Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2024 Early Summer Selection(5月27日~7月14日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
https://music.usen.com/ch/D03/
アイスコーヒーが美味しく感じられる季節になりましたね。新緑まぶしく風薫るシーズンから梅雨空を抜けて夏を心待ちにしていく街の気分や風景を思い描きながら、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、今期もチャンネル・ディレクターのリクエストに応えて、Free SoulシリーズのコンピCDスタート30周年を記念した、「Free Soul 30th Anniversary」と題してのスペシャル企画。夏にはそれぞれ2枚組40曲以上を収録して、各2,500円の30周年記念盤『Legendary Free Soul ~ Supreme』と『Legendary Free Soul ~ Premium』も登場しますが、“Groovy & Mellow Life Style”を共に歩んでくれた思い出深い名作の数々からセレクトした、まさに珠玉の名曲群をたっぷりと、この機会にお楽しみください。
その他の時間帯は、香りと音楽のマリアージュをテーマにした僕の最新コンピレイション『Incense Music for Bed Room』の続編として、まもなくリリースの『Incense Music for Living Room』に収録される、“音のアロマセラピー”のような名品もちりばめながら、その9割以上を占めるメイン・ディッシュとして、この春に発表されたばかりのお気に入りの新譜を、惜しげもなく投入しています。セレクションでとりわけ活躍してくれた40作(いずれも3曲以上をエントリー)のジャケットを、まずは僕がコンパイルしているCDと7インチ、続いて最も愛聴しており今のところ2024年上半期ベスト・アルバムという感じのShabaka『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』(美の恵み)、そしてそれ以外のアーティストをABC順で掲載していますので、ぜひそれらの中身の魅力にも触れてみてください。
V.A.『Incense Music for Living Room』
Calm「Persian Love」
Yoshiharu Takeda「Montara」
V.A.『Incense Music for Bed Room』
Uyama Hiroto「Moon Child」
haruka nakamura「soiree (take 3)」
V.A.『Legendary Free Soul ~ Supreme』
V.A.『Legendary Free Soul ~ Premium』
Shabaka『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』
Almost Twins『Hands / Trees』
Anthony Lazaro『Maps And Clouds』
Billie Eilish『Hit Me Hard And Soft』
Bryony Jarman-Pinto『Below Dawn』
Bullion『Affection』
Carlos Cavallini『O Tamanho Do Tempo』
Carolina De La Muela『Salvavidas』
Cavalier『Different Type Time』
Conor Lynch『Slow Country』
Flwr Chyld & Grimm Lynn『Café Noir』
Hiatus Kaiyote『Love Heart Cheat Code』
Jasmine Myra『Rising』
Jembaa Groove『Ye Ankasa | We Ourselves』
Jessica Pratt『Here In The Pitch』
Joe Barbieri con Nico Di Battista e Oscar Montalbano『Vulío ('na parola d'ammore)』
José Lobo『In All Good Hope』
Kaleah Lee『Birdwatcher』
Lizz Wright『Shadow』
Lizzy McAlpine『Older』
Moreno Veloso『Mundo Paralelo』
Myriam Gendron『Mayday』
Paul Weller『66』
Potatohead People『Eat Your Heart Out』
Sam Gendel & Sam Wilkes『The Doober』
Shabason, Krgovich, Sage『Shabason, Krgovich, Sage』
