ハウスメーカーとデザインを考える(その1)
1.背景
現在、滋賀県のとある工務店さんからデザインの勉強会とデザインコンサルティングの業務を請け負っている。
社長さんはまだ若く、新しいことにどんどん挑戦していこうという姿勢で、今年も積極的に多くの若い新入社員を採用している。
最初に社員さんとお話しした際に、デザインについて学びたいけど勉強する機会がない、時間がない、デザインに関して相談したいということで宿題ありの勉強会+相談会をしようということになった。
ハウスメーカーは日本国内では今後は人件費や資材高騰、人口減少の影響もあって一般所得の人の家を作る機会はどんどん減っていくことが予想される。それに対して5,000万円以上の住宅の件数はやや微増、もしくは維持されることが予想されている。だから小・中規模ハウスメーカーとしても生き残りをかけ、高所得者層向けへのデザイン対応をしていくことも重要だ。
自分の設計の仕事もひと段落している段階だったので、デザインの考え方やディテールをまとめる→それを勉強会で還元する→収入を得るということも出来るので、社員さんのヒアリングの上、企画書を書き、実行することとなった。
通常、難波和彦さんをはじめ、ハウスメーカーと建築家が協同して、シリーズを作っていくことはよくあるが、それには莫大な時間とコストがかかる。なので今回の勉強会の目的は、高級物件に対応できるスタッフの育成である。
2.デザインの分類
デザインを教えるにあたって、まずはどんなデザインを建築家が行うかをおおまかに分類した。
主に日本のデザインで主流なのは「モダン」「和モダン」「インダストリアル」の3種類で、このノウハウは教えやすい。逆に「プリミティヴ」「フューチャリズム」「エスニック」は中途半端に真似しても、コストや安全性の観点から現実的ではないと考える。(そもそもこれらを希望する人は最初から建築家に依頼すると思う。。。)
もちろん、これらは大まかな分類であり、これらの中間を行き来することも多い。
「和モダン」は伊礼智さんを中心にデザインスクールや書籍などで、ノウハウがかなり入手しやすいので、これらのデザインを取り入れている地域の工務店も多くなってきている。
「モダン」は、一般的なハウスメーカーが一番意識しているのではないだろうか。歴史も長く、ノウハウはかなりあるはずなのに、それらのデザイン要素はしっかりと言語化されていないのではないだろうか。超高級物件ではモダンが一番多い。
「インダストリアル」は、自分の言葉であてはめたものだが、近年の若手建築家の多くはこれにあたるのではないだろうか。そもそも日本の経済的衰退やコストの増大によって、工夫でデザインしていくという思想が強くなっていると感じる(ラカトン・ヴァッサルの影響も大きい)。ただしディテール面で非常に難しい挑戦的な部分もあり、その中のデザイン要素だけを抽出して教えるのが良いのだろう。
3.デザインの考え方
これら3つのデザインを主軸にすると非常に教えやすい。
モダンなデザインにしたいから素材はこう、ディテールはこうなるとかが言語化しやすいからである。
以前にとあるハウスメーカーのデザインコンサルをやっている会社の資料を見させてもらった機会があったが「ブリティッシュ・SOHO」スタイルというコンセプトを打ち出していた。資料には見栄えが良い写真と格好の良い言葉が並べられていたが、現場でどう実現し、バラバラなコンセプトをどうまとめるかという視点が全くなく、出来上がったものもデザインとして微妙ななものになってしまっていた。
もちろん、センスと時間があれば実現は可能だが、中小規模のハウスメーカーのスタッフが一件一件にかける時間がない。
4.続く?
さて、具体的にどう教えてるかはまた次回にし、またこのように実際にハウスメーカーと協同していて、お客さんから相談を受け、営業が対応し、設計部門が設計し、など仕組みそのものに問題がある場合が多い。
高級物件の場合は、その仕組みそのものを少しかえなければ対応出来ないので、そこをどうしていくかも次回のお話しにします。