本末転倒勢より、愛をこめて
こんばんは。usigome62です。
ポケモンスリープ(以下ポケスリ)についての記事です。
今回の記事は、24年9月21日付の産経新聞「ポケモンスリープで睡眠の質アップ 攻略の要は「快眠」、寝不足日本に効果はバツグンだ」という記事を読んだ感想です。
6,000字を超える以下の文章を要約すると
「ポケスリ、大丈夫なの?」という内容です。
ポケモン全般のファンであり、ポケスリをリリース時から毎日プレーしていた僕の率直な感想は、記事内のポケモン社の代表取締役の「睡眠をせず課金してプレーするのは本末転倒。目的は、あくまでも睡眠の質の向上」という表現について、代表がこのような言葉を使ってまで課金プレーヤーを煽るメリットは何だろう?というものでした。
同時に、この表現に大きな違和感を覚えたため、次回の更新のタイミングをもって自分自身は課金を辞めようと思い、すぐにサブスクの解約を行いました。
参考:課金(月額のプレミアムパス課金)を行っている理由の記事
以下をお読みいただける方は、あらかじめ僕自身のこうした立ち位置や課金に対する考え方についてご理解いただき、以下において運営に対する否定的な内容を含むことをご承知おきの上でお読みいただけるとありがたいです。そのような読み物がお嫌いな方につきましては、戻るボタンでお戻りいただければと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、本題に入りますね。
大前提として、ポケスリは「朝起きるのが楽しみになる睡眠ゲームアプリ。」というキャッチコピーで、プレーヤーに良質な睡眠を通して健康と楽しみを提供してくれるアプリだと僕は理解しています。
ゲーム内容についてはここでは割愛しますが、僕自身はポケスリのおかげで毎朝起きるのが楽しみになり、カビゴンとの寝る時間の約束を守るため、ついつい遅くなりがちな就寝時刻を一定に保つことができています。
ゲーム自体については、現状本当に満足していて、課金した金額に見合うだけの楽しみを提供してもらえているな、ありがたいなと思っています。
例の記事は、ポケモン社(株式会社ポケモン)の代表取締役でありポケスリの担当役員である宇都宮氏の名義で発信されており、株式会社ポケモンのHPでも代表取締役社長である石原氏と並んで名前が記される宇都宮氏の発言は、株式会社ポケモンの公式発信と呼んでも過言ではないと思われます。
記事全体の流れとしては、ポケモンスリープは睡眠の改善を最大のテーマに掲げ、そのために長時間の睡眠(8時間半)を理想、すなわち100点満点としてそこから逆算した報酬や攻略の設定を行っていること、不足しがちな現代人の睡眠時間は、ポケスリのおかげで改善されている、というもので、それ自体に大きな異論はありません。
ポケスリは、よく知られているように基本プレー無料であり、課金せずとも(他のスマホアプリによくある広告などもないため)快適にプレーすることが可能であり、非常に良心的な部類のゲームだと思います。
この記事によると、現在のユーザーの9割は無課金でプレーしているとのことです。
ここでの「課金」という定義が、毎月定額の月額料金を支払うプレミアムパス課金のことを指すのか、それともゲーム内通貨である「ダイヤ」を直接リアルマネーで購入するダイヤ課金のことを指すのか不明であり、詳細は分かりませんが、ほとんどのプレーヤーは課金をせずにポケスリを楽しめているようです。
それ自体は本当に素晴らしいことですし、そのようなゲーム作りをしてくださっている皆様に感謝しています。
問題はその後
「睡眠をせず課金をしてプレーするのは本末転倒。目的は、あくまでも睡眠の質の向上」という表現の部分です。
これ、
「睡眠の質の向上が最も大事」ということを最も伝えたいのだとして、
現在課金している客(あえて「お客様」とは言わない)を煽ったり貶したりする必要がどこにあるのか、という点が個人的には一番引っかかったんですよね。
最初に明記しておきますが、僕自身は
・仕事家事育児勉強をすべてやると到底、睡眠時間8時間半なんて取れない
・それでもポケスリを楽しみ尽くしたいという気持ちがある
・運営が長くゲームを持続してくれればと思い微力ながらプレミアムパス課金を継続している
という、紛れもない「本末転倒」の民です。自覚あり。
偉大なるポケモン社の代表取締役の方に対して、僕自身が何かを申し上げるだけの立場にないことなんて百も承知ではありますが、「ポケモンという巨大なIP(知的財産)を扱っている会社のトップが、自社のサービスに金を払っているユーザーを蔑ろにする発言を平気で行うことの意味」については、ここに問題提起として書かせていただきます。
何かを持ち上げるために別の何かを貶める必要はないでしょう。
任天堂を持ち上げるためにソニーを貶める必要がありますか?
野球を持ち上げるためにサッカーを貶めますか?
今回の件に当てはめると、
「睡眠をせず」と「課金して」とを二つ並べて用いている部分ですね。
これ、
①睡眠時間は短い&課金しているプレーヤー
②睡眠時間が長い&課金しているプレーヤー
③睡眠時間が短い&無課金のプレーヤー
④睡眠時間が長い&無課金のプレーヤー
いったい誰のことを「本末転倒」と言っているんですかね?
