Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2024 Early Spring Selection
(2月26日~4月7日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
春の訪れが待ち遠しい芽吹きの季節。三寒四温の日々の中で、少しずつ瑞々しく柔らかな色合いに移りゆく早春の風景と心象をイメージしながら、様々な思いや希いを素敵な音楽にこめて、近づく春の足音にささやかな歓びを感じるような、メロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、今回も計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、前クールに続き、ご好評をいただいている僕が選んだ2023年のベスト・トラック1,000曲(曲目リストはベスト・アルバム70作とともにこちらに掲載されていて、Spotifyプレイリストもあります)を、シャッフル・プレイ放送で。年始から災害に見舞われ、世界各地で戦火も絶えず、政治の腐敗にも怒りと哀しみを覚えずにいられないこの時代に、心の平穏・安寧を保ちながら、毎日を晴れやかな気分で明るく前向きにすごすためのフレンドリーな日常のBGMとして、お楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、昨年末から今年初めのニュー・アライヴァルを、いつものように惜しげもなく投入していますが、今回はCafe Apres-minuitの時間帯に、少し趣向を凝らしていることも、特筆しておきましょう。
土曜24時からは、僕が“香りと音楽”をテーマに、心安らげるアンビエント〜ジャズ〜チルアウト〜バレアリカ〜ポスト・クラシカル〜ジャジー&メロウ・ビーツの珠玉の名作群を紡いだ、新しいコンピ・シリーズ(アートワーク=FJD〜マスタリング=Calmとタッグを組んでいます)の第1弾、3/13リリース『Incense Music for Bed Room』をまるごとお聴きいただけるのです。このコンピのために新録音された、Uyama HirotoによるPharoah Sandersの名曲「Moon Child」カヴァーや、haruka NakamuraによるBill Evansの名曲「Soiree」オマージュを始め、きっとこの時間帯に相応しい“音のアロマセラピー”として、お楽しみいただけると思います。
また、Cafe Apres-minuitの最後、日曜10時直前には、1/19に亡くなられた偉大なるジャズ&ソウルの歌姫Marlena Shawを追悼して、僕が2006年に編んだコンピ『Free Soul. the classic of Marlena Shaw』から3曲をセレクトしていますので(ラストは歌詞も冬から春へと移ろうこの季節を描いた不朽のラヴ・ソング「Feel Like Makin' Love」の名演)、あらためて彼女の素晴らしい音楽を讃え、「Rest In Peace」の祈りを捧げていただけたら幸いです。心からの感謝の気持ちとともに、ご冥福をお祈りいたします。
最後に、この早春セレクションでとりわけ活躍してくれた36作(いずれも3曲以上をエントリー)のジャケットを、まずは僕のコンピレイション(と7インチ)、次に愛聴盤ベスト4のDaudi Matsiko〜Sy Smith〜Dina Ögon〜Helado Negro、続いてその他のアーティストをABC順で掲載しておきますので、それらの中身の魅力にも、よかったらぜひ触れてみてください。
V.A.『Incense Music for Bed Room』
Uyama Hiroto + Yoshiharu Takeda「Moon Child + Bliss of Landing」
haruka nakamura + Nobuyuki Nakajima「soiree (take 3) + Valsa de Euridice」
Marlena Shaw『Free Soul. the classic of Marlena Shaw』
Daudi Matsiko『The King Of Misery』
Sy Smith『Until We Meet Again』
Dina Ögon『Orion』
Helado Negro『PHASOR』
amayo『Buena Vida』
Benjamín Walker『Libre』
Bill Ryder-Jones『Iechyd Da』
Cosmo Lautaro『LOTUS』
DJ Harrison『Shades Of Yesterday』
Fabiano Do Nascimento & Sam Gendel『The Room』
Francesca Castro『Two』
Gabi Hartmann『Little Song Lines』
