見出し画像

キウイ|愛犬と過ごすなかでのひとりごと【エッセイ】

スーパーで、わんこのためにとキウイを買った。

以前から、スーパーのくだもの売り場に、なんだか近寄れなかった。くだもの売り場のほとんどとなりにある、もしくは同じ場所にある野菜売り場は、ぜんぜんへいき。くだものが積まれているコーナーを見つけると、足が勝手にちがうところへ行こうとする。

どうしてくだもの売り場をこんなにも苦手におもうんだろうと、しばらく考えた時期があった。思うに原因は、くだもの売り場ならではの「家庭感」ではと至った。

くだものは、ネットやビニールで何個かセットで売られているものを買うと、安くなる。けれど、買ったら買ったで結局ひとりではたべきれず、ダメにしてしまう。

だったらバラで買おうと思って近寄っても、積まれたくだものをじーっとにらんでは「これだ」と厳選してカゴに入れる主婦さんの姿を見ると、一気に自信がなくなる。わたしがくだものを選んだところで、「これだ」となれるわけがない。

そんなくだもの売り場に、最近サラーッと行けるようになった。それはひとえに、わんこの影響だ。

わんこを迎え入れることを決意したとき、ネットや本でわんこにまつわる情報をあつめた。その最中、くだものも種類によってはわんこも食べられると知っておどろいたと同時に、うれしかった。買うのは苦手なわたしだが、実家の食卓で出るくだものは喜んでたべていたので、「くだもののおいしさを知ってほしい!」というきもちが高まり、スーパーへ行くたびに、くだものをジロジロと見るようになった。

何日もジロジロと物色しては購入に至らなかったのだが、ついにこの時…と決意して購入したくだものが、キウイだ。理由は単純で、旬ゆえにたくさん売られていたからだ。

「ぽったりした重たいくだものは、おいしいよ」

母からそう教わったので、袋ごしにおそるおそる持っては、すこし上下へゆらしておもさを確かめる。なんとなく重たい…?とおもったものを、袋に入れる。

帰宅後、さっそく袋からとりだしてシャリシャリと音をたてながらピーラーで皮をむくと、わんこがちかくに寄ってきた。ちょっと味見するとすこし酸っぱかったが、足元でずーっとしっぽを振っているので、ちいさくカットして、ひとかけらだけあげた。はじめての味に、心なしか顔が「なんだこれ」という顔になっていたが、「もういっこ」とうれしそうに跳ねてくれてホッとした。

きちんとした食事をあげて、デザートとして何カケかあげると、またしてもうれしそうにたべてくれてホッとする。

これからこの子は、たくさんの「はじめての味」を知る。いっぽうで、わたしがそれを買ってこない限り、「はじめての味」を知らないままになってしまうわけで。そうなると、わたしも世界を広げていかねばとおもう。とにもかくにも、わんこのおかげでくだもの売り場は克服できたので、感謝のきもちをこめて首のしたを撫でていたら、ガブッと噛まれてちょっとヘコんだ。

いいなと思ったら応援しよう!