「雪解けの芽吹き(仮題)」{あらすじ ストーリー案}

あらすじ

「・・・今日、泊まりに行ってもいいかな?」
八柳祥平(ヤナギ ショウヘイ)のスマホから聞こえてきたのは、会社の同期の両澤幸太(モロサワ コウタ)からの声だった。
「いいよ。部屋片づけとくわ」
これはよくあるやり取り。幸太はよく祥平の家に泊まりに来ていた。
でも今回はいつもとは違うと、幸太の声色で祥平は気付いた。
おそらくは、失恋だろう。
以前にも同じようなことがあったからだ。

しかし実際に家に来た幸太のゴシックパンクな服装に祥平は驚く。
それと同時に、これが元彼の趣味だったんだな、とも気付く。
幸太は元々もっと可愛い服が好みだったはずだ。
「急なのに、ありがとね」
力なく笑う幸太に、祥平は平静を装いつつも、どこか悔しさとも悲しさとも言えない気持ちにとらわれていた。

そうして二人の青年の同棲が始まる。

これは社会の中で自分を迷う青年と、そんな彼を慕う青年の、
変わらぬ暖かさを知る物語。


キャラクター設定

両澤幸太(モロサワ コウタ)

・一人称:僕(仕事中は私)
・喫煙者
・元カレの影響で吸うようになった。
・体の性別は男性。(内面は女性に近い)
・身長は150程度、体重も軽く、容姿は幼げで可愛い顔に、細身だけど適度に筋肉のついた体格。
・本人はその容姿だけは唯一自分の中で許せるもの。
・かわいいものが好きで、可愛い服も好き。自分も可愛くなりたいと思っている。
・自分の性別、男の名前、男特有の体つきなどが嫌い。
・好意の対象は男性。男性との恋愛経験が多く、女性との恋愛経験は1回。
・高校時代、告白されて女性との恋愛を経験するも、結局は相手を恋愛対象として見ることができずに別れた。
・人付き合いが上手く、他人から好かれることが多い。
・それも本人の「自分より他人を優先してしまう」性格がゆえでもある。
・ただ本人にその自覚は無く、人と関わっているとついその人優先で考えてしまっている。
・そのため今までの恋愛でも、必ず相手の好みの人間になれるように、無意識で頑張っているところがあり、趣味趣向や容姿も、相手の好みに合わせて変えていた。
・そのため男性らしい服装や、男性らしい恰好をすることも多かった。
・幸太の中では、「自分の好みと違う服装などをして苦しい」という感情よりも「人と一緒にいたい」という感情の方が勝っていたため。
・ただその歯がゆさ、苦しさが無かったわけではない。
(自分では「自分の男らしい部分」が嫌いなのに、今までの彼氏から求められる「男としての自分」というものに苦しんでいたところはある)
・ただ相手のために自分を変えてでも付き合おうとする幸太の姿は、その歪さというか、無理している感がむしろ相手の好きという気持ちを削いでいることがある。しかしそれを本人が気づいていない。
・本人が、ある意味勝手に相手の要望に応えようとしていて、その「無理している感」で振られてる過去もある。

・会社では同期の八柳祥平とよく一緒にいる。
(会社に入ってからは3年目)
・後輩女子に好かれている。(これは友人的な意味で)
・祥平の家にはよく泊まりに行ったりする。
・実際には借家などは無く、自分の実家はあるが職場から遠方のためほとんど帰っておらず、今までは自分の彼氏の家に同棲していた。
・彼氏と別れた時に、行く当ての一つとして、祥平の家があった。
・祥平には一番心を許している。

八柳祥平(ヤナギ ショウヘイ)

・一人称:俺(仕事中は私)
・喫煙者。元々吸っていた。
・男性
・身長は175程度。平均体重。少し筋肉質な体格。
・一人暮らし
・物事を一人で考える、抱え込むことが多く、あまり他人と話すことは少ない。
・寡黙というわけではないので、普通に世間話とかもできるが、仕事中などは集中していると周りからは話しかけづらい雰囲気を放っている。
(本人にその自覚は無い)
・それもあり、会社の後輩からは「頼りがいのある先輩」とは思われているが、少し距離を置かれている。
・ある程度の家事は自分でこなせる。
・幸太が家に泊まりに来た時は面倒を見てあげている。

