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わんちゃんと引っ越し|行うべき2つの手続きと申請方法を詳しく紹介

◎愛玩動物飼養管理士の資格保有者執筆◎

仕事での転勤や結婚、子どもが生まれたなど、引っ越しを考える機会は誰にでも訪れます。家族の一員であるわんちゃんも一緒に引っ越しをすることになりますが、引っ越しの際にわんちゃんに関して必要な手続きはあるのでしょうか?また、やむを得ない事情でわんちゃんを親族や友人に引き渡す場合は、どのような手続きが必要なのでしょうか?

今回は、そんなわんちゃんとの引っ越し手続きについて詳しく解説していきます。引っ越し前後は飼い主様も変更手続きや荷解きで慌ただしいかと思いますが、わんちゃんの手続きも忘れずに行ってくださいね。あらかじめ、どのような手続きが必要であるかを理解しておけば、まとめて市役所に提出できます。

ぜひ本記事を参考にしてスムーズに引っ越し手続きを完了させましょう!

わんちゃんと暮らすために必要な基本の手続き2つ

そもそも、わんちゃんと一緒に暮らすためには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

基本的にわんちゃんと一緒に暮らすために必要な手続きは「畜犬登録」と「マイクロチップ登録」です。マイクロチップ登録は令和4年6月から義務化された制度のため、義務化以前から飼い主様と暮らしているわんちゃんの大半は、マイクロチップを装着していないと考えられます。畜犬登録とマイクロチップ登録の詳細は以下の通りです。

【基本の手続き①】畜犬登録

畜犬登録とは、生後91日以降のわんちゃん、もしくは飼い主様と一緒に暮らすようになってから、狂犬病予防接種を受け、狂犬病予防接種証明書を市区町村に提出・登録することです。登録自体はわんちゃんの生涯の内で1回のみですが、狂犬病予防接種は毎年1回接種しなければなりません。

登録を行うと犬シール鑑札注射済票が貰えます。自宅のポストや玄関に「犬」と書かれたシールが貼られているのを見たことがあると思いますが、犬シールを貼っておくことで「この自宅は犬を飼っている」という目印になります。

鑑札と注射済票を受け取った後は、わんちゃんの首輪に装着します。鑑札や注射済票を装着していないわんちゃんは保健所の捕獲対象であり、保健所へと搬送されてしまいます。飼い主様がいること、狂犬病予防接種を打っていることを知らせるためにも、受け取ったら終わりではなく首輪に装着させることが重要です。

ちなみに、鑑札や注射済票は自治体によってデザインを変えることが認められています。引っ越し時には、どのようなデザインのものが貰えるか、楽しみにしても良いですね!

【基本の手続き②】マイクロチップ登録

令和4年6月1日からわんちゃんやねこちゃんのマイクロチップ装着が義務化されました。義務化前から飼い主様と暮らしている場合は、飼い主様の努力義務に留まっています。

マイクロチップは直径2mm、長さ2mm程度の円筒形です。マイクロチップには15桁の数字が記録されており、専用のリーダーで読み込むことでデータベースから飼い主情報を照合します。

災害時や迷子になった際は、データベースの情報を基に飼い主様の元へ返還します。そのため、住所変更や、飼い主の変更があった場合には速やかにデータベースの情報を変更しなければなりません。

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なぜわんちゃんに手続きが必要なの?

畜犬登録は昭和25年に定められた法律です。一方で、マイクロチップ制度は令和4年に義務化が始まったばかりの新制度です。

どちらもわんちゃんを守るた制度であり、家族として従わなければならない責任が私たちにはあります。それぞれの役割と意味を理解し、守るようにしてくださいね。

【理由①】感染症を防ぐため

狂犬病予防接種はわんちゃんを守ることはもちろん、飼い主様や人を守るために接種が定められています。

狂犬病は、噛まれることによって起こり、発症するとほぼ100%の致死率、治療法も確率されていないという恐ろしい病気です。日本では狂犬病は撲滅されていますが、他国では年間約5万人の人が狂犬病によって亡くなっています。