それぞれが各々で解釈してもらえれば良いと思いますが。
これ、別軸として考えてほしいのは、ゲーム自体の収益構造についてです。
プレーヤー側から見ると、睡眠時間が長くなれば、攻略に有利になる。
これは大前提として間違っていないと思います。
どうしても睡眠時間が長く取れないが、課金することで少しでも有利にゲームを進めたい(睡眠時間の短さをカバーしたい)というプレーヤーがいたとして(僕は比較的そのような考え方で課金しています)、この層はゲームの運営においては重要ではない、という認識で大丈夫ですか?
僕の知る限りでは、プレーヤーの睡眠時間が長ければ運営に多くお金が入る、なんていう仕掛けは聞いたことがないので、ポケスリというゲーム自体の収益はゲームに課金するプレーヤーが払っているお金によって大きく左右されるのではないかと推測しています。広告が存在するゲームでは、広告主から運営にお金が払われるため、ゲームの課金額に対する依存度は低くなります。
この件について、僕はXでショッピングセンターのフードコートの例を取り上げて問題提起を行いました。
無料の水だけ飲んで居座っている人がたくさんいて一見賑わっているように見えても、飲食店で食事をしてお金を払っている人が少なければ、その場所はいずれ廃れて最終的にはつぶれる
理由は、快適なフードコートを維持するための空調や清掃といった環境整備もお金がかかっていて、この構造は無料で遊べるが課金者がいなければ採算が取れないスマホアプリと同じではないか(字数の制約のためポストは上記を要約したもの)
という内容です。
これに対して、フォロワーさんの1人が「食品や衣類など他の買い物をたくさんしたお客さんが多ければ、フードコート自体が赤字でも施設全体は維持されるのではないか」という問いを提起してくださり、大変面白くありがたいなと思ったのでここにも書かせていただきます。
これはまさにご指摘のとおりで、フードコート内の個々の飲食店テナントが採算が取れずに撤退したとしても、いずれ次の飲食店が補充され、全体としてのイオンやららぽーと本体は変わらずに営業され続けるわけです。
このことをポケモンに置き換えて考えてみると、
株式会社ポケモンが統括する「ポケットモンスター」というビジネス全体が、イオンやららぽーとで、フードコートの個々の飲食店は、ポケモンというキャラクターを使った各種ビジネスだと捉えることができます。
株式会社ポケモンの代表取締役であれば、そうした全体を見た俯瞰の視点から自社のブランドであるポケモンについて考えることが当然であり(全国のイオンを統括する役割と同じ)、個々の店舗についての細かな目配りよりも全体に対する意思決定や指示出しがメインの仕事になるだろうことは間違いないと思われます。
ここで、例の話に戻りますが、ポケスリの課金プレーヤーを煽る発言の裏にある意図は何だろうと考えると、いくつかの可能性があります。
①ポケスリは株式会社ポケモンにとって、単体で利益を確保する必要のない分野である
⇒これは、多角化する企業集団では当たり前の戦略ですが、その店や部門単体ではずっと赤字で不採算であるが、諸々の事情により赤字でも他の部門から利益を回して補填しながら営業を続けている、というものです。
具体的には、地価は高いがその場所に出店していることが会社のステータスになる店(銀座や新宿の一等地に店を構えるブランドショップ等)や、毎年赤字でも決して手放さないプロスポーツ球団の保有、企業の社会的責任(CSR)目的で設立された、利益性の低い分野(慈善活動、地域貢献等)を扱う部門などがあります。
こうしたCSRの一環として、ポケモンビジネスにおけるポケスリの立ち位置が「不採算であろうが、本社などから潤沢な資金の提供を受けることが予め決まっているため、ポケスリ単体では利益について考える必要がない」とされているのであれば、全て説明がつきます。
②現在の課金プレーヤーが離れても、本来のゲームの目的である「睡眠時間を増やして、健康維持にとって最も重要な良質な睡眠をとることの重要性を強く発信したい」
⇒ポケスリの構想からリリースまでに予定以上の時間を要したこと、さまざまな困難を乗り越えてリリースにこぎつけたこと、これらの経緯を総合的に鑑みるに、この可能性も大いにあると思います。
この「睡眠時間を増やす」という点については、後ほど別の角度から触れたいと思います。
③単なる経営者の失言or記事執筆者による経営者の本意とかけ離れた切り取り
⇒この可能性もありますが、憶測でものを書きたくないのでここでは考えないこととします。
ところで、話は変わりますが、ポケスリを語る上で欠かせないのが、ポケスリのリリースと同時に公式から販売された「Pokémon GO Plus +(プラスプラス)」以下「プラプラ」の存在です。
詳細について知りたい方は各種攻略サイトや攻略動画を見ていただければわかると思いますが、このプラプラを使うと、「睡眠計測を行いながらスマホで別の作業ができる」んですよね。