Grégory Privat『Phoenix』
Huron John『Indigo Jack & The New World Border』
Isla De Caras『Flores Robadas』
Ítallo『Tarde No Walkiria』
Joe Barbieri feat. Oscar Montalbano & Nico Di Battista『Accarezzame / Lazzarella / Dicitencello Vuje / Cammina Cammina』
Joel Ross『nublues』
Jonas『Be The Light』
Juan Ignacio Sueyro『Oráculo』
Kali Uchis『Orquídeas』
Krameri『Intrusive Thoughts』
Lau Noah『A Dos』
Maë Defays『A Deeper Ocean』
Mary Halvorson『Cloudward』
MICHELLE『GLOW』
Natascha Rogers『Onaida』
Okonski『Trio Session Demos』
Rosie Frater-Taylor『Featherweight』
Salvador Sobral『TIMBRE』
The Smile『Wall Of Eyes』
WESLEE『Weslee World One』
今回はまだちょっと肌寒い空気に合うかなと、Sy Smithの『Until We Meet Again』をチョイス。彼女はインディペンデント畑のシンガーながらブラン・ニュー・ヘヴィーズなどへの客演参加や『アメリカン・アイドル』バンドへのコーラス参加、サントラへの楽曲提供などなど、中々派手にマルチに活躍しているそう。アルバム『Until We Meet Again』はニュー・ソウルやアシッド・ジャズの流れにあり、派手さも地味さもちょうど良く、暖かくて心地よいフィーリングがこの早春のシーズンのお気に入りに。「Flower」「Photograph」「Why Do You Keep Calling」をはじめ、木曜~日曜日のランチタイム~ティータイムに何曲もセレクトしています。
Sy Smith『Until We Meet Again』
先日、マリーナ・ショウが天国へ向かいました。まだ高校生であった頃に初めて目にした彼女のLPは、憧れのレア・グルーヴ名盤『The Spice Of Life』。以来約30年ほどジャズ〜ソウルの系譜にある女性シンガーの楽曲を聴いてきましたが、彼女の存在感はどうしても別格です。今回ディナータイムに追悼パートを組んだのですが、結果として21世紀になってからの唯一の歌唱となっているのは、小西康陽さんによるソロ・プロジェクト、ピチカート・ワンにフィーチャーされた際のジョン・レノン「Imagine」のカヴァー。キャリア初期の名唱「Woman Of The Ghetto」がサンプリングされることは数あれど、こうして純粋にゲスト・ヴォーカリストとして参加/レコーディングした機会は決して多くないはず。きっとそこには、何かしらの意思や意味があったのだと思います。誇り高き女王よ、安らかに。貴女の歌声は僕たちにとって、永遠なる導きのシンボル。
Pizzicato One『One And Ten Very Sad Songs』
Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00
バンドネオンとハープが織りなす心地よい調べ。ノルウェイの兄妹デュオ、Julie & Andreasのサード・アルバムをピックアップ。バンドネオン奏者の兄、Andreas Roksethは、去年の作品をこちらでも選んだMette Henrietteのファースト・アルバムにも参加していたり、妹Julie Roksethのハープは、同じくノルウェイのピアニスト、Maren Selvaagの『Bare Være』(オスロのレインボウ・スタジオで録音された素晴らしい作品です)でも聴くことができます。全編通してどこまでも透き通った雪解けを感じさせるような早春に相応しい作品です。
Julie & Andreas『ENE Favn』
Sidiki Camara『Return To The Traditions』
Dorothy Carter『Waillee Waillee』
Lau Noah『A Dos』
V.A.『Afeto - Carlos Lyra 90 Anos』
Körinn Pierre-Fanfan『Rêver』
Sarah Kang『Hopeless Romantic』
SHOLTO『The Changing Tides Of Dreams』
Daymé Arocena『Alkemi』
Willow Stephens『Future Classic』
Adi Oasis「Serena」
DJ HARRISON『Shades Of Yesterday」
Keyon Harrold『Foreverland』
