Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2022 Best Selection(12月26日~1月15日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
世界中が経験したことのなかった苦難・困難に見舞われて3年、今年も何とか年の瀬を迎えることができました。サポートしてくださった皆さんへの、心からの感謝の気持ちが募ります。
「生きているハンドメイド・チャンネル」という矜持を胸に、「usen for Cafe Apres-midi」のために選曲してきた名作群の中から、特に好きだった900曲を2022年のベスト・セレクションとして、僕が担当する午前0時から8時までの時間帯に、日替わりのシャッフル放送でお届けします。曲目リストはこちらに掲載されていますので、ゆっくりと一年を振り返りながら、この冬のサウンドトラックとしてお楽しみいただければ嬉しいです。
時代の流れもあって、すっかり曲単位で音楽に接することが増えていますが、そんな中で僕がアルバム単位で愛聴したベスト60作も、ここにジャケット付きでリストアップしておきますので、ぜひその素晴らしさにも触れてみてください。
今年亡くなられた方々、僕が愛してやまないジャン=リュック・ゴダール/ファラオ・サンダース/ラムゼイ・ルイス/ロニー・スペクター/ガル・コスタ/パトリック・アダムス/トム・ベル/テリー・ホール/マーティン・ダフィー/マニュエル・ゲッチングといった、偉大なアーティストたちのご冥福を祈りながら、音楽的には引き続き恵まれていたと思う2022年に別れを告げて、新たな素敵な音楽との出会いを楽しみに、2023年を迎えたいと思います。本年もありがとうございました。
Sault『Untitled (God)』
Little Simz『NO THANK YOU』
Makaya McCraven『In These Times』
Nosaj Thing『Continua』
Kendrick Lamar『Mr. Morale & The Big Steppers』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos』
Carlos Niño & Friends『Extra Presence』
Tom Gallo『Vanish And Bloom』
The Weather Station『How Is It That I Should Look At The Stars』
СОЮЗ (SOYUZ)『Force Of The Wind』
Sessa『Estrela Acesa』
LNDFK『Kuni』
Charles Stepney『Step On Step』
Sam Wilkes & Jacob Mann『Perform The Compositions Of Sam Wilkes & Jacob Mann』
Duval Timothy『Meeting With A Judas Tree』
Cisco Swank & Luke Titus『Some Things Take Time』
Wilma Vritra『Grotto』
Mary Halvorson『Amaryllis & Belladonna』
Lydia Persaud『Moody31』
WizKid『More Love, Less Ego』
Somi『Zenzile: The Reimagination Of Miriam Makeba』
Melody Gardot & Philippe Baden Powell『Entre Eux Deux』
Sibusiso Mash Mashiloane『Music From My People』
ulla『foam』
Beth Orton『Weather Alive』
Florist『Florist』
The Orielles『Tableau』
William Basinski & Janek Schaefer『. . . on reflection』
Vegyn『Don't Follow Me Because I'm Lost Too!!』
Bitchin Bajas『Bajascillators』
Joel Ross『The Parable Of The Poet』
Chris Brain『Bound To Rise』
Big Thief『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』
Pierre Kwenders『José Louis And The Paradox Of Love』
Sudan Archives『Natural Brown Prom Queen』
Sean Nicholas Savage『Shine』
