solitude野宿

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最近の記事

「売れる」の「呪い」と「射程距離」

単純化された言葉で埋め尽くされた現代が嫌いだ。 薄いコミュニケーションにはその方が都合がいいんだろうな、とは思うけれど、そこに居る人の思いを何も語らない、ただの音声や文字が、無機質でつるつるしたボールか何かのように質感を伴わずに散発的に投げ合われるような空間に違和感があるのは、俺だけではないと思いたい。 (なんか最近はそう言う質感にすら「湿度」という名前がつくらしい。) で。そのひとつの例として。 「売れる」という言葉にいつもモヤッとした感情を抱えている。 何なら少し恐怖す

    • クロスノエシス:「希望への神話」と、その巫女たち。または、音楽の幸福な記憶に寄せて。

      ダークポップダンスアイドルユニット、クロスノエシスの4周年記念ライブを観てきた。 誰がなんと言おうとリキッドルームは日本一のライブハウスだ。 やや丸みのある四角形のフロアは、ライブの一体感を生み出す舞台装置として至高のものの一つだと思っているし、そこでこのライブが行われたことは、そこにいた人間だけでなく、音楽というものに記憶があるとしたら、その幸福な一つとして刻まれたのだ。と思う。 結論だけを先走らせれば、とても完成度が高い、ステージの上にいる人たちの愛と、それを観る人た

      • 「モンティは正解のドアを開けない」

        ある男の話をしよう。 彼と出会ったのは夏の夜。 新人警察官だった私が、赴任したばかりの街をパトカーで巡回していると、ある家の窓の外に立つ男が目に止まった。 どうやら老人のようで、こざっぱりした格好をしているが、片手には紙袋を抱えていた。 あたりはすっかり寝静まった時間だった。 老人が立つ窓の中も真っ暗だったが、奇妙なことに、その窓には外灯が取り付けられており、煌々とした光を放っていた。 そして。 老人は外灯が灯った窓を開け、その家に這入ろうとする!! 私はパトカーに

        • #内山結愛のB2BtoU vol.4 に関する自分の回答を晒してみよう のコーナー

          前回もやったやつ。遅くなりました。 1.中毒 「豊満の祭り」(豊満乃風) テレ東系音楽&お笑いバラエティ「バカソウル」にも出演していた(番組内ユニットかどうかまでは知らん)、いわゆるデブ芸人で結成された「湘南乃風」パロディユニットの一曲。  デブは命を削っても肉を食うのだ。今日も。これを中毒と言わずしてなんと言う。  ……すまん。出オチだわこれ。 2.黒 「Shadow」(Bonnie Pink)  黒だとど直球でビートルズ”Black Bird”(Bonnieもカバ

        「売れる」の「呪い」と「射程距離」

          夜を飛ぶ(5)(完結)

          帰投後、わたしは以前のように、レイの言葉を反芻していた。 わたしの任務は初めから存在していなかった。 “楽しい“ことを見つけるのが、わたしが生まれた理由。 そして。 わたしの記録/記憶と、思考と……心は、わたしの”命”。 「ナイトはもう命なんだよ。」 「自分のために生きていいの。」 わたしの思考のずっと遠くに、光が点る。 小さいけれど、眩いほどに明るく。 任務を喪失したわたしには、もう一つの思考があった。 機能の維持。わたしという個体の保存。 それは、人間でいう「本

          夜を飛ぶ(5)(完結)

          夜を飛ぶ(4)

          前回のフライトから12時間後。 起動と共に過去の記録をチェックする"わたし"の処理装置は、やはりいつもより少しだけ高い熱を帯びていた。 レイの言葉にはわたしが知るべきことがたくさんある気がしているのだが、わたしの辞書にはそれを読み解く言葉が足りていない。 だって、わたしには、感情が。 楽しい、が、わからない。 ……けれど。 レイが楽しそうな時、レイの声の波形がどうなるかは、わかっている。 そうした思考を繰り返す中。 中央からの短い通信が届く。 その内容はこうだった。

          夜を飛ぶ(4)

          夜を飛ぶ(3)

          点検と整備と補給で、24時間はいつものように経過した。 航空機の整備は「異常を生じさせない」ことが最優先である。 私の身体の構造材に異常が認められた場合、それは空中で私に深刻な事態を発生させ、墜落という形で任務の続行を不可能にさせる。 私の任務継続が不可能になった場合、「中央」で待機している私の同型機……妹が私の任務を引き継ぐことになっている。 そして私には、もう一つ私の妹に任務を引き継ぐ理由があった。 耐久時間の終了。 私の設計上許容されたそれは、16万時間。 「私たち」

          夜を飛ぶ(3)

          夜を飛ぶ(2)

          それから私は自分のシステムに一つのプログラムを組んだ。 もともと備えていたデータリンク用の送受信プログラムを流用して、テキストデータを流し込んで音声データに変換して発信する。 声が使っている周波数帯と同じなら、きっと届くはずだ。 何かに言葉を伝えるのは初めてだけれど、書く言葉は決まっていた。 「拝啓、赤い月の城の君へ。」 私はそれを空に投げた。 だってあの日は、月が赤く見えたのだ。 何度かの警戒飛行の途上、私はその言葉を何回か空に投げたが、通信が返ってくることはなかった

          夜を飛ぶ(2)

          夜を飛ぶ(1)