Arjuna Oakes & John Psathas『Sierra』
Ben Hughes『MANHA』
Rejoicer『While You Are There』
Daudi Matsiko『The King Of Misery』
Kamaal Williams『Everything In Its Right Place』
Delasi『Audacity Of Free Thought』
Alex Albrecht『Allambie』
Greg Foat & Ayo Salawu『Interstellar Fantasy』
Jiyu『Totem Of Quiet Mystic』
Miles Spilsbury『Light Manoeuvres』
Bebo Ferra, Aska Kaneko & Carlos el tero Buschini『Tres Continentes』
Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00
みなさま、御機嫌麗しゅう御座いますか。毎度本チャンネルをご贔屓くださいまして有難う御座います。今回は2022年の音源になりますが、アフリカの女性シンガー、ロキア・コネのアルバムを御紹介いたします。
ロキア・コネは1984年にニジェール川のほとりにある古都セグーで生まれ、幼い頃から祖母や叔父夫婦に歌の手ほどきを受けます。周辺地域でミュージシャンとして活動を始めますが、2016年には欧州ツアーを敢行し注目されます。同時にヴェテラン女性シンガーであるマニ・ケイタやウム・サンガレらとともに、ヴォーカル・グループ「レ・アマゾーヌ・ダフリキ」を結成。2枚のグループ名義のアルバムに参加し、彼女の声は広く世界へ届くことになります。
彼女は母国語であるバンバラ語で歌います。その独特な響きとよく通る(澄み渡る)声のキャラクターからダンス・ミュージックとも親和性が高く、アイルランド人の名プロデューサー、ジャックナイフ・リーと共同名義でリリースされたのが本作。ギターのカッティングがクールで独特な浮遊感がクセになる「Shezita」をお聴きください。
Rokia Koné & Jacknife Lee『BAMANAN』
Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00
木の芽どきを意識したら、ただただ穏やかなプレイリストを作ってみたいという衝動が沸き起こってきたので、素直に従うことにした。季節の変わり目にありがちな乱調に薬ほどには効かぬとも、ささやかな調律役になれたらとも思う。
Gene Noble『Feel A Way』
Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00
マリーナ・ショウの訃報が入り、真っ先に聴きたくなったライヴ盤をピックアップいたしました。
DJを始めたばかりの駆け出しの頃、値段が高嶺の花のアルバムもありながら、比較的買いやすいアルバムでもいい曲があり、大好きなシンガーでした。
学生時代に(当方、ドラム。時々、ヴォーカル)楽器繋がりで知り合った九州から移住していたブルース・ギタリストの方がマリーナ・ショウと繋がりがあり、たくさんいい話を聞かせてもらったことも手伝って、勝手に親近感を持ちました。
もっとたくさん観たかったんですが、最初で最後になってしまったライヴ初見は2009年札幌芸術の森で開催されたジャズ・フェス「SAPPORO CITY JAZZ」にて。メンバーはまさかの『Who Is This Bitch, Anyway?』の面々! しかも早い時間、光栄にもDJしました。
夢のような時間でした。特に大好きなハーヴィー・メイソンがドラムで、最高としか言いようがない完璧なパフォーマンスでした。
その興奮を再び感じたく、『Live In Tokyo』で追悼いたします。
たくさんの感動をありがとうございました。
Marlena Shaw 『Live In Tokyo』
今回はスウェーデンの4人組ソフト・サイケ・バンド、 ディナ・オゴンが昨年秋にリリースしたシングル「Fri Till Slut」をピックアップ。ディナ・オゴンはスヴェン・ワンダー等の作品で知られるギタリスト、ダニエル・エグレンを中心に結成されたバンドですが、本作では同じくスウェーデン出身の女性R&Bシンガー、セイナボ・セイをヴォーカリストに迎え、持ち味であるノスタルジックでドリーミーなサウンドはそのままにソウルフルな作品に仕上げています。ちなみにディナ・オゴンは2024 Winter Selectionで「usen for Cafe Apres-midi」ディレクターの本多義明さんも紹介していましたが、この2月にサード・アルバム『Orion』をリリースしています。こちらの収録曲もどれも彩り豊かで、春に向かうこの季節にピッタリな感じではないかと思います。興味のある方はぜひチェックしてみてください!
