わんちゃんが食後に水を大量に飲むのは危険?!安全な量などを解説
◎獣医師執筆◎
飼い主様の中には、わんちゃんの食後に水を大量にあげてはいけないと聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、「理由は深く知らないかも…」という方も多いのではないでしょうか?
今回は、わんちゃんが食後に水の大量飲みをすることで、どんな危険な事態を招くかについてお伝えしていきます。食後、どのようなタイミングで・どのくらいの水をあげれば良いか、さらには水の大量飲みを防止する方法などについても解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
食後の水の大量飲みの危険性
聞いたことがある一方で、冒頭でもお話したように、具体的にどのようなことが起こるのか、知っている飼い主様は少ないのではないでしょうか?わんちゃんの健康を守るためにも、「リスク」を知ることは大切です。
ということでまずは、食後の水分多飲によって起こりうる危険なことについて解説していきます。
【危険①】胃拡張胃捻転症候群の恐れ
胃拡張胃捻転症候群は、一般的に胃捻転として知られている病気です。胃が大きく膨らんでねじれてしまう病気で、死亡率の高い病気です。原因はよくわかっていませんが、食後すぐに大量の水を飲むことも要因となりえるのではないかと言われています。
食後の大量の飲水以外にも、早食いや食後すぐの運動、過食、穀物食を多量に食べることなども原因と考えられています。特に大型犬に発生しやすいと言われているため、大型犬は注意が必要でしょう。
【危険②】その他病気が隠れているかも
わんちゃんが水を大量に飲むという行為の裏には、危険な病気が潜んでいる可能性もあります。水を大量に飲むことが症状にあらわれる病気として、糖尿病、クッシング症候群、慢性腎臓病、子宮蓄膿症などが代表として挙げられます。
普段からわんちゃんが飲む水の量をよく観察し、異常に増えた場合は動物病院を受診しましょう。
わんちゃんが1日に必要な水の量って?
そもそもわんちゃんに必要な水の量は一体どれくらいなのでしょうか?大切なことですので、きちんと確認しておきましょう。
1kgあたり50ml~60mlを目安に
わんちゃんに必要な1日の水の量は、体重1Kgあたり50ml~60mlです。普通の状態であれば、わんちゃんは自然にこの程度の水を飲んでいます。獣医師から何らかの指示がない限り、わんちゃんが飲む水の量をはかる必要はありません。
(参考:PetMD(https://www.petmd.com/dog/nutrition/evr_dg_the_importance_of_water))
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飲み過ぎることはある?
基本的に、健康なわんちゃんであれば、1日の飲水量を制限する必要はありません。
「水中毒になるのでは?」と心配される飼い主様もいますが、水中毒は水遊びなどでわんちゃんが無意識に水を飲む状態が続くときに発生するものです。普段は水中毒になるほど水を飲むことはありません。飲みたい時に、飲みたいだけ水をあげて大丈夫です◎
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食後の水のタイミングと量
食後に水を飲みたがるわんちゃんは多いですよね。一方で「食後は危険だから…」とお水を一滴も飲ませないようにしている飼い主様もいるでしょう。しかし!実は、食後にまったく水をあげてはいけない、というわけではありません。
では、食後の水分摂取に適切なタイミングとは、一体いつなのでしょうか?また、どのくらい量ならあげても問題ないのでしょうか?それぞれ解説していきます。
食後でも少しならOK
食後の水は、歯についたフードを落として歯の健康維持にもつながるため、適量をあげる程度なら問題ありません。わんちゃんが普段1回で飲む水の量を目安に考えましょう。例えば、いつも「ペロペロペロ…」と3回水を舐めとる程度で満足するわんちゃんの場合は、3掬い程度の水で大丈夫です。
いつでも飲めるように…と水皿いっぱいに水を入れて置いてあるご家庭もあるかもしれません。しかし、そこからお水を飲むと、飲みすぎにつながる可能性があります。食後は、水皿に入れる量自体を適量にするなど、飼い主様が調整してあげることが大切です。
食後30分程度待つと安心
食後すぐに水を少し飲ませたあとは、30分程度待ってから水皿を再び設置すると良いでしょう。
このとき、あまりにがぶがぶと水を飲む場合は、食後の水が足りない場合があります。様子を見ながら、食後に与える水の量をもう少し増やしましょう。
食後にお水を大量に飲ませないための対策
健康なわんちゃんが、食後に限って水を大量飲みする場合、これからお伝えする方法で防止することができるかもしれません。
・フードに水を混ぜる
フードにあらかじめ水を加えることで、食後の水の大量飲みを防止できる可能性があります。水ははじめからたくさん加えるのではなく、まずはフードが軽く湿るくらいで試してみると良いでしょう。食べてくれるようなら、少しずつ水を増やしてみましょう。
・早食いを防止する
食後に水を大量飲みする場合、フード自体も早食いしているケースが多いです。
早食いの防止には、フード自体の大きさなどを変えることも効果的な場合があります。もし選び方がわからない場合は、獣医師さんに相談すると安心です。知育おもちゃなどにフードを隠して、時間をかけて食べさせる工夫もオススメです。
わんちゃんの食後は安静にするのがベスト
今回は、わんちゃんの食後の水の大量飲みの危険性についてお伝えしました。
わんちゃんの健康のために、食後は飲水量の注意だけでなく、運動も控えることが大切です。フード自体を早食いする傾向のあるわんちゃんには、フードのあげ方の工夫も必要かもしれません。
わんちゃんが食後だけでなく、全体的に飲水量が増えたと感じる場合は、何かしらの病気が潜んでいる可能性もあります。早めに動物病院で相談しましょう。
●ライター:ttm
獣医師の資格を保有
●編集:うしすけチーム