植民地だらけだった時代には「民族自決」という考え方が最も進歩的でリベラルな考え方だとされてきた、と思う。

ところが、21世紀になって、多様な民族が分け隔てなく平等に暮らすべきだ、という考え方が進歩的でリベラルな考え方の主流になってきた、と思う。

だが、この2つの考え方、ちょっと考えれば小学生でも分かると思うんだけど、どう考えたって矛盾している。

民族主義を掲げて独立した国は、異民族に対して排斥的になるのは、ミャンマーを見れば分かるだろう。彼らにしてみれば、なんでミャンマーにイスラム教徒がいるんだよ、あいつらはミャンマー国民じゃない、って話になるのは、当然とまでは言わないが、突き詰めていけばそうなってしまうよね。

じゃあ、多文化共生が良いのかって言うと、だったら別に独立しなくても良かったんじゃないの?ってなる。実際、独立後のほうが貧しくなってしまった国は沢山ありましたよね。

一方で、欧米列強から独立を認められなかった満州国。五族協和は単なるスローガンではなく、リアルに多民族国家でしたよね。実質的な支配権は関東軍が握っていた、というのは否定できないけど、満州国の首相は一応、初代も2代目も中国人だったんですよね。決して民主的ではなかったけど、国は豊かになりました。

そう考えると、シンガポールは「明るい北朝鮮」と揶揄されるような独裁国家で、やはり多民族国家です。シンガポールの首相は初代が建国の祖リー・クワンユー。2代目がリーの腹心だった人で、現在の3代目がリーの息子。要するに華僑であるリー家の独裁体制が今も続いているわけです。

これだけ見ると満州国って別に非難される謂れなどなくないですかね。シンガポールがOKなら満州国もOKでしょ。

一方で、マレー人による民族自決を掲げて独立したのがマレーシア。マレーシアにも華僑は大勢住んでましたし、今も住んでますが、建国の祖マハティールは、「ブミプトラ政策」と呼ばれる、マレー人優遇政策を推進します。これは国民の7割を占めるマレー人に支持される一方、欧米からは「人種差別だ」と非難されました。

マレーシアは、民族自決で、民主主義で、排外主義。
シンガポールは、ダイバーシティで、独裁。

ミャンマーは独裁な上に排外主義なので論外としても、民族自決とダイバーシティはなかなか両立しないわけです。

民族自決にもダイバーシティにもどちらにも欠点はあり、問題はあるので、私はどちらか一方に偏るのは良くないと思ってますが、昨今の自称リベラルの皆さんは、マイノリティーの民族意識(アイデンティティ)は大事にしなさいと言いながら、一方で白人や日本人のアイデンティティには冷淡で、時に抑圧的というダブルスタンダードが見られます。欧米で極右勢力た台頭したり、日本で立憲民主党が伸び悩んでいるのも、そういう部分が原因なんじゃないでしょうかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?