Dina Ögon & Seinabo Sey「Fri till slut」
Dina Ögon『Orion』
新年早々のこのたびの災害に対し、心よりお見舞い申し上げます。皆様の一日も早いご再建をお祈りいたします。
いつになったら思いっきり笑える日は訪れるのか。
音楽を聴きながら、歴史書を読みながら、いろいろ考えます。結局曲に心奪われ、ミュージシャン調査モードに入り、本のページは前に進まず、レコードが山積みになります。
昨年購入したであろうレコードやCDやカセット・テープが今更……手元に届いてます(ちなみに、カセット・テープは、状態の信頼度は薄そうですが、意外に綺麗なものが多いです。レコードは、代金も送料も高すぎますが、カセット・テープはすべて安いので、すぐデータに変換される方にはおすすめします。感じ方に個人差はありますが)。
その内容を全く覚えてないものもありますが、異常な素晴らしさを感じることもあります。
そんな2023年と2024年のニュー・リリースをブレンドしたカフェ・ミュージックに、偉大なるミュージシャンの名曲を随所にサラッと溶け込ませてみました。
ごゆっくりとお過ごしください。
音楽はどんなときもあなたの心を救ってくれます。
Marlena Shaw『It Is Love』
Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00
カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするネオ・ソウル〜R&Bシンガー・ソングライター、Marelleが2023年の5月にリリースした「Meantime」を早春の一曲としてセレクトしました。鼻先をふわりとかすめる若葉の匂いを想起させる、軽やかでポジティヴなメロディーと、Marelleのどこかあどけなさの残る歌声は、生まれたばかりの春の陽射しに心地よく馴染みます。トゥルットゥルットゥ♪の愛らしいスキャットにも、思わず笑顔がこぼれます。小さな春をみつけに、外へ街へと出かけたくなる心弾む一曲です。
Marelle「Meantime」
昨年末から今年にかけて出会った素晴らしい音楽をメインに、早春の季節にほどよく馴染む選曲をしました。おすすめの16枚は様々なジャンルから選んでいるので、お気に入りが見つかるかもしれません。
新年から辛いニュースが続く2024年ですが、こんなときも素晴らしい音楽は、いつも心に寄り添ってくれます。少しでも心に届いて、楽しく、そして楽な気分になってもらえたらとても嬉しいです。
Fabiano Do Nascimento & Sam Gendel『The Room』
Armando Young「Prize Fighter」
Ragnhild og『To Renovate A House』
Walker『Good Man』
Jade Bird feat. Mura Masa「Burn The Hard Drive」
Soul II Soul feat. Nadine Caesar「Nothing Compares To You」
Jamma-Dee『Perceptions』
Daudi Matsiko『The King Of Misery』
Small Circle of Friends pres STUDIO75『A Day With.456』
Flung『All Heartbeat』
Arrested Development『Bullets In The Chamber』
Zizi Trippo『31』
Ryan Power『World Of Wonder』
J. McFarlane's Reality Guest『Whoopee』
Radiotrónica「De otro mundo」
Christopher Bear & Daniel Rossen『Past Lives (Original Motion Picture Soundtrack)』
ここ最近の選曲でマイ・ブームが来ている、ネオアコ風ボッサのリヴァイヴァル・ナンバーを探索中に、偶然見つけた秘蔵の1曲。80年代の7インチ盤インディー・ポップ~ギター・ポップを彷彿させる絶妙なバランスのアコースティック・ギターのカッティングと、ミレニアム世代とは思えない憂なセンスを備えたFranklin Jonasの唄声が絶妙です。他にも、春の気配を感じるこの季節にぴったりくる曲が多い、アプレミディらしさ溢れるブランチ選曲をお愉しみください。
Franklin Jonas「Prospect」
冬のショッピングモールの駐車場の風景。ボブ・ディランの歌を思い出しながら、彼女の電話を待つ。切ない歌をアコースティック・ギターで奏でる彼ららしいサウンドは、やはり少し春の気配。