Manuel Linhares『Suspenso』
Michelle『After Dinner We Talk Dreams』
Tomberlin『I Don't Know Who Needs To Hear This...』
Diaspora Dreams『Diaspora Dreams』
Justin Orok『Kanata』
Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz『LIVE A LITTLE』
Yaya Bey『Remember Your North Star』
Kansado『Guaguansoul』
Ghostly Kisses『Heaven, Wait』
Aşa『V』
NNAMDÏ『Please Have A Seat』
caroline『caroline』
Mejiwahn『Beanna』
Kokoroko『Could We Be More』
Moor Mother『Jazz Codes』
Allison Wheeler『Winterspring』
Kenny Beats『Louie』
Flwr Chyld『Luv N Chaos』
Laufey『Everything I Know About Love』
Jeremiah Chiu & Marta Sofia Honer『Recordings From The Åland Islands』
Ana Gabriela『Degradê』
DOMi & JD BECK『NOT TiGHT』
Saba『Few Good Things』
Barney McAll『Precious Energy』
2022年も「usen for Cafe Apres-midi」の選曲を通して、たくさんの素晴らしい音楽に出会うことができました。きっとこの番組のセレクターを務めていなかったとしても、個人的に音楽の探求や選曲活動は続けているはずですが、「usen for Cafe Apres-midi」という多種多様な音楽愛好家(リスナーもセレクターも)が集う、この「サロン」のようなチャンネルに出会っていなければ、わたしの音楽人生は今よりもっともっと小さな世界のままだったと思います。あらためまして、リスナーのみなさま、セレクターのみなさま、そして橋本さん、たくさんの素晴らしい音楽に出会う機会を与えていただき、本当にありがとうございます。2022 Best Selectionは、そんなかけがえのないご縁に感謝しながら選曲をしました。
今年いちばん心に染み入り、そしてよく聴いたレコードを2022年のベストワンにセレクトしました。イングランド北部に位置するリーズを拠点に活動する、ヨークシャー出身のシンガー・ソングライター、Chris Brainがリリースしたデビュー・アルバム『Bound To Rise』。リリースされてすぐに、わたしの音楽好きの友人の間でも「ニック・ドレイクを思わせるような素晴らしいアーティスト!」と話題をさらっていた作品でした。わたし自身も、2022 Early Autumn Selectionでベストワンとしてご紹介させていただいた一枚です。
牧歌的なメロディーとキラキラとしたピアノのリフ、滋味深いギターのフィンガーピッキング、そして語りかけるような温かな歌声。控えめながらも、伸びやかで美しいストリングスの音色。ジャケットを眺めながらこのレコードにじっと耳を傾けていると、まるで美しい森の中で彼の弾き語りを聴いているような、そんな何とも言えない爽やかな気分に包まれます。何度も繰り返し聴いていくうちに、その歌声や音楽の手触りは、ニック・ドレイクに似ているようで、じつは大きく違っていることに気がつきます。たしかに歌声はよく似ているのだけれど、彼から発せられる、なんというか「陽」の感じは、圧倒的にニック・ドレイクにはない部分でした(もちろんニックの「陰」の部分も大好きですが)。レコードには、彼自身が撮影した愛らしい野鳥の写真がちりばめられたポスターが封入されていました。そんなところからも、Chris Brainという人間の、ポジティヴでヘルシーな人柄をなんとなく想像できたりします。わたしのお気に入りは「Bird Count」という曲ですが、アルバム全体を通して、本当に素晴らしい作品ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。願わくばジャケットを眺めながら、レコードで聴いていただけると嬉しいです。
2023年もみなさまにとって、素晴らしい音楽と笑顔あふれる、素敵な一年になりますように。
Chris Brain『Bound To Rise』
