ハウスメーカーとデザインを考える(その3)
講義について
では具体的に何を教えているのかというと、本当にデザインを主でやっている人の基本中の基本のこと。
当たり前なことでも意外と知られていないことも多い。
建築家は常に人がどう感じて、どう見るのかを考えて建築を設計している。
目線を意識する。
一番わかりやすい話は天井だ。
基本的に人の目線より上のものは目立ちやすい。
特にモダンなデザインを目指す場合は出来る限り要素を少なくする。
なので天井カセット形エアコンを使用するのは非常に難しい。
使うときは構造材を露出させて、エアコンはスチール材で吊ることで要素をあえて多くして、目立たなくさせる。(分類としてインダストリアルデザインっぽくなる。)
どうしても構造材の露出がしにくい場合は、小規模ならルーム型エアコンの数を多くすることで対応することが多い。
他にも解決策はたくさんあるが、とにかく白い天井に天井カセット形エアコンをつけることは、美しくないものが目立つので基本的にはしないほうが良い。(あくまで基本なので、センスのある建築家はうまく扱えるのだけれども)
そんなデザインやっている人にとっては当たり前な話なのかもしれないが、きちんと言語化していないことが多い。
当たり前だと考えられている基礎も認識されていないことも結構ある。
伊礼智さんなど和モダンの作品をつくる建築家たちはノウハウをきちんと書籍やセミナーなどで教えているが、それ以外のデザインではそういったことをしている建築家は少ない。
だからこそ自分は一つのデザインに絞らず、様々なデザインの基礎を出来る限り言語化して教えていきたいと考えている。もちろん、最終的にどのデザインを取り入れるのかはその企業次第だと思っている。
ワークショップ・宿題について
もちろん、講義だけでは十分でないので、宿題とワークショップも必要となっている。建築を「知る」「見る」「考える」を習慣化してもらい、「つくる」まで結び付けてもらう。
基本的に宿題と言っても超簡易なもので、課題を調べてきてもらい、それについてなぜ良いかを話し合うことをメインにする。調べるには30分もかからない。ここで大切なことは「話す」ということだ。話すには考えていることが前提なので、なぜそれが良いかを考えることで、技術的な部分を身に着けてもらう。
それらの習慣がついてきたら最後に「つくる」だ。
建築家みたいに大量に模型を作り検討するなどまず不可能。なので、普段から空いている時間にスケッチする習慣をつけてもらいたい。自分も普段からアイディアが浮かんだらすぐにスケッチブックに書き込む。
空いてる時間があれば設計の練習をする。アメリカの教育で9m×9m×9mの立方体の中に住宅を設計する課題がある。これなら暇な時間に手を動かせる。
そのような課題を出して、普段から設計力を身に着ける簡易で出来る「つくる」ことを習慣にしてもらう。
最後に
そもそも自分が工務店向けやハウスメーカーや工務店と一緒にデザインを考えていきたいと思ったのは、自分が留学していたデンマークのハウスメーカーが作る住宅の質に驚かされたからだ。デンマークでは、一軒一軒コストをかけて建てる。なので、キッチュな偽物の材を使わない。そして、レンガで建物を建て、全体で開発することで町並みは統一されている。
今後の日本でも大工の人数は半減し、どんどん新規の着工数のが減少していくことが予想されている。だからこそ、一軒一軒丁寧に住宅が建てられるべきだ。
日本のハウスメーカーや工務店が町並みや地域に与える影響は非常に大きい。せめて自分が関わる地域の街だけは、美しい住宅が多く建ち並ぶことを願っている。
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