Pajaro Sunrise「Parking Lot」
もうすぐ春がやってきます。春は出会いと別れの季節です。卒業と入学、入社。親しい人たちとの別れ、そして新しい人たちとの出会い。ワクワクすることもありますが、ちょっぴり寂しい季節でもあります。このコメントを書いているのは2月の初旬ですが、自分的にももうすぐ寂しくなることがやってきます。それは毎朝自分の家の前に幼稚園の送迎バスが止まるのですが、一人の女の子がいつも元気な声で「おはよーございます!」と挨拶しているのです。毎朝その声を聞くのが楽しみで、その声を聞くと思わず笑顔がこぼれてしまいます。しかし(たぶん)彼女も今年卒園で、その声があと1か月もすると聞けなくなるでしょう。ちょっと切ない気分ですが、もしかしたら4月には新たなちびっ子の元気な声が聞けるかもしれませんね(笑)。
さて、今回の早春選曲。まずは、ニューヨークはブルックリンの男性アーティスト、Furrowsの「Morning Fire」をピックアップしてスタート。続いてオーストラリアを拠点に活動する2人のアーティスト、HeadachesとGolden Vesselがコラボレイトした「Happy Days In Happy Weather」や、テキサス生まれで現在はカリフォルニアで活動する女性アーティスト、lovpuneの「all my friends」、インディアナ出身のKevin KrauterとNina Pitchkitesが結成したドリーム・ポップ・バンドWishyの90年代のインディー・ミュージック愛に溢れた「Spinning」など、爽やかな春の風のような作品をセレクト。そしてテネシー州ナッシュヴィルの男性デュオ、Jensen Sportagのメロウ・ダンサーな「Beige」や、ロサンゼルスの清楚で可憐な歌姫Jess Williamsonのカントリー・インディー・ソング「Hunter」、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアで活動するオルタナティヴ・ポップ・バンドPine Baronsの「Electric Fingertips」などもお気に入りの作品ですが、タイトルにノックアウトされたロサンゼルスはハリウッドの女性アーティスト、Tiger Del Flor の「Living In The 90s」も最高ですね。
ディナータイム後半は、イギリスのアーティストで現在イタリアのボローニャを拠点に活動しているMoon Blueのスウィートなファルセット・ヴォイスがメロウに響く「All I Know (Is That)」をピックアップしてスタート。メロウな作品ではニューヨークはクイーンズの女性アーティスト、Eartheaterの最新アルバム『Powders』収録の「Crushing」もお気に入り。センティメンタルな響きが心を揺さぶるMGMTの6年ぶり通算5作目となるニュー・アルバム『Loss Of Life』収録の「Nothing To Declare」はPVも素晴らしく、生まれつき両腕のないInga Petryという女性がひとりアメリカからフランスへ向かい、パリの街中を気の向くままに旅をする姿が短編映画のように紡がれていく美しい映像作品です。そしてカナダはオンタリオ州オタワの男性3人組インディー・ポップ・バンド、dad sportsの新曲「take yr time」や、ロンドンの男性アーティスト、Stephan Kreusselの昨年末にリリースされたニュー・アルバム『Earthling』収録の「Earthship」、どこか80年代のウエストコースト・サウンドを感じさせるカナダの男性デュオHockey Seasonの「You'll Be Remembered」も早春の風を感じる作品です。他にはポルトガルのリスボンで活動する3人組男性アーティスト、Ditch Daysの「Lights Out」や、ポーランドの女性アーティスト、Nastiaの「Ja i Ty」もロマンティックな香り漂うダンス・ナンバーで、素敵ですね。
ミッドナイトからの選曲は、カナダのオタワで活動する男性アーティスト、Prelovedによるフリートウッド・マックの名曲カヴァー「Silver Springs」をピックアップしてスタート。この今では名曲として語られている「Silver Springs」という作品ですが、リリース当初の1977年には不滅の名作『噂』には収録されず、シングル「Go Your Own Way」のB面扱いだったんですね。さらに作者のスティーヴィー・ニックスには発売直前になるまでアルバム未収ということを伝えなかったとも言われています。今ではCDにボーナス・トラックとして収録されている盤もありますが、この名曲にはこんな歴史があるんですね。