【理由②】飼い主様とわんちゃんを再会させるため

畜犬登録もマイクロチップ登録も、いわばわんちゃんの住民票のようなものです。わんちゃんの身分を証明する鑑札やマイクロチップは、迷子になった際や災害で飼い主様と離れ離れになってしまった際に大いに役立ちます。実際に東日本大震災では、鑑札や注射済票迷子札を装着していたわんちゃんは100%飼い主様の元に戻れたという報告があります。

首輪のみのわんちゃんで飼い主様の元へ帰れたわんちゃんはわずか14%であり、鑑札や注射済票が飼い主の捜索に役立てられたことが分かっています。

【理由③】不幸なペットを減らすため

わんちゃんと一緒に暮らすということは、わんちゃんの一生に責任を持つことです。どのような理由があろうとわんちゃんの遺棄は犯罪です。遺棄の理由はさまざまですが、引っ越しを機にわんちゃんを手放す人も多くいます。

「ペット可の賃貸は高いから」「同棲する彼女が犬嫌いだから」など自分勝手な理由で遺棄する方も多く、今後はコロナ禍で迎え入れられたペットも「仕事がリモートではなくなったため飼えない」「コロナ禍の娯楽として飼っただけ」というような理由で手放される可能性が考えられます。

しかし、今後マイクロチップの装着が義務化されたことで、遺棄されたわんちゃんの飼い主様が誰なのかをすぐに把握できるようになります。わんちゃんを遺棄することは1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため、そのような飼い主様に対して処罰を与えられるようになるでしょう。

飼い主様の情報の変更を徹底させる必要がありますが、人の勝手な都合によって振り回されるわんちゃんが減ることも期待できるでしょう。

引っ越し時に必要なわんちゃんの2つの手続き

わんちゃんのために必要な手続きを理解できた所で、引っ越し時の手続きについて解説します。引っ越し時には、先ほどの畜犬登録やマイクロチップに登録されている情報を変更しなければなりません。

どこに引っ越しをするのかや、何の情報を変更するのかで手続き場所・方法は異なります。転出先、転入先どちらで手続きが必要になるのかを覚えておきましょう。

【引っ越し時の手続き①】畜犬登録の変更

畜犬登録の変更は以下のような手続きが必要です。

市区町村内での転居 → 「登録事項変更届」を提出
市区町村外への転居 → 転入先の市区町村、保健所にて「登録事項変更届」「鑑札」「注射済票」を提出
飼い主変更 → 新しい飼い主様が住んでいる市区町村で「登録事項変更届」「鑑札」「注射済票」を提出

飼い主様が変更になる場合は、鑑札と注射済票も必ず渡しておきましょう。鑑札と注射済票を紛失した場合は、鑑札が1,600円注射済票は340円で再発行が可能です。地域によって費用は異なるため、窓口で確認しておくと良いでしょう。

【引っ越し時の手続き②】マイクロチップの情報変更

マイクロチップを装着しているわんちゃんの場合は、登録されている情報を変更しなければなりません。登録方法は以下の2つがあります。

指定登録機関のオンラインで変更する(変更登録手数料:300円)
指定登録機関へ郵送、FAXで変更する(変更登録手数料:1,000円)

オンラインでの変更は費用が安く済み、且つ自宅から行えるためオススメです!マイクロチップを装着した証である「登録証明書」は、飼い主様の情報を変更する際や飼い主様自体を変更する際に必要です。無くさないように大切に保管しておきましょう。

登録・変更しないと罰則はある?

畜犬登録や新たに制定されたマイクロチップ制度は、違反すると何らかの罰則はあるのでしょうか。それぞれの罰則についても知っておきましょう。

●狂犬病予防法(畜犬登録)の罰則

畜犬登録は昭和25年に以下のように定められました。

狂犬病予防法(昭和 25 年法律第 247 号)

(登録)
第四条 犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合にあ つては、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、厚生労働省令の定めると ころにより、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあつては、区長。以 下同じ。)に犬の登録を申請しなければならない。ただし、この条の規定により 登録を受けた犬については、この限りでない。
2 市町村長は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有 者に犬の鑑札を交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない。
4 第一項及び第二項の規定により登録を受けた犬の所有者は、犬が死亡したとき 又は犬の所在地その他厚生労働省令で定める事項を変更したときは、三十日以内 に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地(犬の所在地を変更し たときにあつては、その犬の新所在地)を管轄する市町村長に届け出なければな らない。
5 第一項及び第二項の規定により登録を受けた犬について所有者の変更があつた ときは、新所有者は、三十日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その 犬の所在地を管轄する市町村長に届け出なければならない。
6 前各項に定めるもののほか、犬の登録及び鑑札の交付に関して必要な事項は、 政令で定める。