うん、一生懸命選びました。3週間・同時間帯の1時間枠ということで、繰り返しの聴取に耐えられるように多彩なジャンルの曲を配置して、何度も並び替えながら、旅の終わりがそろそろ近づいてくるようなフィナーレ感、そして年末〜紅白感(?)を大切にして連ねた今年もカラフルな18曲。収録曲のアルバム・ジャケットをずらっと並べて眺めてみたら、なんだか少し幸せな気分になれたので、いいのでしょう、これで。
そして毎年断りをいれているとおり、ここでのセレクションは、いわゆるアルバム単位でのベストという意味での選曲ではないので(例えば今年外せないMakaya McCraven『In These Times』からは、流れを考慮したうえで敢えて男らしく未使用)、あらかじめご了承を。
個人的には、Chris CohenとRyan Powerが制作に関わったStarla Onlineのファースト・フルが、その彼女の少し不安定な生活(失業中……)と地続きで創造された感じ──夢の中に現れた様々な曲の断片を膨らませていったという──がとても愛おしく、なんだかシンセの甘く拙い響きと相まってたまらなかったです(100本限定のカセットも予約できた)。そして、ドゥルッティ・コラムへのオマージュと気づいたら泣けてきたBibio「Sharratt」。そう、とにかく、ジャズにしろヒップホップにしろフォーキー〜SSW系にしろ、生楽器/エレクトロニクスを問わずオーガニックなアンビエントの要素をハーモニー〜色彩感覚的にまとったものに惹かれていた2022年だったような気もします。
というところで、今さらながらレオ・レオニのフレデリックの話ではないですが、暗い冬の日のために、2023年も素敵な楽曲にたくさんめぐりあい、皆さんに贈り届けられるよう、耳の感受性をしっかり鍛えておきましょう。
それでは、新しい年にむけて、みなさまの健康を心からお祈りします──。
Nightlands『Moonshine』
LNDFK『Kuni』
Raveena『Asha's Awakening』
СОЮЗ(SOYUZ)『Force Of The Wind』
Big Thief『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』
Louis Cole『Quality Over Opinion』
Ricewine『In Valley』
Bibio『BIB10』
Dylan Moon『Option Explore』
DOMi & JD BECK『NOT TiGHT』
Ellie Dixon『Crikey! It's My Psyche』
Starla Online『I Saw You In My Shadow』
Beau Diako『Nylon』
Reginald Omas Mamode IV『Stand Strong』
i-sef u-sef『consistency』
Sam Prekop『The Sparrow』
FKJ『V I N C E N T』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos』
2022年のBest Selectionは、選び終えてみると今年初めて知ったアーティストが全体的に多く、中でもNiko Bokos & Mark WhalenやFonteynやgrentperezなど良質なポップスが揃いました。個人的には現代版ソフト・ロックの当たり年だったかなと思います。Jerry Paperもそうですが、次から次と良いSSWが現れるのは本当に嬉しい限りです。おなじみのBibioやMarker Starlingもやはり好きな曲がありました。Shabason & Krgovichも外せません。そしてUyama Hirotoが夏にリリースしたHanah Springをフィーチャーした曲も強く印象に残っていて、1時間の最後に選びました。納得のいく1時間に仕上がりました。午前10時から1時間、ぜひ聴いてみてください。
Niko Bokos & Mark Whalen『Hey How Are You, Good To See You』
Fonteyn『Trip The Light Fantasitic』
grentperez『Conversation With The Moon』
Jerry Paper『Free Time』
Bibio『BIB10』
Marker Starling『Diamond Violence』
Shabason & Krgovich 『At Scaramouche』
Uyama Hiroto feat. Hanah Spring「You Don’t Have To Cry」
2022年も大変お世話になりました。
良い曲との出会いがたくさんあり、かなり悩ましかったんですが、アーリー・オータムの際の予告通り、ベストはカーリ・カブラルで決まりです。
ジェイムス・メイソンの「Good Thing」のカヴァーが、ゴー・ゴーのビートを取り入れたアーバン・メロウなアレンジで堪りません!
