六次化への道 始まり:牧場side
牧場は人手不足だった。
酪農体験を受け入れる教育ファーム活動をしてることで、いい人材が入ってきたこともあって、何か牧場自体の価値を上げることをすれば、数ある牧場の求人の中ですこし目立つ存在になるのではないかと思った。
地域で昔からチーズ工房をやっている人がいた。牧場から牛乳を買って、小さな工房で1人チーズを作っていたその人が、地域の酪農家向けのセミナーを行った。
その人は言った。
「チーズは簡単で、儲かるぞ」
俄然、チーズに興味を持った。
その時いた牧場の従業員に話し、興味のありそうな子に研修に行ってもらったりしてチーズを作ってみた。ゴムボールみたいなモッツァレラになってしまい、うまくできなかった。
相変わらず牧場は人手不足だったが、ハローワーク経由で入社した人がいた。
寡黙でもくもくと仕事をするが、丁寧な仕事ぶりで牛のこともよく見てくれる。
トラクターも乗れる。
あまり自身のことを話すようなことは多くなかったが、それでも数ヶ月経つと世間話の中でこれまでの人生の話なんかもするようになってた。
「フランスでチーズ作ってた」
?????
「エルベ・モンス(とても著名なチーズの熟成師)の元で授業をしていた」
????
「将来は自分でチーズ工房をやりたい」
!!!!!!
この人がいる間にチーズ始めた方がよいのでは!?とあれよあれよの間にチーズ工房設立が決まり、牧場従業員として働いていたスタッフを初代チーズ職人として据えたのだった。
ハローワークでの牧場スタッフ求人の1番下に「そのうちチーズ工房やりたい」と掲載していたことでうまれた縁。
そのチーズ職人は、素晴らしいチーズを作りあげてくれて。
1度食べてくれたお客様が必ずまた来てくれるようなチーズを作ってくれている。
六次化にふみきってから、たくさんの大変なことがある。
加工に意識しすぎれば、牛が疎かになる。でもそれは絶対やっちゃいけないこと。
販売スタッフとして、私が戻ってきた。
六次化するとちょっと目立つのか、牧場従業員もいい人材が集まるようになった。
チーズ職人さんが、チーズが美味しいのは牛乳が美味しいから、って言ってくれるから、牧場スタッフも嬉しい、モチベーションも上がる。
毎日しっかりチーズが作れるように、と思うと、出荷できない牛乳になってしまうようなミスも減った。
問題なんか次から次へとたくさん出てくる。ハッキリ言って超大変。
でも、高秀牧場にチーズがあってよかったと心から思います。
初代チーズ職人さんは、元々持っていた「自分のチーズ工房を持つ」という夢を叶えて独立し、いすみ市内にて小さなチーズ工房とカフェを営んでいます。今も、高秀牧場の牛乳を使ってチーズを作っています。
高秀牧場のチーズは、現職人に受け継がれ、さらに発展。
チーズ工房は、設立9年を迎えました。
9年間、毎月車を2時間も走らせて来てくれるお客様。3ヶ月に1度、ご来店のたびに次の予約をしてくださるお客様。毎回同じチーズを買って食べるのを楽しみにしてくださってるお客様。
チーズ工房立ち上げ当初は、ジェラートができるとか、カフェもやってるとか、想像できてなかったな。
、、、、、
「チーズは簡単で、儲かるぞ」
地域のチーズ工房の大先輩の一言がきっかけで始まったチーズ事業。
超難しくて言うほど儲からないぞ!!