Sophye Soliveau『Initiation』
Thandiswa『Sankofa』
Toco『Riviera』
Vegyn『The Road To Hell Is Paved With Good Intentions』
Yaya Bey『Ten Fold』
Zoë Modiga『Nomthandazo』
夏が近づくとシンセサイザーのエレクトリックなサウンドも聴きたくなる。メルボルンをベースに活動するサイケデリック・ジャズ・クルーMildlifeのサード・アルバム『Chorus』は、そんな今の気分に合うお気に入りのアルバム。自分の所感だが、まるでYMOのサウンドをジャズで現代版にしたようなスペイシーでコズミックな世界。自分が知らなかっただけで、どうやらすごいグループのようだ。ファーストもセカンドも、過去の作品を聴いてみようと思う。
Mildlife『Chorus』
橋本さん編集の新コンピレイション『Incense Music for Bed Room』。さっそく購入し「本初夏セレクションの軸はこれしかない」と選曲に挑む中で、特別な情感が押し寄せたのはUyama Hirotoによるファラオ・サンダース「Moon Child」のカヴァーと、haruka nakamuraによるビル・エヴァンス「Soiree」へのオマージュ「Soiree (take 3)」。今回のコンピのために特別に制作されたこれらの楽曲のそばには、やはり二人が音楽を共にした亡きNujabesの姿を感じざるを得ません。選曲リストを組みあげる中で妄想と想像を越えてリアルに浮かび上がってきたのは、かつて僕がスタッフだった渋谷・公園通り時代のカフェ・アプレミディ。DJブース前のソファ席で打ち合わせをするのは、橋本さんとウヤマさん、ハルカくん、そしてセバさん(Nujabes)。僕はというとコーヒーを淹れ、いつものようにレコードをかけていて……。あたかも、もうひとつの、そんな現在が存在しているかのように──カフェ・アプレミディの現場を離れて約15年という時の中で、それは初めての感覚でした。話が長くなってしまいましたが、そうして、貴方のベッドルームで聴いても心地よいと思える月曜夜の8時間になった気がしています。ぜひ耳を傾けてみてください。
V.A.『Incense Music for Bed Room』
Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00
今回のセレクションでは、スイスのトロンボーン奏者Samuel Blaserがenjaレーベルからリリースした2023年作をピックアップ。スカタライツのトロンボーン奏者Don Drummondにインスパイアされた、Alex Wilson、Alan WeeksといったJazz Warriors〜Jazz Jamaica人脈が参加した、ゴキゲンなレゲエ/スカ・ジャズに仕上がっていますが(亡くなる前月に録音されたLee Perryのヴォーカルとダブワイズも聴くことができます)、Carroll Thompsonをフィーチャーした2曲が素晴らしい出来。今回はその中から絶妙な匙加減でジャズとラヴァーズ・ロックが溶け合った「Rainy Days」を選びました。相変わらず素晴らしい新作が目白押しなので、選曲リストの方もチェックしてもらえると嬉しいですね。
Samuel Blaser『Routes』
Turn On The Sunlight『Ocean Garden』
Carlos Dorado, Lucas Dorado & Dalmiro Dorado『Viaje』
Dent May『What's For Breakfast?』
Laurent Bardainne & Tigre d'Eau Douce『Eden Beach Club』
Chiaré『Chiaré』
Julie Lind『My Imagination』
Matt Maltese『Songs That Aren't Mine』
Baby Rose with BADBADNOTGOOD『Slow Burn』
MaR『Where Have You Been?』
Emmanuel Horvilleur『Aqua di Emma』
Croquet Club『Fugue In Twilight』
José James『1978』
Jembaa Groove『Ye Ankasa | We Ourselves』
Okvsho『A place between us』
Branko『Soma』
Isaiah Collier & The Chosen Few『The Almighty』
Nat Birchall『New World』
Kelly Moran『Moves In The Field』
Josh Johnson『Unusual Object』
Tara Nome Doyle『Agape』
Ganavya『Like The Sky I've Been Too Quiet』