前回コメント掲載時には今頃とっくにアナログ盤を入手しているはずでしたが、発売延期で年明けになりそうです。アルバムが寡作なのは仕方ないとして、アナログ盤まで待たされると、焦らされてるような気になってしまいました。早く来てくれ〜(笑)。
2023年も皆様にとって、素晴らしいミュージック・ライフになりますよう祈りつつ、僕のお店に「usen for Cafe Apres-midi」クルーがいつか遊びに来てくれることを願っております(ちなみに、富永珠梨さんはオープン時にチーママとDJをしてくれて、三谷昌平さんはDJと先日はボトルまでご注文いただきました。ありがとうございます!)。
Khari Cabral & Jiva『5』
2022年は、改めて「このチャンネルを一番誰に聴いてもらいたいのか?」をテーマに、日曜日の午前中この選曲が流れた後に、半角カナのショート・メールで「イイネ♪」と、いつも嬉しい感想を送ってくれる大切な友人であり音楽仲間に捧げる気持ちで選曲してきた結果、シーズン通して、一本筋の通った選曲ができた充実の1年でした。そんな原点回帰とともに今年のベスト・セレクションの冒頭を飾るVividryの「A Million Signs」は、往年のスウィート・ソウルやメロウ・グルーヴが好きだった人にはたまらない奇跡のナンバー。その後に続けて選んだ「Soulful Strut」へのオマージュ溢れるMamas Gunのキラー・チューン「Good Love」も、甲乙つけ難い今年のベスト・オブ・ベストと称したい1曲です。そしておそらく、彼の心に最も「シミタ♪」1曲としてラストに選ばせてもらったのは、まるで映画の中の回想シーンのように、美しさと切なさが交錯する声とギターを聴かせてくれたLaufeyの「Beautiful Stranger」。この曲を聴いていると、かつて“Saudosismo”の本質を探求しながら、ギターを弾いていた頃のロマンティックで素敵な気持ちが溢れるように蘇ってきます。
2022 Best Selection compiled by hirochikano
01. A Million Signs / Vividry
02. Good Love / Mamas Gun
03. Monte Carlo / DRAMA
04. Starting Line / Cory Wong feat. Emily C. Browning
05. Brasil / Fitness Forever
06. Petals On The Floor / The Brook & The Bluff
07. Prisoner / M.I.L.K. feat. Benny Sings
08. I Think You Should Know / Conor Albert feat. Maya Delilah
09. Je Suis La Pomme Rouge / Parekh & Singh
10. What Do You Do / Aaron Taylor & House Gospel Choir feat. Tarriona 'Tank' Ball
11. Mess 'Reimagined' / Brian Reith
12. La Grande Delle / Adrien Legrand
13. Too Good / Moonchild
14. Take It Further / Mina Okabe
15. I Got Your Back / K.ZIA
16. Enough / J.BASS feat. Lee go do
17. Beautiful Stranger / Laufey
(interlude) Loving U / Ward Wills
Vividry『Your Good Lies』
Mamas Gun「Good Love」
Laufey『Everything I Know About Love』
2022年は「dublab.jp suburbia radio」と故DJジョン・ピールのアーカイヴをよく聴いてました。
ので、橋本さんに全然会ってないんですけど(涙)、番組から滲み出る橋本音楽愛を毎回堪能させていただき、偉大なるイギリスDJジョン・ピールの縦横無尽な選曲の素晴らしさに浸っていると、あまり2022年リリースを意識せず温故知新およびニュー・ディスカヴァリーで発見&再発見での選曲力で溢れた年でした。
そんな気分で久々カフェ・アプレミディのコンピCDシリーズを聴き返すと、これがまた素晴らしいのであります。この原点を忘れず選曲を改めて極めていきたいと考えている所存であります。
今回は、初期アプレミディ・シリーズCDのようなザラザラした感覚で改めてベスト選曲してます。カセット・テープからレコードからそのまま録音していたりします。この音圧の調節の難しさがたまらないのであります。
そんな中でもアルバムとしても聴きこんだオーストラリアのバンドOcean Alleyの4枚目のアルバム『Low Altitude Living』。80年代の Simply RedとThe Style CouncilとThe Smithsのようなバンド。「Simple Preasures」はまさに『A New Frame』時のSimply Red。
そしてやっと手に入れた1990年のAnita Strandellのアルバム『Hommage Till En Polare』。大人の切ないボサノヴァ「Visa Till Katarina T.」。同じくポルトガルのPrefab SproutことBanの名曲「Pá-rá-rá」。振り返ると今年の最大の出会い曲はやはりインドネシアCandra Darusmanの「kau」、泣けるフリー・ソウル。となるとThe Latinosの「It Must Be Love」を選曲に入れたくなって、親の顔を拝みに行きつつ、炎天下実家掘り。私なりのPatrick Adams & Pharoah Sanders追悼の意を込めた楽曲も収録させていただいてます。ぜひお楽しみください。
そういえばカフェ・アプレミディCDがスタートする前に、プロモでカセットを配布していたはず。友人のレコード屋に届いて聴きたいけど聴けなかったのを覚えてまして。今更ですが、ぜひ内容を聴きたいのですが……橋本さん!
