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Mustafa
彼の歌声を初めて聴いたのはたしか去年の春だった気がする。コロナロックダウンの中、外出を極力控え、ニュースを見れば死者の数、陽性者の数字が絶え間なく流れ、新しい日常に慣れていない時だった。(と思う。少し記憶が曖昧だ。)
彼がどんな人なのか何を歌っているのかはわからなかったが、「Stay Alive」はその時の私の心に祈りのように強く響いた。
どうも、mohです!
今日は真面目な感じになると思われます。
というのも、この方は他のアーティストとはまた違う「訴え」があるように感じるのです。
調べてみると、それはMustafaという人のルーツにあるとわかってくる。彼ははカナダ、トロント出身の詩人、シンガーソングライター、そして映画監督でもある。
2021年5月アルバム「When Smoke Rises」でデビューを果たした。アルバムプロデュースにはプロデューサー Frank Dukes、歌手のJames Blake、The xxのメンバー Jamie xxが関わった。歌詞にはSimon on the Moon(彼については情報が得られなかったが、歌手として活動しているようだ。)とシンガーソングライターのSamphaなどと手がけたようだ。
ここまで読んだ人は「彼の何が特別なの?ただのバラード歌手じゃないの?」と思われるかもしれない。
それは彼の歌詞にある。
自らを詩人と名乗っているスダン系カナダ人のMustafaは12歳の時に書いた「A Single Rose」という詩を母校でパフォーマンスし、その動画は一斉に注目を浴びた。
当時MustafaはアフリカやRegent Parkエリアの貧困をテーマに詩を綴った。それは子供ながらにストリートギャングやガンバイオレンス(銃による暴力)のターゲットであった背景にあった。
彼は知人や友人がガンバイオレンスの被害者になるのを見てきた一人だ。
彼の背景が気になり、調べ始めると、このように子供の頃から詩や歌でメッセージを伝えてきたようだ。
本来なら私の言葉で彼の経歴を軽く説明するべきなのだが、私の小さい脳味噌では頭がこんがらがってしまい、まとめられそうにないので、この記事に目を通してほしい。
「Spectrum of Hope」は音楽家、Thompson Egbo- Egbo が当時10代のMustafaの詩を聞いたことを引き金に制作された企画だ。
2014年の記事↓
2016年、本名のMustafa Ahmedとしてステージパフォーマンスをしていた頃↓
全英語なので、わかりづらいかもしれないが、ここで彼は何故詩(poetry)を書くのか説明している。
彼にとって詩はコミニュケーションの一つだと言う。誰もができるのが詩だと彼は言う。
「(...) it's about creating that emotional connection.」(感情的に繋がることだ。(が詩である))
Mustafaのシスター(姉か妹か定かではない)が彼とのコミュニケーションの取り方がわからず、詩を書き、その応えとして彼が詩で返したのが彼の詩の始まりだったという。
この時彼が唄っている詩は、ある友人に向けたものである。悪い友達と交友を持ち始めた友人をMustafaは心配していたそうだ。ある夜、家で銃声が聞こえて来て、その友人が打たれたのではないかと心配になったそうだ。案の定その友人は足を撃たれていた。
その経験を受け、彼はその友人に向けた友情や彼等を繋ぐ(emotional connection)感情的な繋がりについて書こうと思ったと述べている。
Mustafa が Mustafa the Poet と名乗っていた時の詩のパフォーマンス↓
歌声の確かな技術もそうだが、英語がわからなくても、彼の言葉はそのリズムや抑揚により感情的な揺れがあるように感じる。
映像、音楽、詩を総体的なものとして見ているのはMustafaのミュージックビデオを見ると、わかる。
MVを見てもらうとすぐに発見するビジュアル的な共通点がいくつかある。
スタジオ撮影ではないこと、場所が大体トロントあたりであろうこと、彼の周りに友人らしき人達)や、その場所に住んでいる人々が写っていること(ほとんど例外なく移民)、そして住宅街の外装と室内のショットと、これは毎度ではないが、それに対比する大自然の中にいること。
そしてこれは一目見れば明白なのだが、Mustafaが被っている帽子はイスラムワッチ、彼はイスラム教である。
だがそれは彼の一部であり、彼の音楽そのものの価値とは関係しない。
二曲目の「Ali」はトロントで銃殺された友人、当時18歳のAli Rizeig に向けて書いたという。
2017年Ali Rizeigの記事↓
2021年「The Hearse」 の歌詞の説明をしている動画↓
You Tube のアーティストキャンペーンArtist on the Riseの短いインタビュー動画は彼にとってのコミュニティRegent Parkの重要性や彼の考え方がわかりやすくまとまっている。
Mustafaはただの歌手ではない。彼は声を使い、日常のやるせなさや深い愛を詠う詩人であると私は思う。
全ての作品には故郷や、コミュニティ、宗教、貧困、彼の経験の全てが優しく包み込まれている。
私は音楽にメッセージがある方が良いとかは全く思わない。音楽はそのバラエティに富んでいるからこそ、時には笑ったり、熱くなったり、様々な感情を呼び起こす。
歴史を見ればメッセージ性の強い音楽ほど誤解されやすく、また違った目的で使われやすいことは明らかだ。
彼の背景を知る前に、曲を聴いただけで心に強く響くものが私にはあった。それは彼の祈るような「訴え」が表現されていたからだと思っている。
私自身、何か強い信仰心などはないが、今の時代、彼のようにストレートに、日常に愛を捧げるような人がいるのは救いにもなると思っている。