V.A.『Triángulos De Luz Y Espacios De Sombra』
Charlie Grey and Joseph Peach『A Breaking Sky』
Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00
このところ「あいまいさ」について考えています。現代社会では基本的にあいまいな人は嫌われますし、非難の対象になりやすいのですが、実は日本人が何千年もかけて獲得してきたテクニックなのではと思っています。つまり古来日本人は自然信仰、つまり山や巨石を神に見立てたりしながら神道に生きてきたところ、飛鳥時代に大陸から仏教という新興宗教が上陸したときも仏教を受け入れ、神道と折り合いをつけて歩んできました。そして中世、神仏混淆(カミも仏身の一部)という考えがおきることで仏教がより広く受け入れられたという側面もあり、日本人にとっての「あいまいさ」は平和に生きていくために自然と身についた手段、という理解でよいのかもしれません。
他方で世界を目に向けるとどうでしょう。経済や戦争が引き起こした移民問題を発端に、みな自国ファーストになり各地で争乱が絶えません。さまざまな原因や意見もあるでしょう。しかし根底にあるのは「世界を大局的にみる精神」や「他人を思いやる心」の欠如ではないでしょうか。宗教戦争なんて、ちょっとした解釈の違いで何百年も対立しているのですから、わたしたち日本人からみると「もうすこし、あいまいに物事を捉えることはできないのかなぁ」なんて考えたりします。もちろん地政学的な問題もありますから、陸続きの大陸では物事はこれほど単純にすすまないのですけど。
カナダのトロント出身のジョセフ・シャバソンはサックス奏者。ジャズを基調にしながら、アンビエントな表現を心がけるひとです。温かみのある揺らぎや音のテクスチャー、なによりも音が鳴る空間に「しみこんで」いく彼のアルバムには(彼が意図したかどうかはわかりませんが)他者を想う心に寄りそう音楽がつまっているのです。これは彼がイスラム教とユダヤ教の二重信仰の環境で生きてきたことと関係のないことだとは思えないのです。蛇足ですが『家具の音楽』と評されたサティの「ジムノペディ1番」も彼の解釈でカヴァーしていることから、音の空間性について意識的なひとなのでしょう。それでは本作EPに収録された「To Boy With Love」をお聴きください。
Joseph Shabason feat. Thom Gill『One For The Money』
Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00
ファレルの新譜にすっかり影響を受けてしまい、18時からの3時間は“Black Yacht Rock”もといAORなモダン・ソウル集に。図らずも初夏感満載で、選曲しながらファレルに思わず謝辞と拍手を送りたくなってしまった。
Virginia『Black Yacht Rock, Vol. 1: City Of Limitless Access』
Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00
ここ数年スタイル・カウンシルをDJでかけることがよくあって、メンバーだったDee C Leeはどうしているのだろうと思っていたら26年ぶりのアルバム・リリース、レーベルがアシッド・ジャズからだなんて、聴く前からすでに最高! 聴いてももちろん最高なんですよね(笑)。
オリジナル曲のクオリティーの高さ、カヴァー曲のセンスも素晴らしく、嬉しいことにアナログ盤リリースもあり、早くも年間ベスト有力候補間違いない一枚です!
Dee C Lee『Just Something』
今回ご紹介させていただくのは、アルゼンチンのビートメイカー、ガス・ラブとノルウェイのオスロを拠点に活動するトランペッター、クリストファー・エイクレムの今春リリースされた共作EP『Foreign Collections』。ガス・ラブのジャジーなトラックにエイクレムの哀愁感あふれるトランペットが美しい作品です。暑くなるであろう夏に向け今回のセレクションでは季節を少しだけ先取りし、涼やかなサウンドをお届けすべく、本作から「Homage」「Flying High And Far Away」「Between Lines」の3曲をピックアップ、4時間の中にちりばめました。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
Gas-Lab & Kristoffer Eikrem『Foreign Collections』
Lovingというグループ3枚目4年ぶりのアルバム。
このアルバムで存在を知りました。
一言でいえば米国産はっぴいえんど、何かおかしな日本語ですが。
こんな日本のはっぴいえんどフォロワーいたよなあ的な、あまりに身近すぎて勝手に友達気分です。