・会社の同期の幸太とよく一緒にいる。
・幸太のことは、仕事以外では「さっちゃん」と呼んでいる。
・幸太に対して密かに恋心を抱いていて、本人も自覚している。
・幸太にはそれがバレないように抑えている。
・しかし幸太のことを、私生活でも仕事でも、つい手助けしてしまうことが多い。(幸太に対しては甘やかしがちになっている)
・幸太が、付き合う相手が変わる度に何かしら服装や装飾やメイクが変わるのを一番見てきた。
・そんな幸太の姿(というか向き合い方)が少し嫌だった。


あらすじ(本編全編分)

冬のある日。幸太は彼氏に振られる。
行く当てのない幸太は祥平の家に泊まることにする。
幸太が家に来るのを聞いて、何となく振られたのかもしれないと察する幸太。
彼氏に振られて祥平の家に来るのはこれで3度目だ。
私服で来た幸太。
ゴシックパンクな服装に少し驚いたものの、祥平は何も感づいていないように、いつも通り幸太を迎え入れる。
  ↓
後輩女子と飲みに行く幸太。
失恋したことを愚痴ると、後輩女子もその話題で盛り上がる。
でも、後輩女子の子と自分は違うんだと思うだけで、気持ちが晴れることはなかった。
ストーリー案
後輩との会話で「私の元彼なんて酷いんだよ?そんなやつだから切ってやった。そのくらいでいいんだよ」と言われるも
(彼はそんな人じゃなかった)と思ってしまい、それ以降後輩の話は頭に入ってこなかった
  ↓
酔っぱらって帰ってきた幸太を介抱してくれる祥平。
その祥平の存在にふと心が緩む幸太。
しかしすぐに、優しくしてくれる祥平に好意を抱きそうになって、(少し優しくされただけで好きになるなんて、僕最低だ)と思う幸太。
この日の服装は落ち着いた色だがアクセントの装飾もある、男性が着ていても不思議ではない程度に落ち着きのある可愛い服装だった幸太。
祥平は過去を思い出しながら複雑な感情を抱く。
幸太は相手によって服装を選ぶ。
だから今日は後輩女子と会ったんだとすぐに分かった。
だけど今回泊まりに来た時のようなゴシックパンクの姿は初めてだった。
昔もかっちりしたスーツ姿だったり、ゆるふわ男子系で雑誌に載っていそうな服装でメイクまでしていたり、毎回違う服装、メイクで訪ねてきた。
祥平は、そんな風に毎回変わる幸太の姿が少し嫌だった。
仕事で同期で初めて会った頃の幸太が1番好きで、祥平はそれがずっと忘れられないでいた。
でも嫌と思うと同時に、好きな人のためなら変われる幸太が羨ましくもあった。
祥平は、自分を上手く変えられないから、自分の思いを幸太に伝えることが出来ず、そのもどかしさに少し苛立っていた。
・ストーリー案
幸太は一人、布団の中でうずくまる。
少し前まで見ていた恋人の笑顔と、別れを告げてきたときの顔が思い浮かぶ。
(もっと好きだよって言ってれば変わったのかな?)
(もっと二人でいる時間があったら変わったのかな?)
(こんな私だから愛想尽かされたのかな?)
そんな事ばかり考えてしまう。
でもそれ以上に。
「やっぱり、僕が男だったから?」
その疑念が消えることはなかった。
それにこんなに前の彼氏に未練があるのに。
「ふらふらじゃねぇか。大丈夫かよさっちゃん」
「ほら、ちゃんと水飲んで。もう寒いんだからちゃんとあったかくしとけ」
「明日休みだけど二日酔いにならないようにな」
そんな風に気を使ってくれた祥平。
そんな祥平に少しでも勝手に好きかもと思ってしまった。
それが決定的に幸太を苦しめていた。
  ↓
まだ幸太は祥平の家に泊まっている。
会社からの帰り道。
・ストーリー案
冬の寒空の下。
幸太のかじかんだ手を、そっと握ってくれる祥平。
幸太が顔を上げても、そちらを見ることは無い祥平。
その横顔に少し照れくさくなって、さっきより俯いてマフラーに口元を埋める幸太。
そっと、握ってくれた祥平の手を握り返す
  ↓
まだ元彼に未練のある幸太。
だけど祥平は何も聞かず、ずっと居候させてくれている。
このまま祥平の家にずっといてもいいのだろうかという疑念が幸太の中に出始める。
自分がいることで、祥平の人生、特に恋愛にも影響するのではないかと不安になり始め、祥平の家を出ることに決める。
でも行く当てのない幸太は、自分の身体で居候先を探そうかとも考えながら、祥平の家を去ろうとする。
しかし祥平には引き止められ、そこで祥平の本当の気持ちを伝えられる。
祥平が自分のことを特別に思っていたことを知った幸太。
彼の様子を見ていて、冗談じゃない事は分かった幸太。
でも自分がここで応えたら、まるで自分が彼を誰かの代わりにしているようで怖かった。
結局その場では祥平の思いに応えず、家を出ていく。