そんな会話がカフェ・アプレミディでできる当たり前の生活になる2023年でありますように。それではまた来年、素晴らしい音楽との出逢いに期待しつつ。
良いお年をお迎えください。
V.A.『Cafe Apres-midi Prune』
Ocean Alley『Love Altitude Living』
Anita Strandel『Hommage Till En Polare』
自分の体感的にはほんの先日2022年になったばかりの感覚ですが、早いものでもう12月に入り、今年もあと残すところわずかとなりました。皆さんにとって2022年はどのような一年でしたか? コロナ禍以降ステイホームな時期も長かったので、家で映画を観る頻度が格段に上がり、自分は映画に対する興味がさらに強くなったのですが、今年も好きな映画を深く掘り下げ、また映画にまつわる貴重な体験を多くさせていただきました。音楽に関しても古くからの友人であり、ネオアコの母(笑)と勝手に呼んでいる小出亜佐子さんが精力的に活動されていたので、それに便乗して楽しい時間を過ごさせていただきました。世の中がウィズ・コロナになったので、内向きだったものを外に向け、行動範囲を広げて2023年はコロナ禍で失ったものをいろいろと取り戻したいと思います。
さて今年のベスト・セレクションですが、選曲の納期の関係で11月上旬までにリリースされたものの中から選びましたが、その後リリースされたアンディー・シャウフの「Wasted On You」や、Amateur Hourの「I Need You」などの良作が選外になってしまいましたね。これらの作品は2023年のWinter選曲もすでに納品してしまったのでEarly Spring選曲でご紹介しますのでお楽しみに。
それではマイ・ベスト・セレクションをご紹介しますと、まずはベスト・セレクション・パート1はアメリカはモンタナ州ボーズマンのアーティスト、Isaac Winemillerの「Felt So Free」をセレクトしてスタート。実はこの作品は2021年の11月26日にリリースされたアルバム『Levels Of Removal』に収録された作品ですが、上記した同じ理由で昨年のベスト・セレクションには間に合わなかったのですね。続いてトップスの「Perfected Steps」を選んだのですが、トップスは昨年も「Waiting」という曲を選んでいたので、2年連続ベスト・セレクション入りです。ミシガン州出身のデュオ、Cal In Redの「Can I Call You Tonight? / Quarterback」は同世代のアーティスト、DayglowとWallowsの作品をカヴァーしたもの。ロンドンをベースに活動するTuff Bearの「How It Feels」や、アメリカとイギリスの音楽プロデューサーによるコラボレイション・ユニット、53 Thievesの「3rd Floor」、カリフォルニア州サンディエゴのアーティスト、Scoobert Doobertの「All My Friends Live On The Internet」は、同じ質感を持つスウィートでメロウなダンス・ナンバーですね。そしてバンドからソロ・プロジェクトとして新たに活動を始めたBarrie Lindsayをゲスト・ヴォーカルに迎えたVansireの「Night Vision」と、Barrieの10月にリリースされた新曲「Unholy Appetite」を選んで繋げ、さらにこちらも3月にリリースされた「Vivienne」という作品でVansireとコラボレイションしていたカナダはケベック出身のシンガー・ソングライターJosie BoivinのプロジェクトMUNYAの「Captain Ron」に繋げます。このソフトな女性ヴォーカル作品の流れでニューヨークで活動するJuliettaの「Sundance Happy」や、サウス・アフリカ出身でドイツを拠点に活動するシンガー・ソングライターのAlice Phoebe Lou のサイド・プロジェクトStrongboiの「Fool Around」もピックアップ。次に選んだサンフランシスコを拠点に活動するNashaの「Somebody New」は白日夢のような幻想的な香りがしますね。そしてコケティッシュなラップが可愛らしいロンドンをベースに活動するLava La Rue & Biig Piigの「Hi-Fidelity」をセレクト。カリフォルニア州ロサンゼルスの男性アーティスト、Boy Willowsのファルセット・ヴォイスがメロウに響く「Quick Stop By」は、合間に響くサックスの音色がどこかルー・リードの名曲「Walk On The Wild Side」を彷彿とさせます。ベスト・セレクション・パート1のクライマックスとしてロサンゼルスのアーティスト、プールサイドが同じくロサンゼルスで活動するマルチ楽器奏者のBrijeanとコラボレイションした、ほんのりとウィリアム・ディヴォーンの「Be Thankful For What You Got」を感じさせる「Better When We're Close」と、これまたロサンゼルスで活動する女性アーティスト、Yunaのスムース・メロウなダンス・ナンバー「Make A Move」をピックアップして、ひとつめのベスト・セレクションは締めました。