しかし過去の作品はもっとラフなんで、このアルバムを新しいアルバムとして聴いた以前からのファンには、どう映ったかはわかりませんが、彼らのおかげで、はっぴいえんどを含むフォーク・ロックやソフト・ロックを改めて聴き直しながら、カフェ・アプレミディ初期のコンピCDのような選曲になりました。
楽しすぎる。
DrugdealerやLemon Twigsとか、味のあるアメリカン・サバービアン・ロックスは、永遠と引き継がれていくのだろうと考えながら、「灼熱の夏を如何に涼しく過ごせるか」選曲へ向かうのであります。
Loving『Any Light』
Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00
デトロイト出身のシンガー・ソングライター、Niko Bokos(ニコ・ボコス)が2024年3月にリリースした「Whatchu Doin' Tonight?」を初夏のベストワンにセレクトしました。小気味よいギターのカッティング、ソフトでタイトなドラミング、伸びやかに響く都会的なサックスなど、どこかAORやブルー・アイド・ソウルの空気感をまとった爽快なサウンド。ニコのスウィート&ジェントリーなヴォーカルにも胸がときめきます。待ちきれない夏への思いがあふれる、極上のメロウ・ソウルをぜひチェックしてみてくださいね。
Niko Bokos「Whatchu Doin' Tonight?」
初夏の過ごしやすい心地よさを感じ、また梅雨どきの不快感を一掃させてくれるメロウでグルーヴィーな曲を中心に、今回もオール・ジャンルで選曲しています。
その中でも特におすすめは、何と言ってもデビュー作が素晴らしかったBruno Berleの新作。今回もアルバム全体が繊細で初々しい作品集という趣で、素晴らしい出来でした。その中から、いちばん清涼感のある「Te Amar Eterno」を選曲しています。
今年初めにソロ・アルバムを紹介したIsaiah Collier & The Chosen Fewのファラオ・サンダース直系の躍動感のある「Perspective (Peace And Love)」もよく聴いた曲でおすすめです。
アンビエントではNick Schofieldのニュー・アルバム、その名も『Ambient Ensemble』が全体的に初夏に似合う爽やかで穏やかな雰囲気が漂う一枚でお気に入りです。
この季節に似合う素晴らしい楽曲に、ぜひ耳を傾けてみてください。
Isaiah Collier & The Chosen Few『The Almighty』
Nick Schofield『Ambient Ensemble』
Turn On The Sunlight『Ocean Garden』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos 2』
Maria Chiara Argirò『Closer』
OSWRLD『moonboy, the album』
Vicky Farewell『Give A Damn』
Fergus McCreadie『Stream』
memotone『Tollard』
foamboy『Eating Me Alive』
Marlo.『Public Transport』
Dee C Lee『Just Something』
2024年アーリー・サマー・セレクションの選曲の中から紹介するのは、台湾出身でアメリカ・シカゴを拠点に活動している注目のソングライターLayton Wuが奏でるエヴァーグリーンな香り漂う名曲「Blue Jeans」。ここ数年、韓国や台湾といったアジア圏のSSWアーティストの繊細で美しい秀曲が目立ちますが、そんな中でも彼の、心をやさしくニュートラルに開放してくれるギターの素朴な音色と歌いすぎない語り口の唄声は、まさに国境の壁をこえて、サバービアやアプレミディのファンの心の奥底にある“サウドシズモ”の琴線に触れずにはいられないでしょう。
Layton Wu「Blue Jeans」
ひんやりとしたノスタルジックな彼女の歌声が薄曇りの海辺の風景のようにどこまでも広がっていく。マンチェスターの女性シンガー・ソングライター、カオイルフィオン・ローズの3作目のアルバムからの先行シングル「Simple」は、乾いたスネア・ドラムに深くエコーの効いた電子ピアノやシンセサイザーの音が融合し、彼女のおぼろげな歌声と相まってこれまで以上により幻想的なサウンドに。
Caoilfhionn Rose『Constellation』
初夏です。初夏と言えば久保田麻琴と夕焼け楽団の作品に「初夏の香り」という名曲がありますが、この作品のシングル・ヴァージョンというものがあることを長年知りませんでした。2020年にリリースされた『ハワイ・チャンプルー』の2枚組デラックス・エディションCDにボーナス・トラックとして収録されたことで初めて耳にしましたが、ボサノヴァ風味が加わったこのシングル・ヴァージョンも、タイトルの通りの初夏にピッタリの素敵な曲ですね。