祥平としては、この時の告白に応えてもらえず、振られたというショックで、結局幸太を引き止めることはできなかった。
祥平が告白したのは、意を決してという感じ。
勢いに任せたとか、つい口を着いたとかでは無い。だから落ち込みようも大きい。
・ストーリー案
「やっぱりずっと家にいるのは悪いから」
荷物を持ったオトコの娘が言う。
「そんなの、気にしなくたっていいよ」
「僕が気になるんだ。やっぱり」
しばしの沈黙。
「じゃあ、これからどうすんだ?」
「それは、考え中…かな?」
嫌な予感がした
「・・・居候先、また探すのか?」
「・・・うん」
そこでヘラっと笑うオトコの娘
「僕、居候先探すのは得意だから。だから・・・」
その先の言葉を待たずに、同期はオトコの娘の肩を掴む。
床に落ちるオトコの娘の荷物
「そんな事ばかりすんなよ!もっとお前、自分を大切にしろよ!」
驚いた表情のオトコの娘。
「本当は言うのが怖かった。でももう言わせてくれ!俺はお前にいつまでだってここにいて欲しい!俺の傍にいて欲しい!そんな、誰かのところになんて言って欲しくない!俺の、俺の恋人になって、ずっと傍にいてくれ!」
同期の言葉に驚いていたオトコの娘は、しばらくそのままだったが、ふっと悲しそうな表情で顔を俯けて目を逸らす。
「・・・僕、今日はやっぱり、他のところに泊まるよ」
その言葉に、同期の手の力が抜ける。
「そ、そうか・・・」
「・・・うん」
荷物を拾い上げ、扉に手をかけて出ていくオトコの娘。
「大丈夫。今どきネカフェもカラオケもあるんだから」
そう苦笑いだけ残して扉が閉まる。
  ↓
次の日から、職場で顔を合わせても会話ができない二人。
それでも会社での日常は変わりなく過ぎていく。
祥平は自分のしたこと、告白してしまったことを後悔していた。
幸太は居候先を探そうという思いは、祥平の言葉が頭の中をよぎってしまい、結局ネカフェで寝泊まりしていた。
幸太は「あんな風に告白されたの初めてだったな…」と、あの時自分を引き止めてくれた祥平のことを思い返していた。
この辺から、幸太の中で今までの男の事が少しずつ記憶から薄らいでいく。
  ↓
そんなある日の昼休憩の喫煙所で、二人は顔を合わせる。
特に会話をするわけではなかったが、少しだけ、幸太の方が、祥平と一緒にいたいような雰囲気を出す。
・ストーリー案
昼休憩の喫煙所。
祥平には、いつにもまして重たい煙が充満しているように感じた。
祥平が吸っていると、そこに幸太がやってくる。
「あっ…」
先に気付いたのは幸太の方だった。
少し居所の無さそうに、喫煙所の中で空いていた同期の横に来る。
2人は無言のまま。
祥平の方が居心地悪くてタバコの火を消す。
立ち去ろうとした時、袖を掴まれる。
祥平が振り返ると掴んでいるのは幸太だった。
「火、持ってない…?」
「あ、あぁ」
ライターを取り出して渡そうとすると、オトコの娘はタバコを加えて少しだけ顔をこちらに近づける。
ライターを受け取ろうとはしない。
祥平はその仕草にどぎまぎしながらも、なるべく平静を装って幸太のタバコに火をつける。
「ん。ありがと…」
幸太はそれだけ言うと俯いてタバコを吸い始めた。
意図が分からないまま、祥平はその場を去る。
(他に何か上手く話せないのか僕は)と自分を責める幸太。
  ↓
それから数日。
仕事終わり。普段なら会社の喫煙所を使う祥平だが、最近は幸太に会いそうで行けていなかった。
代わりに近くの駅前にある屋外喫煙所を使っていた。
幸太も仕事終わりに会社の喫煙所は使わずに、そのままネカフェに帰っていた。
ネカフェでの生活もあり、今まで持っていた元彼が好きだった服などは、荷物を減らすために中古屋に全て売っていた。
ネカフェで夕飯を食べるとき。横になって眠るとき。そのたびについ祥平のことが頭に浮かんできていた。
普段の生活の何気ない笑顔から、自分が祥平の家を出ていくときに見た、祥平の初めて見るあんな必死の顔。
それを思い出すたびに、胸の奥が締め付けられるような、吐き出せない寂しさを感じていた。
  ↓
この日も祥平は変わらずに屋外喫煙所に入る。
まばらにいる人たち。
その中に自分も混ざって煙草を吸う祥平。
つい、幸太のことを思い出してしまう。
・ストーリー案
吐いた白い息が空に漂いながら暗い空に消えていく。
寒そうに白い息を吐く通勤時間の君を思い出す。
最近は見ることができないその姿。
寒いね、なんて言って笑うその横顔。
今頃どうしているだろう。
新しい彼氏でも作って、暖かい部屋にいるのだろうか。
こんなこと考えてる時点で、俺はこの気持ちを忘れられそうにない。
