「歌は誰のためでもなく(仮題)」{ストーリー案}
あらすじ
私はアイドルだ。
いや、正確にはアイドルだった。
戦争さえ始まらなければ。
超能力者のいるこの世界で、この戦争には超能力者が駆り出された。
もちろんそうだ、一人で何機分の兵器にもなるのだから。
でも、日常は無くなった。私の活動する場所も一緒に。
そんな時、一人の軍服を着た人が訪ねてきた。
「ぜひ君の力を、役立ててほしい」
それは戦争への参加要請だった。
そう。私も超能力者だ。
歌で人の外傷や心の傷を治せる能力。
彼らの目的は私の能力なんだということはすぐに分かった。
私は戦争を恨んでいた。私の大切な場所を奪ったものだから。
だから戦争になんて参加するつもりはなかった。
でも、私がアイドルになったのは、歌が好きだったからだ。
アイドルが好きだったからだ。
あのステージで輝き、見る人に幸せを与えるアイドルが好きだったからだ。
だから私は、戦争に行くことを選んだ。
場所が違っても、誰かを幸せにすることはきっとできる。
アイドルは不滅だ。
そんな戦争に徴兵された少女に巻き起こる、
戦争と平和への物語。
世界観設定(概要)
惑星イェングヴィに人間が移住してから早100年余り。
惑星イェングヴィに元々居住していた異種族たちとも、ある程度良好な関係を築いていた。
しかし、その惑星に存在したとある鉱石が、人間の身体に影響を及ぼし、人間の中から、超能力を扱える者たちが現れ始めた。
超能力者の数は年々増えていく一方だった。
そんな現状に危機感を持った国があった。
その国は原生種族の国で、「このままではこの星が人間に占領されるのではないか」という危機感を抱き、ある時、人間側への攻撃を開始。
これが戦争へと発展した。
あらすじ(本編全編分)
元々アイドルだった少女は、売れっ子のアイドルだった。
彼女のアイドルへかける思いは人一倍。努力も惜しまず毎日の特訓もあり、そんな姿を応援するファンたちも多かった。
それに加えて「彼女のライブに行くと心が洗われたよう」「彼女の歌声を聞いていると痛みも忘れてしまうほど」という感想が多く寄せられているほどだった。
しかしそれも彼女の力を知らないから。
隠してはいたが、彼女は超能力者。「自分の曲を聴いた相手に、曲のような治癒効果を与える」という能力。
元気で明るくダンスを踊りたく様な曲を歌えば、相手の身体の傷が治り、気持ちに寄り添い前を向くような曲を歌えば、相手の心の傷を治すこともできた。
しかし彼女はその能力に頼ることはせずにアイドル活動を続け、トップアイドルになっていた。
(この辺は後々のストーリー中の回想で出した方が話の流れ的には良いかも)
↓
しかし戦争が始まった。
相手は元々この惑星で進化してきた種族。戦闘員が皆一様に超能力のようなものを持っていた。
そんな相手に、人間側は非超能力者や普通の兵器では太刀打ちできず、急遽、超能力者を招集することとなった。
戦争の混乱。戦時下でアイドル活動はできるはずもなく、彼女は休止せざるをえなかった。
↓
アイドル活動ができず悶々と過ごす日々。それでもアイドルとしてのレッスンは欠かさなかった。
それが、自分の目指したアイドル像を崩さないためだったから。
↓
そんなある日、一人の軍服を着た男性が訪ねてきた。
「君も、超能力者なんだってね」
その一言で、徴兵だと察した。
しかし自分の能力は戦えるようなものじゃない。
彼女は徴兵に対して拒否するも、相手の男性は言う。
「君の力は、今まさに戦っている人達に、大きな力を与えてくれるものだ」
「君がいるだけでも、彼らは戦争の辛さを乗り越える事ができるだろう」
そんな言葉を聞いても、正直彼女の気持ちは変わらなかった。
それを見て、軍服の男は最後に一言。
「ぜひ君の力を、役立ててほしい」
それだけ言い残して去っていった。
↓
彼女は戦争を恨んでいた。
アイドル活動という大切な居場所を奪ったものだったから。
だから戦争になんて参加するつもりはなかった。
彼女は変わらずにアイドルとしての自分磨きに汗を流した。
しかし心のどこかで、このままでいいのかという葛藤はあった。
↓
しかし戦争は日に日に悪化を辿り、あの頃の日常が帰ってくるのか、想像するのも難しくなってきていた。
そんな環境で、彼女のアイドルへの努力という心の活力もまた限界を迎えていた。
思うようにレッスンに身が入らなかった。
これまで付き合ってくれて、支えてくれたプロデューサーに、初めて「レッスンをせず休むように」と言われた。
それが少しショックだった。
↓
レッスンの無い日を過ごした。
そこには何もなくて、いかに自分がアイドル一筋だったかを思い知らされた。
それと同時に、いかにアイドルが好きだったかを。
その時に彼女は思い出した。
自分がアイドルを目指したのは、そもそも歌が好きだったからだ。
誰かに自分の歌を聴いてもらって、笑顔になってもらえることが好きだったからだ。
だからアイドルが好きだったんだ。
あのステージで輝き、見る人に幸せを与えるアイドルが好きだったんだ。
↓
彼女は自分の原点に立ち戻って、再び「誰かに自分の歌を届け、笑顔になってもらいたい」という思いをプロデューサーに打ち明けた。