さて、2024年の初夏選曲ですが、ディナータイム前半、まずはロンドンを拠点に活動する女性アーティスト、Dana Gavanskiの4月にリリースされたニュー・アルバム『Late Slap』から、「Song For Rachel」をピックアップしてスタート。それに続くのはなんとVansire、Munya、そしてJordannという超お気に入りのアーティスト3人がコラボした「Years Roll By」。自分の選曲で何度も取り上げている3人のアーティストが集結したとなれば、聴く前からクオリティーが保証されているようなものですが、やはり言わずもがなに素晴らしい作品ですね。そして良質なネオアコ感のあるオレゴン州ポートランドの男性アーティスト、Earthwareの「Juniper Hollow」や、カナダのケベック州モントリオール出身の女性アーティスト、Jane Pennyの「Wear You Out」なども初夏にピッタリの爽やかな風のような作品です。他にはアイルランドはダブリンで活動する女性アーティスト、Annie-Dogの「Double Cherry」や、ノルウェイの男女デュオ、Goofy Geeseの新曲「Upon A Star」、オーストラリアはシドニー在住の男性アーティスト、Butter Bathの「Ruminate」なども心落ち着くナイスな作品で、中でもカナダはオンタリオ州オタワの4人組インディー・バンド、Fanclubwalletの初のEPリリース盤『Our Bodies Paint Traffic Lines』収録曲「Picture Of Her」は笑顔を運んでくれるお気に入りのナンバーです。
ディナータイム後半は、メリーランド州ボルティモアの男性アーティスト、Julien Changの「Imago」や、ロサンゼルスの男女デュオMirrorballの「Take A Shot」、ニューヨーク生まれでベルリンを拠点に活動するJJ Weihlの音楽プロジェクト、Discovery Zoneの「Pair A Dice」、イギリスはブリストルを拠点に活動する男性アーティスト、Tuff Bearの「Brando!」などをピックアップ。ミッドナイト直前にセレクトしたロサンゼルスの4人組インディー・バンド、Plumの「With You」や、スウェーデンの男性デュオ、Robert Church & The Hoy communityの「Lakeside」などは、これから本格的な夏に向けて徐々に蒸し暑くなってくる夜に、涼やかな風のように響いてくれるでしょう。
ミッドナイトからの選曲は、ノルウェイのベルゲン出身の女性アーティストKalenaと、同郷のノルウェイはオスロの男性アーティストWhose Rulesがコラボしてリリースした、ライトな感覚のドリーミーなシューゲイザー・ソング「24」をピックアップしてスタート。同様のコラボ・ソングでは、Harriette Pilbeamの音楽プロジェクトHatchieのギタリストであり夫でもあるJoe Agiusの音楽プロジェクト、Rinseがこれまた大好きな女性アーティストのCaroline Loveglowをフィーチャーしてリリースした「Stranger」もドリーミーでメロウなシューゲイザー・ソングです。過去にロビン・ガスリーとタッグを組んで作品をリリースしていた奥様のHatchie同様に、この作品にもCocteau Twinsの影響が色濃く出ていますね。Cocteau Twins の名曲に「Lorelei」という作品がありますが、それとは全く関係のないニューヨークで活動する男性アーティスト、This Is Loreleiの6月リリース予定のニュー・アルバム『Box For Buddy, Box For Star』より先行シングルとして発表された「Dancing In The Club」や、オレゴン州ポートランドの男性4人組インディー・バンド、STRFKRの3月にリリースされたニュー・アルバム『Parallel Realms』収録曲「Holding On」、ワシントン州シアトル出身の男性アーティストBeach Vacationの最新シングル「Unique Routine」、ロンドンの4人組インディー・バンドMount Kimbieの4月にリリースされたニュー・アルバム『The Sunset Violent』収録曲「A Figure In The Surf」など、インディー・ロックの良曲が並ぶ中、オーストリアはウィーンを拠点に活動する男性アーティスト、Rene Mühlbergerによる音楽プロジェクトPRESSYESが同郷のインディー・バンド、Nature SwimのメンバーであるMaggieをフィーチャーしてリリースしたニュー・シングル「Radio 5」や、伝説的セッション・ベーシストのPino Palladinoを父に持つ話題の女性アーティストFabiana Palladinoの「I Can’t Dream Anymore」、ロンドンの男性アーティストBullionのニュー・アルバムのタイトル曲「Affection」などのメロウな楽曲も、この時間帯の良いアクセントになっていると思います。