君の声が届かない場所で、一人うなだれる。
言わなければ、の後悔だけが頭の中を回っている。
あの時のように、少しの間だけでも2人で暮らせる時間があるだけでも幸せだったのに。
空を仰ぎ、息を吐く。
また白い息が形を作ることなく消えていく。
  ↓
祥平が帰路に就く。
アパートの2階の自分の家の扉が見えた時、そこに誰かが座り込んでいるのが見えた。
幸太だった。
膝を抱えてうずくまっていた幸太。
その姿は出ていった日と同じ服装だった。
荷物だけは、少なくなっているように感じた。
祥平は一瞬迷ったが、そのまま幸太に声をかけ、家に迎える。
幸太はこれまでもこの日も、心の中はすっと気持ちがまとまらず、いろいろ渦巻いていた。
それでも行き場所を探す中で、やっぱり祥平の家に来ていた。
心のどこかで、もう一度祥平の家に行きたい、祥平と話したいという気持ちが芽生えていた。
  ↓
幸太を家にあげたはいいものの、何を話していいのか分からない祥平。
結局二人はほとんど会話をしないまま、その日は床に就いた。
・ストーリー案
幸太を家にあげたはいいものの、何を話していいのか分からない祥平。
お互い無言のまま。
先に口を開いたのは幸太だった。
「ありがとう、入れてくれて」
「あぁ。気にすんなよ」
再びの静寂。
祥平はとりあえずキッチンに向かい、夕飯の支度を始める。
そんな祥平の後姿を見つめる幸太。
「ねぇ、本当に僕のこと、好きなの?」
幸太はそう問いかけてみる。
一瞬、祥平の動きが止まる。
「うん。本当に・・・一緒にいたいと思ってる」
「ふぅん……」
幸太はそんな曖昧な返事を返すだけ。
結局二人は、夕飯の時も、寝るときまで、それ以上の会話もなく、ただ最小限の会話しかすることはなかった。
  ↓
再び二人での同棲生活が始まった。
相変わらず二人の会話が無い事以外は、幸太が出ていく前と何も変わらない生活に戻っていた。
ただ、幸太も気付いていたが、急に居候して、急に出ていった自分が、今こうして以前と何も変わらない生活を送れているのは、この家の物が、この家に置いていった自分の物が、そのままになっていたからだ。
それが、単なる片付け忘れなのかもしれないけれど、幸太には自分の居場所が残っていたようで少しうれしかった。
祥平はそもそも幸太が出て行ってから、まともに部屋の掃除もできていなかった。
幸太がいなくなった部屋の空虚感が苦しくて、幸太の物は全て片付けられなかった。
だから幸太が帰ってきても部屋が以前のままだっただけだった。
・ストーリー案
風呂に入っている祥平。
幸太は一人することもなく、手持ち無沙汰で部屋を見まわしていた。
そこでふと、机の上にある、普段から祥平が吸っているタバコに目が留まる。
幸太はそっと一本だけもらうと、ベランダに出ていく。
タバコに火をつけて一息。
「これが、いつも祥平が吸ってる味なんだ・・・」
そのタバコを、幸太はゆっくりと吸った。
  ↓
二人の会話は相変わらず少ないままの生活が続いた。
それでも幸太は、どこかで祥平といる心地のよさを感じていた。
それは今までの元彼に感じていた、「寂しさを埋めてくれる相手」というものに繋がっていた。
幸太にとって祥平は、もう恋人ではなくても、居てくれるだけで自分の心の寂しさを埋めてくれる存在になっていたんだと知る。
ただ、それと同時に、自分がいつまでも祥平と曖昧な関係を続けていることに申し訳なさも感じていた。
  ↓
二人の会話が相変わらずないままの日々。
それを変えたのは祥平からの一言だった。
「一緒にコンビニ行かないか?」
二人で歩く道のり。
話すことは無くて、幸太はどうしていいのか分からなかった。
だけど、そんな幸太の手を祥平がそっと握る。
その温もりに、幸太は心が安らぐのを感じた。
会話は無かったけれど、二人はまだ曖昧な関係なままだけど、それでも今この瞬間が続けばいいのに、と幸太は少し思った。
二人は帰るまで手を繋いでいた。
  ↓
コンビニから帰ってきた二人。
玄関まで来て、祥平は手を離さなかった。
その手に少し力が入る。
何となく幸太も、祥平が何かしたいんだということは分かった。
祥平はもう一度、幸太に告白する。
でも、幸太はまだ自分の本当の思いも、祥平への答えも見つけられずにいた。
それでも一緒にいたいという祥平に、幸太は最後の不安をぶつける。
それを受け止めてくれる祥平に、「そのままの自分を認めてくれる存在」に初めて出会えたんだいう思いと、それでも残る不安に押しつぶされそうになる幸太。
それを優しく包み込んでくれる祥平。
そんな祥平に、とうとう心を許してもいいんだと、体を預ける幸太。
・ストーリー案

