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上からの指示 vs下からの指摘 ~犠牲がなければ動かない~

千葉県八街(やちまた)市で児童5人が死傷した事故を受け、政府は30日午前、首相官邸で交通安全対策に関する関係閣僚会議を開いた。菅首相は、通学路を総点検し、緊急対策を実行するよう指示した。 
  (読売新聞オンラインより)


この記事が出る数日前、この事故に関するニュース番組の中で付近住民の人がインタビューを受けていて次のような発言をしていた。

「以前から危険だと思っていた。何度も安全対策をうったえたが、聞き入れてもらえなかった」

はたしてこの住民がどこに対して、どのような要望を出していたかは不明であるが、ちょっと考えさせられた。あくまでも勝手な想像だが、この住民は交通量や道路の状況(道幅・ガードレールの有無など)から通学路の危険性を感じ、警察なり道路管理者である自治体なりに安全対策を要望したものの、なんらかの事情でいままで安全対策がとられていなかったものと思われる。

「なんらかの事情」とはいうまでもなくお金であろう。道路管理者がお役所である以上、潜在的な危険性があるのはわかっていても予算がなければ何も出来ない。緊急性のある事態でもない限り、この件の担当者がいくら「現場を確認しましたが、確かに危険な通学路です。緊急性はありませんが、ガードレール等の安全対策が必要と思われます」と上司に訴えたところで受け入れられないであろう。せいぜい、「来年度の予算案に組み込んではみるが、他にも優先順位の高い工事が山ほどある。どうなるかは不明」となるのが関の山では?


が、菅首相が「通学路を総点検し、緊急対策を実行するよう指示した」以上、この危険な通学路に安全対策がなされることは間違いない。いくら予算がなくても、上から「やれ!」といわれれば予算をひねり出してでもやらなければいけないのが宮勤めなのである。もしかしたら国から特別予算が交付されるのかもしれない。


「あのときにガードレールを設置していれば・・・」と悔やまれるが、このことで道路管理者を責めてはいけないと思う。すべての通学路にガードレールを設置することは(予算的に)不可能である。死傷した児童には大変申し訳ないが、こればかりは仕方がない。仮に多額の予算を投じてガードレールを設置したとしても、通学路に潜む危険は他にもある。2018年の大阪北部地震によるブロック塀倒壊による事故は記憶に新しいし、柵のない用水路も危険であろう。川崎市登戸通り魔事件といったものだってある。

交通事故や不審者対策を行ったとしても、それで終わりではない。ゲリラ豪雨や雪が降ったときの対策として、すべての通学路に滑り止めや排水設備を設置する?山間部の学校に通う児童のために、危険な山道をすべて舗装してガードレールを設置する?警報機も遮断機もない「第4種踏切」対策は?

イノシシや熊といった危険な動物が出没する地域だってある。大阪でも猿・イノシイ・アライグマ(結構凶暴)・ツキノワグマが実際に目撃されている。これらの動物から児童を守るための対策は?


(下から)指摘されたが、予算がないので出来ない。
(上から)指示されたので、予算をなんとか工面する。


こんな判断基準でいいのだろうか・・・と思うのだが、残念ながら正解が見つからない。誰かが死に、マスメディアが大きく取り上げなければ何も変わらない。そんな日本でいいのだろうか?


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