ミッドナイト後半は、サンフランシスコの女性アーティストFrances Englandの音楽プロジェクトOscillaの「Tongue-Tied」をピックアップしてスタート。Bandcampの概要を読むと彼女はフォトグラファーの側面を持つのか、作品のカヴァー・アートの制作工程なども書かれていますね。それに続くのは韓国はソウルを拠点に活動する西洋人アーティスト、Lunar Islesのネオアコ・ナンバー「Adrift」。彼の作品のカヴァー・アートは全て海をモティーフにしたもので、初夏の選曲にはピッタリなチョイスだと思います。他にセレクトしたのは、ベルリンを拠点に活動する女性アーティスト、Martha Roseの5月リリース予定のニュー・アルバム『Close To Close』からの先行シングル「The Same Feeling」や、オーストラリアはメルボルンの男性デュオ、Good Morningの「One Night」、カリフォルニア州ロングビーチを拠点に活動する男性アーティスト、Derek Simpsonの「Wonka」といったメロウな作品たち。現在19歳だというロサンゼルスの男性アーティスト、Sir Taegen Harrisの音楽プロジェクトLove Spellsと同郷の男性アーティスト、Deb Neverのコラボ作「Dope Sick」は、メロウな楽曲ながらNirvanaの香りがほのかに漂う“Smells Like Teen Split”な作品です。それに続くロンドンで活動する男性アーティスト、Vegynの「A Dream Goes On Forever」と、オーストラリアはシドニーの男性デュオ、Velvet Tripの「Get You Off My Mind」といった作品の中にもどこかダークな側面があり、ひんやりとした空気感が漂っていますね。そしてこの時間帯の終盤に収録したオーストラリアはシドニーの5人組インディー・バンド、Ultracrushの「Heat」と、ニューヨークで活動する男性シンガー・ソングライターのSam Evianのニュー・アルバム『Plunge』収録曲「Rollin' In」は特にお気に入りで、セレクションを締めくくるのにふさわしい素敵な作品です。
今回も映画にまつわる話を最後に少し。今回はベット・ミドラー主演の1990年のアメリカ映画『ステラ』です。この作品はアメリカの作家オリーヴ・ヒギンズ・プローティーが1923年に発表した小説『ステラ・ダラス』を映画化した作品で、ベット・ミドラー版で3度目の映画化という大変人気のある物語です。日本でも劇場公開以外に1992年5月8日に日本テレビの『金曜ロードショー』で放送されたことで多くの人が視聴し、ベット・ミドラーの最高傑作に挙げる人も多い人気の作品です。しかしソフトはDVDが普及し始めた2000年に日本盤DVDがリリースされて以来長らく再発されず、プレミア化してオークション・サイトなどではかなり高額な値段で出品されています。それ故に視聴のハードルが高い作品と思われますが、なんと日本語字幕が入った全長の映像が5年前からYouTubeで視聴することができます。そのコメント欄を見ると「これ以上に泣ける映画を俺は知らない。」「1番呼吸困難なるくらい泣いた映画です。」「初めて見たのが小学5年生で金曜ロードショーでした。何気なく見ていたのに引き込まれて最後は大号泣した唯一の映画です。」等、皆さんのコメントがこの映画の素晴らしさを表していますね。しかし「YouTubeさん 私個人のわがままなのは分かっていますが、この映画は削除しないでほしいです。」というコメントもあるように、正規にアップされている映像ではありません。いつか削除される運命にあると思いますが、概要欄にこのようなことが書いてありました。「権利者様が広告収益を得ているみたいで、削除されずに済んでいます。削除しないでくれている権利者様に大感謝です。」と。このコメントの真意はわかりませんが、本当なら粋な計らいですね。それでは興味のある方はぜひ視聴してみてください。もしかしたらあなたも「何回観ても吐くほど泣ける。」というコメントの意味がわかるかもしれません(笑)。
Vansire, Munya & Jordann「Years Roll By」
Earthware「Juniper Hollow」
Annie-Dog「Double Cherry」
Goofy Geese『Upon A Star』
Butter Bath「Ruminate」
fanclubwallet『Our Bodies Paint Traffic Lines』
Julien Chang『Home For The Moment』
Mirrorball「Take A Shot」
Discovery Zone『Quantum Web』
Tuff Bear「Brando!」
Plum「With You」