幸太は心の内を吐く。
「僕は女の子として愛されたかった。女の子として、普通に男の人と恋愛がしたかった」
それは今まで、誰にも言えなかった気持ちだった。
それと同時に、誰にも叶えてもらえなかったものでもあった。
「男の人が好きでも、身体が女の子だったら普通の恋愛ができたのかな?」
その声は震えていた。
叶わなかった願いに溢れる思いを押し殺すように。
「身体が男っていうだけで、ホモだゲイだって分類されて、そういう人からしか好いて貰えない。でも、そういう人たちが求めるのは「男の身体」の僕だ。女の子の僕じゃない」
祥平は何も言わない。
ただ、涙と共に溢れる彼の言葉を受け止めていた。
「それでも僕は、誰かに愛されたくて、僕は男として求められる事も受け入れて、好きな人と一緒にいられるようにって、好きでい続けて貰えるようにって、そう思って・・・。でも、結局みんな違う人のところに行っちゃった」
その声は徐々に大きくなる。溜め込んできた思いが溢れるように。
「僕に求められてたのは男としての身体なの?男らしさなの?それとも男なのに可愛いところだったの?可愛らしさだったの?僕には何が足りなかったの?何が余分だったの?」
両手で顔を覆う幸太。
「もう、分からないよ・・・。女の子になれるならなってた。生まれる時に選べるなら。でも選べないじゃん。身体が男になってしまってからじゃもう遅いじゃん。普通に生きてたら女の子にはどう頑張ったってなれないんだよ」
崩れ落ち、へたり込んだ幸太の前に、そっと座る祥平。
そして、その体をそっと抱き寄せる。
「ありきたりに聞こえるかもしれないけど、俺は、他の誰でもない。さっちゃんが良いんだ」
「俺も、男だとか女だとか、正直分からないよ。でも、さっちゃんの身体が男だろうと女だろうと、心が男だろうと女だろうと、それでも、俺はさっちゃんの傍にいたい」
「だから、さっちゃんはさっちゃんのままでいいんだよ」
その言葉に、幸太は祥平の胸に顔をうずめて呟く。
「僕のままなんて・・・、もう僕も分かんないよ」
祥平は幸太をさらに抱きしめる。
「分からないなら、今のままでもいい。変わるとか変わらないとか、それだって本当は考えるものじゃない。今の、そのままでいいんだよ」
「俺が上手くできるかわかんないけど、それでも、さっちゃんが好きなものを好きって言ってもらえるような人間になるから。だから、さっちゃんも、もっと自分の好きを俺に教えてほしい」
「でも僕、体は男なのに、女の子になりたいんだよ?可愛い女の子になりたいんだよ?普通じゃないんだよ?」
抱きとめる祥平から離れようとする幸太。
それでも祥平は幸太を抱きしめる。
「普通なんて無い!誰かが決めた普通なんて関係ない。さっちゃんが女の子になりたいなら、俺は全力で応援したい」
「でも、そしたら僕は男じゃなくなっちゃうよ?」
祥平はより一層強く幸太を抱きしめる。
「男だからとか関係ないって言ったろ。俺が好きになったのはさっちゃん自身だ。性別で変わったりしないよ」
力が入って硬直していた幸太の身体が少し和らぐ。
「祥平は、それでいいの?」
「いいも何も、俺はさっちゃんが良いんだ。一緒にいたい。できるならずっと、一緒にいたい」
さっきまで離れようとしていた幸太の腕が、少しだけ、祥平の身体を抱く。
「・・・そっか」
そのまま二人は無言で抱き合っていた。
  ↓
次の日、二人は今までとは違う関係に、緊張していた。
お互いに上手く話せずにいた。
それでも、その居心地の良さに自然と笑顔がこぼれる幸太。
それにつられて笑顔を見せる祥平。
二人は初めて優しくキスをしてから、職場に向かった。
  ↓
数日後。二人の関係は職場でも噂になっていた。
明らかに二人の距離感が以前よりも近いことに、他の同僚や後輩が気付いたからだ。
でも祥平は気にすることなく、幸太と接していた。
そんな祥平の姿が嬉しくて、幸太も徐々に祥平の前で、本来の性格の明るさを取り戻していった。
・ストーリー案

