人馴れしていない保護犬に必須の「脱走対策」!具体的な対策法とは?
保護犬に限らず、どんなわんちゃんと暮らすときにも脱走への注意は必要ですね。脱走してしまったわんちゃんは迷子になり家に帰れなくなったり、自動車に轢かれたり、川に落ちたり…と、悲しい結末になりかねません。わんちゃんと暮らす上で、脱走への注意は怠ることができません。
その中でも、人馴れしていない保護犬(特に成犬)には、より一層の注意が必要とされます。その理由は、脱走する可能性が高いから、だけではありません。
人馴れしていない保護犬の脱走に注意が必要な理由と、家庭として迎えるときの具体的な対策方法を、実際に起こった事例も交えながらご紹介します。
人馴れしていない保護犬の「脱走リスク」が高い理由
人馴れしていない成犬が脱走する可能性が高いことはイメージできると思いますが、脱走から戻ってくることができる確率が低いことはご存知でしょうか?
それは、わんちゃんが暮らしてきた背景から持ち合わせている独特の特性が関係します。
人との暮らしを知らないため脱走のキッカケが多い
人馴れしていないわんちゃんにとって、人との暮らしは恐怖でいっぱいです。人だけでなく、人工的なものすべてが恐いのです。その状態は、毎日をお化け屋敷で暮らしているようなもの…。
例えば、食器が割れた音、子供が喧嘩している声などでパニックを起こします。ビニール袋やゴム製の物など、自然界にないものを怖がる子も多いです。人との暮らしを知らない子にとって、家の中は脱走の引き金になるものばかりなのです。
さらに家の中で暮らしたことがない子にとって、家の中が安心できる場所だとすぐには理解できません。きっかけがあれば、わんちゃんは恐怖から逃れるために家の奥に隠れるのではなく、家の外へ逃げ出す選択をしようとします。その結果、脱走に結び付いてしまいまうのです。
身体能力が高い
保護犬のわんちゃんは、身体能力が高い子が多いです。保護犬になるまでの経緯によりますが、元野犬の子などの場合は高いジャンプ力や瞬発力があり、通常のわんちゃんからは想像できない動きをします。
また、恐怖からパニックになった場合、火事場の馬鹿力の原理で信じられない身体能力を発揮します。時にはケガをしながらでも走り出してしまうことがあるのが、保護犬です。
見つかりにくい
人馴れしていないわんちゃんが脱走すると、人気のないところへ行こうとします。人の生活圏からはずれてしまうため捜索が困難で、見つかりにくいです。山に入ってしまうことも多く、その場合はほぼ見つかりません。
見つかっても捕まえられない
人馴れしていない子が脱走した際にいちばん困るのは、実は脱走後に発見できた後なんです。脱走後、なんとか見つけることができても、人が恐いため逃げてしまい、捕まえられないのです。
潜んでいる場所がわかっているのに捕まえられず、試行錯誤している間に車に轢かれてしまった…という悲しい事例も多くあります。
人馴れしていない子は脱走する可能性が高いだけでなく、無事に帰れる確率が低いのです。脱走は致命的であるということを、忘れないようにしましょう。
保護犬を迎えるときの具体的な「脱走対策」
人馴れしていない保護犬を迎える場合、脱走対策は徹底的に行う必要があります。方法はいくつかありますが、ここでは基本的な対策をご紹介しますね。
【対策①】生活スペースを囲う(ゲートの設置・窓の補強)
まずわんちゃんが家の中で暮らすスペースを決め、その周囲を囲みましょう。
リビングだけを生活スペースとするのであれば、リビングから外に通じる扉や通路に開閉式のゲートを設置します。扉があっても、開閉頻度が高いところ、開けっぱなしにするところには設置が必要です。ゲートは以下の条件に気を付けて選びましょう。
<設置するゲートの条件>
●もたれても倒れない突っ張り式
●簡単には開閉できないロック機能付き
●身体能力に合わせた高さ
これら条件を満たすゲートとして、ベビーゲートの活用がお勧めです。ただし運動能力が高い子の場合は、ねこちゃん用として販売されている天井近くまであるゲートを利用しましょう。
中型犬が180センチを超える柵を乗り越えて脱走した事例もあります。その子の身体能力に合わせて、ゲートを選んでくださいね。
窓には柵の設置も必要です。網戸は簡単に破いてしまいます。100円均一の突っ張り式の棒とワイヤーネットなどでも対応できます。
【対策②】強度の強いケージを利用する
はじめてのおうちで暮らすわんちゃんのために、安心できるハウス(ケージ)を準備しているでしょう。そのケージは、強度が重要です。
<利用するケージの条件>
●布製、木製ではなく金属製のもの(プラスチックなら強度を確認)
●角や天井まで金具で厳重に囲われている
●開閉箇所にロック機能がある
爪や歯があるわんちゃんにとって、布製のものは破くことができますし、木製のものは噛んで破壊できてしまいます。また、少しでも隙間があれば、身体能力の高い子はこじあけて脱走します。10kgほどのわんちゃんが、数センチの隙間を押し広げて抜け出した脱走事例もあります。
角から天井まで金具で固定されており、開閉箇所もロックがかる強度の強いタイプを選びましょう。
【対策③】玄関や窓には、こまめに鍵をかける
人が暮らす中で、玄関や窓には常に鍵をかける習慣をつけましょう。来訪者が玄関をあけてしまった、鍵がかかっていない玄関をわんちゃんが押して開いてしまった、なんてことも起り得ます。
また、急に扉が開くことはわんちゃんにとって恐怖です。鍵を開ける音で扉が開く合図となり、ワンクッション置くことでわんちゃんの恐怖を減らすことができるため、扉の施錠はオススメです。
【対策④】リード・ハーネスは併用し、強度の確認も怠らない
お散歩の用具は強度を重視して選び、首輪だけでなくハーネスの併用も行い、リードは2本利用しましょう。
パニックを起こしたわんちゃんのチカラは、想像以上にすごいです。100円均一のカラビナをひっぱる力だけで壊してしまうこともありました。お散歩用の用品は安価なものは利用せず、強度を重視して選びましょう。
そしてお散歩中にパニックになって暴れてしまい、首輪やハーネスが抜けることは、保護犬ではよくある事例です。首輪とハーネスなど2つ以上の併用があれば、どちらかが抜けても脱走を防ぐことができます。
またリードの1本は手持ちではなく、肩掛けタイプや腰巻タイプを利用することがオススメです。実は、最も多い脱走事例は、人がうっかり手を離してしまうことなんです。どんなに意識していても、うっかり事例が後を絶たないのが現状です。いざというときのために、リードが身体に固定されていれば、うっかりは起こりません。
保護犬の脱走対策は、少し過剰なくらいがちょうどいい
脱走は、わんちゃんにとっても、迎え主様にとっても、譲渡まで導いた保護主様にとっても、ツライことでしかありません。もし人馴れしていない保護犬を迎えるときは、脱走対策を厳重に行いましょう。少し過剰なくらいでちょうどいいと思ってください。
わんちゃんにとって窮屈そうに感じるかもしれませんが、安心してください。慣れてくれば、その窮屈さが「安全だ」ということをわんちゃんはきちんと理解します。そして、時間とともに信頼関係が築かれ、過剰な予防は必要なくなるでしょう。それまでの過程を、注意深く楽しんでいただきたいと思います。
すべてを恐れて震えるのではなく、安心して暮らせる家庭の温もりを知って穏やかに暮らすわんちゃんが、1匹でも増えることを祈っています。
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●ライター:大久保ユカコ
●編集:うしすけチーム