想像してほしい|愛犬と過ごすなかでのひとりごと【エッセイ】
彼のごはんへの執着心は、すごい。
キッチンでごはんをつくっている間や、ごはんを冷ましている間は、そうでもない。しっぽを振りながらソワソワしているものの、わたしがキッチンから移動してしまえば、もうごはんのことは忘れてしまう。ボールであそんだり、お気に入りのベッドでうたた寝したりしていることだってある。
ところが、いざごはんをあげようとすると、勢いがすごい。
家に来てから間もないパピーだからかもしれないが、「座って」が、ごはん目の前だとなかなかできない。はやく食べたくて仕方ないようで、ごはん目がけてジャンプをしてくる。
以前、実家でいっしょに暮らしていたわんこも、たしかにごはんへの執着心がすごかった。いま一緒に暮らしている彼よりも、すごかった。わたしたちが食事をしているとき、机の下でごはんが落ちてこないかとじーっと待っていたし、いざごはんを準備しだすとキッチンで大はしゃぎ。吠えたりはしないものの、くるくる回ったりしっぽをぶんぶん振ったり、ときにはジャンプをしたりして「ちょうだい」とアピールしてきていた。
ただ、実家のわんこは、ちゃんと「座って」ができていた。
彼はどうしても「座って」ができず…勢いのまま、ごはんに前足をダイブさせてしまうのだ。
想像してほしい。ダイブの瞬間、彼の手やからだにごはんがべったりと付くだけでなく、床やカーペット、身の回りにあったわんこ用のベッドもべったりと汚れてしまうわけで。ときには壁もべったり。わたしの服にもべったり。もう、大惨事だ。
ちかくにトイレがあったとき、いちばん焦る。トイレのトレーやシートにごはんが飛び散ると、そこまで舐めてしまおうとするのだ。
もういちど、想像してほしい。かわいいわが子がトイレを舐めている場面を。きっと誰でも、「ヒィ」とちいさな声で言ってしまうくらい、衝撃的な光景だ。
いそいでシートをはがし、トレーをシャワーできれいにしながら、いつか彼が落ち着いてごはんを食べてくれる日を夢見るものの…あまりリアリティがない。けれど、わんこもわたしたちと同じ、生きものなわけで。思い通りにいかないことがあたりまえだよなあ、とあらためて思う。ドタバタごはんタイムも、楽しんでいくしかない。
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