付き合うことになった後。
昼休憩の喫煙所にて、幸太は祥平の隣に来る。
タバコを吸い終わって捨てようとした祥平の手を幸太が止める。
「それ、ちょうだい?」
「これ?あぁ、いいけど…」
祥平は新しいタバコを取り出そうとするが、
「違う。それがいい」
幸太は手を離さない。その手にはまさに吸い終わりかけのタバコ。
「こ、これ?」
「そう、それ。一口でいいから」
捨てようとしていた手を上げると、幸太はそのまま同期の手を持って自分の口元へ持っていき、吸い終わりかけのタバコを口に運ぶ。
そして一息。
その色っぽい横顔に動悸が早くなるのを感じる祥平。
そして吸った息を吐くと、
「ふふ、君の味」
はにかんで笑う幸太。
その笑顔に一気に顔が赤くなる祥平。
そんな祥平を見てまた笑う幸太。
「美味しいね。いろいろ」
「ば、バカ…」
なんとも言えない恥ずかしさの中、それでも幸太に握られている手の温もりを感じる幸せを噛み締める祥平。
  ↓
告白して、2人が付き合ってから2か月。
二人は二人だけの時間を大切にするようになっていた。
休日。目的もなく、近くの河川敷の桜並木の下を二人で散歩する。
そういう日常の幸せを楽しむ二人。
・ストーリー案
二人で歩く川沿いの桜並木。
デートと言うほど目的もなく、でも居心地のいい二人だけの時間。
ふっと、強い風、桜吹雪に驚く幸太。
そんな彼をそっと抱きとめる祥平。
幸太が見上げると、祥平は笑顔を返してくれる、
それに照れながらも、はにかんだ笑顔を返す幸太。


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