お次はベスト・セレクション・パート2。まずはニューヨークのアーティスト、Brothertigerが11月にリリースした5枚目の作品となるニュー・アルバムに収録された「Be True」からスタートしましたが、5枚目にしてセルフ・タイトルとなる『Brothertiger』と題したのは、今回の作品がよほどの自信作なんでしょうね。続けてこれまたニューヨークを拠点に活動するA Beacon Schoolの本人いわく“airy synth-pop”な「Dot」をピックアップ。オーストラリアはシドニー出身のアーティスト、Butter Bathの「Kurrajong Hotel」は映画『ヴァージン・スーサイズ』に使われたエールの「Playground Love」を彷彿とさせます。そしてカナダのケベック州モントリオールのアーティスト、Jordannのメロウ・ファンクな「Effective Communication」と、パート1でも取り上げたBrijeanのセクシーな響きを放つ「Caldwell's Way」に続くのは、久しぶりのリリースとなるCigarettes After Sexの「Pistol」。彼らのサウンドは金太郎飴的なところはありますが、今回も聴いていてとても気持ちがよく、自分は大好きな作品です。さらにパート1でも取り上げた大好きなバンド、トップスのメンバーであるMarta Cikojevicによるソロ・プロジェクト、Marciのデビュー・アルバム『Marci』より「Terminal」をセレクト。このデビュー・アルバムは全曲通して素晴らしいです。ニューヨークはブルックリンの男女2人組ユニット、Rubblebucketのハンドクラップの響きが心地よい「Morning In The Sun」に続くのは、これまたパート1でも取り上げたBarrieの「Jersey」ですが、今年のベスト・セレクションは彼女絡みの作品が3曲入っていることになりますね。彼女やトップスの作品は2021年のベスト・セレクションにも入っていましたが、やはり2021年のベスト・セレクションで取り上げていたロサンゼルスを拠点に活動する女性アーティスト、Caroline Loveglowのニュー・シングル「Blue Arcade」もピックアップしたので、彼女も2年連続でベスト・セレクション入りです。今年彼女はハッチーと一緒にツアーを回ったそうなのですが、この組み合わせでライヴを観た人がとても羨ましいですね。続けてニューヨークで活動するインディー・ダンス&シンセ・ポップ・トリオCouch Printsの「Horsepower」をピックアップし、オルタード・イメージを彷彿させるコケティッシュな歌声が魅力なフィンランドはヘルシンキを拠点に活動するシンセ・ポップ・デュオPearly Dropsの「Get Well」や、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの女性アーティスト、Catherine Moanの80sテイストのシンセ・ポップ「Soda Pop」を選びスウィートなエレクトロニック・ミュージックを続けます。そしてパート2の終盤はJ.Y.N.という別名でも活動するBericatのこれまた「Be Thankful For What You Got」テイストの「She's A Star」から、ニューヨークの男性アーティストScotch Mistの「Breathe Underwater」をピックアップし、2022年の大団円としてイギリスはマンチェスター出身のアーティスト、Warahenegeの「Velvet, Black, Ignite」をセレクトして今年のベスト・セレクションは幕を閉じます。