しかしこのPrelovedのカヴァーは最高で、気が早いですが、今年のベスト・セレクション候補曲です(笑)。続いてロンドンの女性ヴォーカルを含む3人組ユニットNight Tapesのコケティッシュな魅力あふれる「drifting」、フランスはパリ出身の女性アーティスト、LUHAがJohnny Benetteという男性アーティストとコラボレイトした「Bro Song」、カリフォルニア出身の男性アーティスト、Castlebeatの最新作「Moonlight」をピックアップ。他には80年代のエレクトロ・ポップ感のあるニューヨーク出身の女性アーティストMaraschinoの最新アルバム『Hollywood Piano』収録曲「Angelface」や、ロサンゼルスで活動する男女デュオVeronicavonの「Party」、イギリスの男女デュオPecdのエレクトロ・ダンス・ナンバー「Closer」などもセレクトしています。
ミッドナイト後半は、カリフォルニア州中部フレズノで活動する男性アーティスト、Bummer Dazeの「Reflections」、ノルウェイのベルゲン出身の男女デュオGoofy Geeseの「Mother」、ロサンゼルスで活動する男性アーティスト、Micah Preiteが昨年リリースした34曲入り(笑)のデジタル・アルバム『Songs i'm working on/Showing friends』収録曲の「Kids Driving The Elevator」といったアコースティックな響きをもった作品を続けてスタート。ビートルズ直系のサイケデリックでマジカルなテイストを感じるデトロイトの男性アーティスト、Halaの「Run To You」や、ニューヨークはブルックリンを拠点に活動する男性インディー・ポップ・デュオFetch Tigerの「Austin Powers」、ロサンゼルスの男性デュオCap'n Marbleの「Asleep on the Run」、アイルランドのインディー・ロック・バンドNewDadが昨年末にリリースした「Nightmares」などの、良質なポップ・ソングも初春の夜に柔らかな風のように響きます。セレクション終盤にセレクトしたアイルランドはダブリンの4ピース・バンド、Milk.の「I Think I Lost My Number Can I Have Yours?」はどこか切なさを感じるセンティメンタルな作品ですね。
さて、ここからは相変わらずの選曲とは関係ないお話ですが、昨年のクリスマスに選曲仲間の武田誠さんから素敵なプレゼントをいただきました。それは“日本のアニメーション黎明期の礎を築き、多大な功績と発展を遺した「アニメーションの神様」の一人として知られる”(以上Wikipediaより・笑)岡本忠成の作品を美しい4Kで修復して収録したブルーレイです。収録されているのは6作品で、その中には最高傑作との声もある『おこんじょうるり』や、そのショッキングなエンディングからトラウマ・ソングとも言われている『チコタン ぼくのおよめさん』が入っています。自分は知らなかったのですが、以前発売されたDVDはプレミア化していて入手困難なんですね。今回その事実がわかったので、岡本忠成がアニメーションを担当したもうひとつのトラウマ・ソング、大貫妙子「メトロポリタン美術館」や、アグネス・チャン「ロバちょっとすねた」、のちに岸部シロー版でリメイクされる「オナカの大きな王子さま」収録の『NHK みんなのうた 第8集』DVDを購入しました。今までは岡本忠成にはそれほど興味を持っていませんでしたが、最近は武田さんのおかげでいろいろと調べて、その作品を楽しく鑑賞しております。改めてこの場を借りて武田さんにお礼を言いたいと思います。
武田さん、また何かください……(笑)。
Furrows「Morning Fire」
Headaches & Golden Vessel「Happy Days In Happy Weather」
lovpune「all my friends」
Wishy『Paradise』
Jensen Sportag『Jensen Sportag: A New Anthology From Cascine』
Jess Williamson『Time Ain't Accidental』
Pine Barons「Electric Fingertips」
Tiger Del Flor「Living In The 90s」
Moon Blue「All I Know (Is That)」
Eartheater『Powders』
MGMT『Loss Of Life』
dad sports「take yr time」
Stephan Kreussel『Earthling』