厚生労働省:狂犬病予防法(昭和25年08月26日法律第247号)

上記のように、畜犬登録を行うことや鑑札を首輪に装着しておくこと、わんちゃんの住所に変更があった際には届け出なければならないと記されています。

畜犬登録を行わなかった場合、20万円以下の罰金が科される旨も記されていますが、飼い主様の中には「畜犬登録をしていない人を見たことがあるけど…」という人もいるでしょう。畜犬登録は法律で定められているため、飼い主として従わなければなりませんが、畜犬登録を行っていない人も多くいます。

畜犬登録は狂犬病を予防する以外にも、鑑札によってわんちゃんの身分を証明する役割も持っています。「他の人がしていないなら、自分もしなくて良い」と考える人もいるかと思いますが、今後はマイクロチップ装着が義務化したこともあり、きちんと登録をすることで災害時には多くのわんちゃん、ねこちゃんが飼い主様の元に戻れるようになるでしょう。

「鑑札をしていなかったから、自分の愛犬だけが戻ってこない…」というようなことが起きないよう、畜犬登録は必ず行い、引っ越しの際にはわんちゃんの住所も一緒に変更してあげてくださいね。

●マイクロチップ制度に関する罰則

マイクロチップに関しては、ブリーダーやペットショップなどの販売業に携わる人物に罰則が科されます。販売業に携わる人物が装着・情報登録変更を行わなかった場合、飼養管理基準省令の遵守違反に該当します。都道府県知事による勧告や命令、登録取り消しなどの罰則が科される可能性があるでしょう。

現在、一般の飼い主様に対する罰則は定められていません。ただし、マイクロチップの義務化は新しい制度であるため、今後罰則が新たに加わることも考えられます。既に飼い主様と暮らしているわんちゃんのマイクロチップは努力義務です。鑑札はわんちゃんの身元を証明する大切なものですが、災害時や迷子の際に首輪ごと外れてしまうことも考えられます。

鑑札と合わせてマイクロチップも利用することで、よりわんちゃんの身分を証明できるのではないでしょうか。

引っ越し後はわんちゃんのケアも大切に

引っ越し後は、飼い主様も手続きや荷解きなどで慌ただしい日々が続くでしょう。わんちゃんにとっても、引っ越し後は環境の変化によって多くのストレスがかかります。

中には、不安を感じて夜鳴きをしたり、食欲の低下、嘔吐や下痢を引き起こしたりするわんちゃんもいます。新しい住居に慣れない間はわんちゃんにとって、飼い主様が一緒にいない時間は不安な気持ちでいっぱいです。「ぼくだけ置いて行かれたのかもしれない」という不安からパニックを起こしたり、手足を噛んだりといった自傷行為を行う可能性も考えられます。

引っ越し後は忙しいかと思いますが、できるだけわんちゃんが早く新居に慣れるよう、スキンシップや声かけを行い、安心させてあげましょう◎

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今回は、引っ越し時の手続きについてご紹介しました。わんちゃんも私たちの家族です人が転居をするときに手続きが必要なようにわんちゃんも手続きをきちんとしなければいけません

人のように言葉を話せないわんちゃんが迷子になってしまうと飼い主様の元へ帰りたいのに、帰れないという事態に陥ってしまうでしょう。そのような事態を防ぐためにも、飼い主様としては、鑑札や接種済票を首輪に装着し、変更事項があった際には速やかに変更を行う義務があります。

引っ越し手続きが終われば、わんちゃんとゆっくり新しい街でのお散歩コースを検討してみてはいかがでしょうか?早くわんちゃんが新しい住居や町に慣れるよう、飼い主様がサポートしてあげてくださいね!

●ライター:バーニー
愛玩動物飼養管理士の資格を保有
●編集:うしすけチーム

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