そしてここからは毎年書いている個人的2022年ベストな出来事です。皆さん映画『007』シリーズはお好きですか? そしてあなたのフェイヴァリット『007』作品は何でしょうか? ダニエル・クレイグ最後のジェームズ・ボンド作品となった『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラストには驚きましたが、巷ではすでに次のジェームズ・ボンドが誰になるのか騒がしくなっていますね。本家『007』作品ではないのですが、皆さんは『ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦』という映画をご存じですか? この作品は1967年に『007』シリーズ人気に乗って製作されたイタリアのスパイ・アクション映画なのですが、その出演者がとても豪華なのです。まずは主役のドクター・コネリー役にはショーン・コネリーの実の弟であるニール・コネリーが当たり、共演者として『007/危機一発』(再上映時『007/ロシアより愛をこめて』)のボンドガール、ダニエラ・ビアンキ、『007/サンダーボール作戦』の悪玉ラルゴを演じたアドルフォ・チェリ、『007は殺しの番号』の刺客デント教授役、アンソニー・ドーソン、さらにこの時代の『007』シリーズのレギュラー・メンバーであるM役のバーナード・リーとミス・マネーペニー役のロイス・マクスウェルが出演しているのです。内容もよくできていて、ヤスコという日本人が重要な役として出ていたり、本家のオマージュに愛があり、なかなかの作品だと思います。しかしこれだけ『007』ファンをくすぐる要素がある作品にもかかわらず、全世界でソフト化はされていません。YouTubeで画質の悪い映像は観られますが、後は日本では観られませんがどこかの国のAmazon Prime Videoに上がっているくらいで、これ以外に視聴する方法はありません。そんな貴重な作品ですが、日本では何度かTVで吹き替え版が放送されたことがあり、その激レアで貴重な吹き替え版映像を鑑賞できたことが今年の個人的ベストな出来事ですかね。さらにこのコメントを書く数日前の12月7日に、テレビ東京『午後のロードショー』でジョン・カサヴェテス監督の『グロリア』の貴重な吹き替え版が放送されましたが、この令和の時代にソフト化されていない貴重な吹き替え版が放送されたことに驚き、2023年にはさらに貴重な吹き替え放送を観ることができれば嬉しいです。個人的に一番観たい作品はフィールドワークスが吹き替え音声の募集をかけても見つからなかった、アラン・パーカー監督のデビュー作『ダウンタウン物語』ですね。
それでは皆様、良いお年をお迎えください~。
2022 Best Selection Part1
Isaac Winemiller『Levels Of Removal』
Tops『Empty Seats』
Cal In Red「Can I Call You Tonight? / Quarterback」
Tuff Bear「How It Feels」
53 Thieves「3rd Floor」
Scoobert Doobert「All My Friends Live on the Internet」
Vansire「Night Vision」
Barrie「Unholy Appetite」
MUNYA『Voyage To Mars』
Julietta「Sundance Happy」
Strongboi「Fool Around」
Lava La Rue & Biig Piig「Hi-Fidelity」
Boy Willows「Quick Stop By」
Brijean & Poolside「Better When We're Close」
Yuna「Make A Move」
2021 Best Selection Part2
Brothertiger「Be True」
A Beacon School「Dot」
Butter Bath「Kurrajong Hotel」
Jordann「Effective Communication」
Brijean『Angelo』
Cigarettes After Sex「Pistol」
Marci『Marci』
Rubblebucket「Morning In The Sun」
Barrie『Barbara』
Caroline Loveglow「Blue Arcade」
Couch Prints「Horsepower」
Pearly Drops「Get Well」
Catherine Moan「Soda Pop」
Bericat「She's A Star」
Scotch Mist「Breathe Underwater」
今年も昨年同様、この一年間の選曲リストを改めて洗い直し、自分の持ち時間の中でよい活躍をしてくれた曲を厳選してみました。なくなくここから漏れた曲も多数ありますが、これが2022年のベストだと自信をもってお届けできます。エマ・フランクやジョーイ・ドシクあたりは、毎年選んでいるのでは? と思うくらい、僕の選曲では定番アーティストですが、毎年、彼らがクオリティーの高い曲を発表し続けていることにも感謝です。そんな中、新しい出会いもありました。カナダ・トロント出身のシンガー・ソングライター、ジャスティン・オロックです。以前、ライアン・ドライヴァーやマーカー・スターリングなど、トロントのインディー・シーンを追いかけていましたが、今もこうして素晴らしいアーティストが生まれていることに感動しました(なんと彼はジョン・サウスワースの教え子なんですね)。優しくまろやかなアコースティック・ギターとヴォーカルと、洒脱なアレンジメントがなんとも心地よくて、ふと街中で流れてきたらどんなに素敵だろうと、聴くたびにそう感じました。