Robert Church & The Hoy community「Lakeside」
KALENA & Whose Rules「24」
RINSE feat. Caroline Loveglow「Stranger」
This Is Lorelei『Box For Buddy, Box For Star』
Pressyes feat. Nature Swim「Radio 5」
Fabiana Palladino『Fabiana Palladino』
Bullion『Affection』
Oscilla「Tongue-Tied」
Lunar Isles「Adrift」
Martha Rose『Close To Close』
Good Morning「One Night」
Ultracrush「Heat」
Sam Evian『Plunge』
Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00
(このコメントを書いているのは)まだ5月というのに、ここ数日の間、ぐんぐん気温が上昇していて、初夏というよりは、もう夏なのでは、という気がしてなりません。みるみるうちに緑も伸びて生い茂り、いつの間にか街の自然の景色も一変していました。昨今、なかなか季節の移り変わりを感じることが少なくなりましたが、こういう時こそ、選曲でゆっくりと時間の流れを描けるように、このアーリー・サマーのセレクションを組んでみました。毎度のことですが、サロン・ジャズ系の女性ヴォーカルを中心に、夏の訪れを感じられるブラジリアン~ラテン・ジャズをちりばめて、さらに毎年この時期限定でエントリーする、個人的アプレミディ・クラシックも、少し入れたりしています。その中でも、特に印象に残ったのが、なんとあの、スピリチュアル~フリー・ジャズ・シーンのサックス奏者アラン・ブラウフマン。彼の新作アルバム『Infinite Love Infinite Tears』に収められた「Brooklyn」が、まるで光り輝く太陽を浴びたように、瑞々しいアンサンブルでした。ぜひ、季節の移ろいとともにお楽しみください。
Alan Braufman『Infinite Love Infinite Tears』
Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00
ラリー・ハードのさわやかな夢の風景、LSDで充たされたアメリカーナ、そして万華鏡のような60sポップ──そんな惹句が添えられた前作もセレクションに使わせてもらっていた、NYブルックリンの女性アーティスト、Madelyn Strutzのソロ・プロジェクトBobbie Lovesong。3作目となる新作『Shadow Of A Cloud』は、“水族館の遠足を舞台にした、アウトサイダー・サイケ・ポップの奇妙なコレクション”と、これまた愉しげな紹介文があてられていて、葛西臨海水族園の年パス保持者としてはその道行きのよきお供となってくれそうな、ハイ・ラマズ的な感触もある透明感と浮遊感に包まれたボサ・エレポップな内容で心地よし。甘くデコレイトされた古き佳きアメリカン・ポップス風ウィスパリング・メロディーに幻惑的なデイドリーム感がまどろむように漂います。
ちょうど陽が落ちはじめる頃の時間帯には、いつもの初夏のセレクションのように、雨にちなんだ楽曲を連ねています。思い描いたのは、窓を打つ雨音が不規則に響く静かな部屋。そして新緑の樹々にささやかな命を贈り届けるように音もなく降りそそぐ雨──そう、そんな風景を味わうために、毎年この季節必ず足を運んでいる葛西臨海水族園の“水辺の自然”エリアの森の樹木が、え? リニューアル工事のために伐採されるって? やめてくれ──。
Sita『Brasileira』
Earth Flower『Earth Flower』
Bobbie Lovesong『Shadow Of A Cloud』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos 2』
Jonah Yano & Le Ren『the little italy demos』
Riley Mulherkar『Riley』
Tony Njoku『Last Bloom』
Jerskin Fendrix『Poor Things (Original Motion Picture Soundtrack)』
Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00
前期に引き続き、新曲が豊作だったEarly Summer Selectionでした。例年に比べ、「夏を待ちわびて」というムードの曲を多めに選んでいるのも特色かもしれません。さまざまなブルーのワードローブが並んだジャケットも素敵だったフェイ・ウェブスターの新作『Underdressed At The Symphony』からの「Thinking About You」は、実は前セレクションの締め切り時にすでに候補入りしていたのですが、あえて温存し、今回満を持しての登場となりました。パール&ジ・オイスターズを迎えたデント・メイ、Vicky Farewell、Clairoといったインディー・ポップ勢の新曲とともにお届けします。