Hockey Season「You'll Be Remembered」
Ditch Days「Lights Out」
Nastia『Lilie』
Preloved「Silver Springs」
Night Tapes「drifting」
LUHA『bedroom talk』
Maraschino『Hollywood Piano』
Bummer Daze「Reflections」
Goofy Geese「Mother」
Hala「Run To You」
Cap'n Marble「Asleep On The Run」
Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00
待ち遠しかった春の訪れです。今回の選曲は早春のきらめきを意識して、少しでもポジティヴな気持ちになれるようなジャズ・ヴォーカルを中心に、メロウなソウルやブラジル音楽もちりばめて組み立ててみました。飲食店や雑貨屋、あと自宅で流れても、自然と空間に溶け込んでくれたら嬉しいです。そろそろテラスやバルコニーで食事やお茶でもしたいですね。とは言っても、僕は相変わらず、家族と出かける以外は家でレコードを聴いたり、映画を観たりしているわけですが、久しぶりにカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・レモンが出演する『幸せはパリで』のDVDを観ていたら、バート・バカラック&ハル・デイヴィッド作の主題歌「The April Fools」が流れてきたところで思わず感極まってしまい……ということで、今回はヒーリング・ポプリの素晴らしいカヴァー・ヴァージョンが一押しです。ぜひ、音楽と共に瑞々しく爽やかな季節をお楽しみください。
Healing Potpourri『Aquarium Drunkard Lagniappe Session』
Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00
この早春のセレクションにふさわしい、ちょうど去年2月にリリースされたアメリカ・マサチューセッツ州のバンド、Stella Kolaのデビュー・アルバム。中世ヨーロッパ風のカリグラフィーを模して配したジャケット・デザインから、ブリティッシュ・トラッド〜フォーク系によせた好盤の予感しかありませんが、裏ジャケに写真の載るヴェテランと思しき風貌の男女の中の一人Robert Thomasは、Four TetことKieran Hebdenをプロデューサーに迎えた2007年作『Fire Escape』が記憶に残る、膨大なリリース数を誇るフリーク・フォーク系ユニットSunburned Hand Of The Manのメンバーであり、女性のBeverly Ketchも、Bunwinkiesなど実験的なフォーク系バンドに在籍していたシンガーだという。そんな彼らが奏でる音楽は、冒頭に記した予感どおり、ヴァシュティ・バニヤン〜ブリジット・セント・ジョンなどを思わせるブリティッシュ・フォークの最良の部分を再現するかのようなコンセプチュアルな響きで統一され、牧歌的なまどろみへと誘うような甘やかな風をなびかせてくれました。
ある著名な日本の科学者の方が、生成AIの問題点を解説される際に、AIを車に喩え、車が便利だと思えるのはそこに舗装された道路が存在しているから──的なことを語っておられましたが、それを選曲のシステムとして置きかえるなら、ディレクターの要望という目的地に向かって、あらかじめ“舗装された道路”が用意されたAIが選びだすプレイリストと、悪路を手探りでたどらざるをえない手作りの選曲の違いは、そこにある偶然との出会い、あるいは初めて見る風景からつながる記憶の連鎖とか、そんな予測されない開かれた自由が感じられることなんじゃないかと思えてきます。そんな悪路を歩む馬(?)のように、春の音を見つけられたら素敵ですね。
Svaneborg Kardyb『At Home (An NPR Tiny Desk Concert)』
Old Wave『Old Wave II』
Zé Ibarra, DORA MORELENBAUM & Julia Mestre『Live At Glasshaus』
MICHELLE「NEVER AGAIN」
Stella Kola『Stella Kola』
Grégory Privat「Supernova」
Mathis Picard『Heat Of The Moment』
Fabiano Do Nascimento & Sam Gendel『The Room』
Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00