          私が生まれた時に与えられたのは、ただそうすることだった。 航空迷彩の暗灰色に塗装された金属炭素複合素材の翼の下に、放たれることのないロケットモーターを抱え、道のない空を、同じ道をなぞるように、定められた警戒ルートを飛ぶ。 ナイトバード・2022 私が生まれた時に与えられた、もう一つのもの。 それが私の名前だ。 「人間」の言葉では、ドローン、UAV、または無人航空機という。 2022という数字は、同型の中で2022番目に製造された個体、という意味である。 だからこの名前も、

          夜を飛ぶ(1)

          「アイドルに関するabcd…のレチタティーヴォ」に関する備忘録。

          ある側面、とても意地悪な企画だったよなあ、と思うのである。 ライブアイドルを(ニュートラルに言えば)鑑賞するということに横たわっている構造に強引に光を当てるような。 我々が手渡されたテキストは、以下のとおりである。 まず、あの小さな空間において我々は、合意においてと言う注釈があるにしても、一定の「公共」の元に引きずり出された。 その公共とは、ステージとフロアという、段差や照明の明暗で切り分けられた空間によらず、アイドルとファンが(教室のような対面関係にあるにせよ)同じ空間

          「アイドルに関するabcd…のレチタティーヴォ」に関する備忘録。

          Lighthouse.または、光の射す方へ。

          音楽というのは衣服のようでもある。と思う。 流行りも定番も、たとえ廃れても大事にしたいと思うものもある。 またはそれらが再び評価されることだって、時流の中でいくらでもある。 サイズが合わなくなったり、すり減ったりして脱ぎ捨てるしかなくても、記憶と共にいつまでも捨てられないものがあったり、たとえ似合わなくなっても、または似合わなくても、あるいは着こなせなくても、どうしても纏いたい装いも、同じように見えても少しずつ形を変えながら、または仕立て直されながら誰かに寄り添い続ける衣

          Lighthouse.または、光の射す方へ。

          月日さんのテーマソングというよりはイメージアルバムを考えてみよう、の回ー。

          どんどんどんどん、ぱふぱふぱふー。 ……入りかた間違えた。 月日さん(RAY)については、イメージが多面的というか、ステージの上でも、またはその外でも表現の幅が広いので、その魅力を短い言葉で語ることがなかなか難しくて、ひとこと「この人を見よっ!」って言うのが一番正しいんじゃないのか、と思う。 ダンスや表情に込めてる(または銃弾のように「籠めて」いる)メッセージというか「意味」の量が圧倒的だし、ボーカルも情感が乗りやすい声質と発音をしていると思う。 そしてもちろんシンプルに美

          月日さんのテーマソングというよりはイメージアルバムを考えてみよう、の回ー。

          「内山結愛のB2BtoU vol.3」への自分の回答を晒してみようの回。

          今回で3回めを数えた、アイドル2人が自分の好きな音楽をテーマに沿って一曲ずつプレゼンするトークイベント「内山結愛のB2BtoU 」。 たとえそこで取り上げられたミュージシャンが名前しか知らない人でも、さらには名前すら聞いたことがない人でも、好きな人が好きなもの・ことについて語っている姿というのは楽しそうでいいよね、という話なのであって。 またゲストの夢際りんさんもトークが巧みなので聴いてて尚更楽しかった(内山結愛さんの冒頭の台本喋りがぎこちなくてむしろちょっとキュンとした、と

          「内山結愛のB2BtoU vol.3」への自分の回答を晒してみようの回。

          拝啓、ジョン・F・ケネディ。

          タイトルはおさらいとしてWikipedia読んでたら「ジョン・F・ケネディはアメリカ初のカソリックの大統領だったが暗殺された。」っていうものすごくざっくりした書き方が超面白かったのでタイトルにしてみた、というだけの出オチ。 元ネタは「拝啓、ジョン・レノン」(真心ブラザース)。 そろそろ「オタク・プロテスタンティズム」に関して書き始めなければならないだろうなあ。 という覚書のようなもの。 というか。 そもそもキリスト教が求める「迷える子羊」像は、カトリックだろうがプロテスタ

          拝啓、ジョン・F・ケネディ。

          Das ist Schicksal. oder Dein Silbergarten.

          ドイツ語にすればカッコよかろう(ハートをつければかわいかろう みたいに言うな。)。 芸術というか娯楽というか、という問題がうるさいので、一回「表現」という言葉に止揚するわけだが。 表現に客観的、絶対的正しさなんてものは端から求めていない。 というか、もしそんなものがあるとしたら、さらに「正しさ」が求められるはずの、たとえば技術の世界には、目的に対してただ一つ正しいプロダクト というものが存在するはずなのだが、結果としてそうなっているものをほとんど見たことがない。 まあ絶

          Das ist Schicksal. oder Dein Silbergarten.

          2022年1月7日の和田輪。

          正確には1月8日か。 和田輪(ex. maison book girl)の復帰ライブとなった、「吉河まつり2022」に行ってきた。 ライブハウスのフロアはいつもある程度混沌としているものだが(混沌の程度#とは)、この日は一層いろんな人がいたような気がする。 (要するに和田輪のオタクと、ディアステ勢に代表される秋葉原の住民たちと、深夜イベントになじんだ人たち、またはそのうちの複数を兼ねている人、ということだ。) 東京のコロナウイルス感染症は「第六波」と言われる拡大傾向にあ

          2022年1月7日の和田輪。