「だからこそ、自分の歌える場所があるなら、幸せにできる人がいるなら、その場所で歌いたい」とも。
それは、彼女が戦争に行くことを選んだということだった。
プロデューサーもそれを受け入れてくれた。
「場所が違っても、誰かを幸せにすることはきっとできる」
「アイドルは不滅だ」
その思いで、彼女は軍に入った。
↓
彼女は軍の中でも医療支援部隊を転々とする日々だった。
前線で戦い、疲労し外傷を負った兵士たちの前で、彼女は歌った。
最初は急設されたステージに、下積み時代を思い出しつつも、疲れ切った顔で軍部に戻ってくる兵士たちに、どのような顔でステージに立てばいいのか分からなかった。
しかし、ステージに上がった瞬間、兵士たちみんなからの拍手や名前のコールを聞いた。
彼女は「どんな場所でも、見てくれる人がいる場所がステージなんだ」と思えた。
最初のライブは大盛況だった。
もちろん軍部からは超能力を使うように指示されていたので、兵士たちの傷はみるみるうちに治り、皆の表情も明るいものになっていた。
彼女は「やっぱりアイドルは、ライブステージは、みんなに笑顔を届けられる場所なんだ」と思った。
↓
それからは毎日のように各拠点を巡り、ライブを行い、兵士たちを癒した。
兵士たちからは次々に感謝の言葉が寄せられた。
直接感謝を伝えてくれる兵士も多かった。
彼女はそんな現状が、かつて大舞台の壇上で行っていたライブステージよりも、観客との距離が近くて嬉しく感じていた。
こんなライブステージも悪くないと思い始めていた。
↓
しかしある時、ライブステージ中に警報が鳴った。
敵襲だった。
幸いまだ彼女のいる場所からは離れているようだった。
少し安心していた彼女。
しかし、その場の兵士たちを見て全身に鳥肌が立った。
「○○ちゃんは待ってな!俺たちで奴らなんて片づけてきてやるからな!」
「こんなに元気にしてもらったんだ!また戦えるってもんだぜ」
「傷も治ったし気分も絶好調!○○ちゃんを守るためならどこにだって行けるぜ!」
そうだ、と彼女は思い出した。
ここは戦場だ。彼らは兵士だ。
だからこそ戦いに行くのだ。生きている限り。
身体が傷つこうと、心が折れようと、何度でも。
そして気付いた。
それを可能にしていたのが、自分自身なんだと。
心折れるような、死と隣り合わせの戦場に、彼らを何度も送り込んでいたのは、自分自身だったんだと。
↓
そしてその時の戦闘で、ライブステージの上から見たはずの顔が何人も帰ってこなかったことを目の当たりにした。
↓
その日から、彼女はステージに上がれなくなった。
ステージに上がろうとしても、足が震えて、立っていられなかった。
自分が、彼らを戦場へと駆り立てた。
自分が、彼らを殺した。
その思いが日に日に強くなり、彼女は歌えなくなった。
↓
歌えない日々が続き、彼女は後方部隊の療養施設に入った。
そこにはプロデューサーも暮らすようになった。
二人での生活だった。
プロデューサーは戦場でのことは何も聞いてこなかった。
↓
彼女は自分のことをプロデューサーに打ち明けた。
そして戦場で歌えなくなったことを話した後だった。
「歌ってください」プロデューサーの強い言葉だった。
「でも、私の歌で、何人も」
普段は物静かなプロデューサーが、初めて彼女に向けて心情を語った。
「私は、あなたの歌が好きです。いや、歌というよりも、あなたの歌に向き合う姿勢が好きだったのかもしれません」
そして最後に。
「あなたの歌には、まだ見ぬ可能性があると私は信じています。歌は人を変えることができます。だから、あなたの本当の心を忘れないでください。そして、それを歌って下さい。私は、そんなあなたの新しい一面の歌が聴きたい。今まで望まれてきたアイドル○○ではなく、あなた自身の、心の歌が聴きたいです」
↓
↓ (ここに何かエピソードが欲しい気がする)
↓ (彼女の心が少し前向きになれるようなエピソード)
↓
プロデューサーの言葉に、彼女は新曲を作ることにした。
プロデューサーの意向で作詞は全て彼女が作ることになった。
彼女は、戦争を見てきたその思いのままに、歌詞を書いた。
それに能力を込めて歌ったとき、どんな効果が出るのかは正直分からなかった。
↓
また戦闘が勃発した。
兵士たちが基地から出ていく。
しかし今日はその背中を見送るわけじゃない。
彼女も彼らと一緒に戦場へと向かった。
↓
戦いはすでに始まっていた。
しかし彼女は拡声器を使って歌い始めた。
自分で作った、自分の心の内を歌った曲を。
戦争の無い世界を願う歌を。
一度歌い終わっても、何度も何度も、繰り返し歌った。
すると、しばらくして、一人、また一人と武器を捨て始めた。
能力を使う兵士も減り始めた。
それは相手も一緒で、同じように戦闘を放棄し始めた。
そして、両者が戦いを辞めた。
彼女の歌の能力で、「戦争への意欲を失わせる」効果が発動したのだった。
↓
後日、その地区ではお互いのトップ同士の会談が実現し、当該地区での戦闘の放棄が宣言された。
「あなたの歌は、世界を変えられます。私はそう信じ続けます」
真面目にそう言うプロデューサーに、少し照れながら「うん・・・!」と頷く少女がいた。
その顔には笑顔があった。