アルバム単位でも好作が多かったですね。ジョー・バルビエリは変わることなく繊細な個性を発揮していましたし、ダイメ・アロセナもアフロ・キューバン・ジャズを深化させつつ、よりポップで洗練されたナンバーも披露していました。個人的に嬉しかったのはホセ・ジェイムスの『1978』です。冒頭からマーヴィン・ゲイ・ライクな曲が続き、近年の彼のアルバムでは最も僕の肌に合う仕上がりでした。「レオン・ウェアとJ・ディラが出会って僕のために作ってくれたアルバムという雰囲気にしたかった」という本人の言葉もいいですね。キャンディス・スプリングスの『Run Your Race』もヴィンテージ感漂う極上メロウなジャズ~ネオ・ソウル・アルバムで、こちらもしばらくヘヴィー・ローテイションでした。グレッチェン・パーラトをゲストに迎えた「Beyond The Blue」が素晴らしかったテイラー・アイグスティの『Plot Armor』は、色彩感豊かなサウンドが印象に残る、これまた好ジャズ・アルバム。ロイシーン・マーフィーがDJ Kozeをプロデューサーに迎えた2023年作『Hit Parade』は偶然知ったのですが、ジャケットのイメージに反して(失礼!)とても素晴らしい内容でした。それぞれのアルバムから僕好みのテイストの曲や季節感を感じさせるトラックを厳選しているので、楽しんでいただけると嬉しいです。おそらく近年の選曲で抜群の登場回数を誇るDJ HARRISONとナイジェル・ホールのEW&Fトリビュート・プロジェクトも楽しみですね。今回はEW&Fへのオマージュ的に構成されたリード・トラックをセレクトしましたが、次回のセレクションでは何が選ばれるでしょうか。
ナラ・レオンやマーゴ・ガーヤンなど、定番曲を中心として雨の日を意識したセクションも挟んでみました。そこにべべウ・ジルベルトが父ジョアン・ジルベルトに捧げた昨年のアルバム『João』から「Valsa」も入れたのですが、この曲はかつて幼い彼女のために歌われたと思うと何とも感慨があります。雨の午後にふさわしい、しっとりとした雰囲気の演出に一役買ってくれました。だからというわけではないのですが、ラストはジョアン。2003年のライヴから「ジェット機のサンバ(Samba Do Avião)」にしました。オーディエンスも含め、来日時のライヴを彷彿とさせるアンビエンスが素晴らしいですね。
オープニング・クラシックはブラッド・メルドーの『Après Fauré』から。『After Bach II』と同時にリリースされるアルバムで、『レクイエム』などで知られるフランスの作曲家フォーレをテーマにしたアルバムです。タイトルやエッフェル塔をモティーフにしたジャケットにも、どこか「クラシック・アプレミディ」のシリーズを連想させるものがありますね。こちらもリリースが楽しみです。
P.S.
ちょうどコメントを書き上げたタイミングで、EW&Fトリビュートとブラッド・メルドーの2枚がリリースされました。まだ1回しか聴いていませんが、EW&Fはナイジェル・ホールとの作品ということもあり、わりとストレイトにオマージュを表現した作品になっていました。ブラッド・メルドーの『After Bach II』に「ゴールドベルク変奏曲」からの曲が収められていたのも嬉しかったですね。次回のSummer Selectionにも続編的に選曲したい欲が芽生えています。
Brad Mehldau『Après Fauré』
Sam Wilkes『Driving』
Faye Webster『Underdressed At The Symphony』
Dent May『What's For Breakfast?』
Vicky Farewell『Give A Damn』
Joe Barbieri con Nico Di Battista e Oscar Montalbano『Vulío ('na parola d'ammore)』
Ben Sidran『Rainmaker』
Daymé Arocena『Alkemi』
Bebel Gilberto『João』
Róisín Murphy『Hit Parade』
José James『1978』
Dee C Lee『Just Something』
Nigel Hall & DJ Harrison『The Burning Bush: A Journey Through The Music Of Earth, Wind & Fire』
JONES & Aaron Taylor「Star」
Kandace Springs『Run Your Race』
Taylor Eigsti『Plot Armor』
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