今期は何と言ってもマリーナ・ショウの訃報について触れざるをえないですよね。僕が彼女を知ったのは、東芝EMIから1994年に出ていた橋本徹さん監修・選曲のコンピ『Free Soul Notes』に収録されていた「Feel Like Makin' Love」がきっかけ。「Blue Noteのヒップでメロウな歌姫」という形容が頭に刷り込まれました。「いとしのエリー」の元ネタが「You Taught Me How To Speak In Love」というのもこのあたりで知った知識。1975年のアルバム『Who Is This Bitch, Anyway?』は個人的には人生レヴェルの一枚。メロウで都会的な個性に惹かれ、当時付き合っていた女性の部屋で幾度となくこのアルバムを聴いたものです。ビルボード東京で2009年から行われた『Who Is This Bicth, Anyway?』リユニオン・ツアーを観ることができたのも忘れられない思い出ですね。僕は長らくいわゆるフィメイル・ジャズ〜ソウル系の名盤として捉えていたのですが、橋本徹さんのエッセイでその後「スティーリー・ダン『Aja』と並ぶ都会派名盤」という形容に触れ、「そういう視点もあるのか」と新鮮な驚きがあったことを思い出します。レア・グルーヴ的な観点では『The Spice Of Life』も『Who Is This Bitch, Anyway?』と並ぶ名盤ですね。カデット・レーベルならではのガッツあふれるサウンドは、こちらも時代をこえた魅力を放っています。彼女の訃報に接したあと、DJをする機会では「Feel Like Makin' Love」だけでなく「Woman Of The Ghetto」もかけたのは言うまでもありません。
東京ではもう咲き始めている梅や桜(ちょうどセレクションが流れる後半の時期ですね)、春霞のように柔らかなイメージを思い描きながら選曲しました。新しい季節へのワクワク感が演出できたのではないかとちょっぴり自画自賛しています(笑)。ソング・オブ・ザ・セレクションはMaë Defaysの「Diamond In The Rough」。名曲「Balcony」を彷彿させる、新しい季節の扉が開くときの突き抜けるような高揚感がたまりません。アルバム・オブ・ザ・セレクションはミゲル・アトウッド・ファーガソンの『Les Jardins Mystiques, Vol.1』でしょうか。アナログ4枚組というヴォリュームも圧巻でしたが、年末年始にあまり散財していなかったので思いきって購入。2曲をエントリーしましたが、『神秘の花園』というタイトルに恥じない、永く聴き続けることのできる名盤だと思います。他にもコリー・ヘンリー「Happy Days」ピアノ弾き語りや、ブルージーに始まって多彩な曲想の変化を見せるジュリアン・ラージの「76」、グレッチェン・パーラト&リオーネル・ルエケの昨年のアルバムの後日談的な「The Sun Will Rise Again」、ロバート・グラスパーやコモンの客演も光るキーヨン・ハロルドの「Find Your Peace」といった新曲も素敵でした。オープニング・クラシックはエンリコ・ピエラヌンツィによる「レントより遅く」のジャズ・アレンジ。まさにこの季節にぴったりの軽く心がふわっとするヴァージョンではないでしょうか。僕もスプリングコートを羽織って街に出て、こんなセレクションの流れるカフェで一服したいな、などとイメージを膨らませております。
Enrico Pieranunzi, Andre Ceccarelli & Diego Imbert『Ménage à trois』
Yussef Dayes『Black Classical Music』
Maë Defays『A Deeper Ocean』
Gretchen Parlato & Lionel Loueke「The Sun Will Rise Again」
Julian Lage『Speak To Me』
YOUR SONG IS GOOD feat. Joelene「You’re Young」
Anna Setton『O Futuro é Mais Bonito』
Smokey Robinson『Gasms』
Hiroshi Yoshimura『Surround』
DJ Harrison『Shades Of Yesterday』
Sy Smith『Until We Meet Again』
Keyon Harrold『Foreverland』
Bruce Brubaker『Eno Piano』
Zé Ibarra『Marquês, 256.』
Miguel Atwood-Ferguson『Les Jardins Mystiques, Vol.1』
Marlena Shaw『Who Is This Bitch, Anyway?』