プラプラを使わずにスマホのみでポケスリをしようと思えば、基本的には「ポケスリの『ねむる』を押す→スマホを枕元に置く→寝る→起きる→ゲットチャレンジ」という流れになりますが、プラプラを使えばこの流れの中にスマホで「ポケスリアプリを含めた」操作を行える、ということになります。実際に、ポケスリの各種攻略を見ると、こうした「プラプラありき」で行われる「攻略」が多々あり、それは運営が意図した「格差」なのか、という疑念は常々あります。
ポケスリ界のネット用語として「噓寝」という言葉がありますが、実際にはプレーヤーが寝ていないのに計測は行われるという行為を指し、自分がやっているのかいないのかについては普通おおっぴらに公言されることもないでしょうし、自己申告や、話した人から悪意を持って暴露されることがない限りは表に出てこないでしょうし。
睡眠時間が獲得経験値やポケモンのレア寝顔ゲットに大きく影響する「グッドスリープデー」に合わせてこれらの睡眠不正がどれだけ行われているか(少なくともこうした不正を誘因するだけのインセンティブは大いにあるはず)について、あまり触れられない現状には僕は少なからず違和感を覚えます。
そもそも、ゲーム自体が「pay to win(勝つために課金する)」という前提で成り立っている世界であり、どのゲームでも課金要素がある限りは課金すればするほど攻略に有利になることは紛れもない事実なんですよね。
今回の件では、プラプラを持っているプレーヤーと持っていないプレーヤーの間に必然的に発生する「格差や不公平」について、まるで存在しないかのように一切触れられていないにも関わらず「睡眠時間が短いプレーヤーが行う課金は本末転倒」という強い表現で課金に関するお気持ちを表明された、という点は非常に示唆に富んでいると個人的には思います。
「実際の睡眠時間は短いのに、プラプラに課金を行っているおかげで睡眠時間を増やしてゲームを有利に攻略しているプレーヤー」に対する見解もぜひ聞いてみたいなと思っています。
この問題については「じゃあ自分もプラプラ買って同じようにやればいいじゃん」とかいう話ではなく、そうしてまで攻略を有利に進めたいのかという個人の良心に関する問題であり、ましてやポケスリの睡眠時間が8時間半取れたところで自身の実際の睡眠時間やそれに伴う健康状態については何一つ変わりませんからね。
なお、最近話題になったグリッチ(ゲーム内の不具合やバグを意図的に利用して、ゲームを有利に進める不正行為)については、ここでは深くは議論しません。
本来「上限は100」と全員平等に決まっているルールを自分だけ2倍にする行為については、積極的にBANされろとまでは僕は(自分に実害もないし)言うつもりはありませんが、攻略サイトや動画などを運営されている方が「ズルをして叩き出した数字に基づいて他のプレーヤーへ情報提供や自分すごいでしょドヤ」をしていたのならば、その方の情報発信への信頼は地に落ちてもやむを得ないだろうな、と思います。
話は変わりますが、少し前に話題になった「運営に対して攻撃的な投稿をする1ユーザー」に対して「運営(株式会社セレクトボタン)の中の人を自称するアカウント」が公開で反論を行った事案についても、今さら是非を論ずるつもりもないですし、どちらかに肩入れするつもりも毛頭ないのですが、今回読んだ産経新聞の記事の中には、本文中にセレクトボタンのセの字も出てこず(一応、トップ写真のクレジット欄をよく見ると確認はできるが)、株式会社ポケモンの代表取締役がお1人で話をされていたので、こういった記事や「睡眠せず課金は本末転倒」発言にはセレクトボタンの方々はどういう感想を持たれたのだろうな、というのも率直に気になった点ではあります。
いや、さっきのフードコートの話じゃないですけど、ポケスリという店が不採算で撤退したとしても、イオン自体は絶対なくならないですよ?ポケモン本体の社長にとってはポケスリも「数あるポケモンコンテンツのうちのひとつ(末端、とはあえて言わないが)」でしょう。
だけど、セレクトボタンにとってはポケスリという店は我が子同然でしょうし、ポケモン本体の人たちとは違う思い入れの強さがあるんじゃないですかね。
これ、もし実際はセレクトボタンにとっては課金プレーヤーからの課金が生命線で、重要性が高いのだとしたら、それは何らかの形で既存の課金プレーヤーに伝えるべきだと思うんですよね、強く。
言い換えれば「ポケスリ単体で採算が取れなくなる日がいつか来たとしても、本体である株式会社ポケモンがポケスリを守ってくれるのか、それとも数多ある消えていったポケモン関連ビジネスの1つとして歴史の表舞台から退場することになるのか」という話なんですよ。
ポケスリの(現時点では)愛好家である僕も、その辺りは非常に気になっているところで、今回の文章も大変長くなりましたが一番言いたいのはこの部分です。
「ポケスリ、大丈夫なの?」って。
大丈夫なことを願って、筆を置きますね。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
この文章が誰か1人でも関係者の方の目に留まりますように。