Justin Orok『Kanata』
今年は以前紹介した、新星DOMi & JD BECKとBruno Berleのアルバムが一番印象に残っています。昨年に比べて多くのライヴも体験できて、中でもSam Wilkes & Sam Gendelがベストでした。2022年も数多くの素晴らしい音楽体験ができて、とても充実した一年になりました。1時間×2枠にとてもおさまりませんがベスト曲を詰め込んだので、楽しんでいただけたら嬉しいです。2023年も音楽に満たされて、そして世界の人々にとって新たな美しい世界が開かれて、平和な一年になるよう祈っています。
DOMi & JD BECK『NOT TiGHT』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos』
Sam Wilkes & Jacob Mann『Perform The Compositions Of Sam Wilkes & Jacob Mann』
Sam Gendel『SUPERSTORE』
軽やかなパーカッションに女声コーラスが心地よいカナダはケベックのR&BシンガーDominique Fils-Aiméの「Go Get It」から始まった2022年。今年も上半期と下半期の2本に分けて楽曲を選び、それぞれから作品をピックアップ。
夏を連れてきたのはメキシコシティーのPLQの「Alleys」。ひんやりとしたキーボードと透明感のあるアコースティック・ギターの音がキラキラと戯れ爽やかなビートに乗った楽曲は、Nujabesとharuka nakamuraの音楽からインスパイアされて生まれたといい、デトロイトのNaomi Jayによるクールなビートとメロディーがメロウにループする「Let Go」とともに2022年の夏を印象づけるサウンドとなった。そして、LAのフォトグラファーでもあるDanny Scott Laneが初夏にリリースした『Wave To Mikey』は、サックスにJoseph Shabason、キーボードにJohn Carroll Kirbyを迎え、アンビエント~環境音楽的な幻想的なサウンドスケープが広がる。そのJohn Carroll Kirbyの新作『Dance Ancestral』の「Dawn Of New Day」には、奇才Laraajiも参加し、そのゲストから生み出される桃源郷的なサウンドは、フランスのFKJの新作『V I N C E N T』にも気持ちよくつながっていった。
下半期は、秋の湖畔を静かにボートが滑るような英国はエディンバラのOther Landsによる「Braidbit」の涼しい風景から始まった。そして、イスラエルのButtering TrioのキーパーソンのYuval HavkinによるRejoicerと、彼の手掛けるレーベルRaw Tapesのアーティストiogiによる初のデュオ・アルバム『Too Much Too Soon』は特に心地よく、収録曲「A Thing Like You」や「Speeding Slower」などのように、彼らが旅先のLAで「濃いコーヒーを飲みながら新しいコード進行を探したよ」というほどに風通しのよいグルーヴと眩いメロディーが印象的。そして、そのサウンドはNYのSam Evianによる幻想的なグルーヴを生む「Time To Melt」とも相性がよかった。さらに、ワシントンD.C.のAlecia Renece「Feel Real」、英国のGeorgie Sweet「Energy」やAlice Auerの「Daydreaming」、イスラエルのDanny Kuttnerの「Come Play With Me」など、夜の帳を優しく包み込むようなメロウな女性シンガーの歌声も夜のセレクションを艶やかに彩った。
PLQ「Alleys」
iogi & Rejoicer『Too Much Too Soon』
追記:5月にリリースした、haruka nakamuraと田辺玄の“循環”という名のユニットorbeのファースト・アルバム『orbe Ⅰ』(orbe / resonance music共同制作)は、海外勢のメロウな楽曲の中で清涼剤のような音を響かせていた。こうして音楽の循環は国境を越えて美しく響きあっている。
orbe『orbe Ⅰ』
「usen for Cafe Apres-midi」の仲間、FAT MASAくんの釧路のお店Joyousに来て、二人で2022年を振り返りながらこの文章を書いています。
今年もコロナ感染拡大に加え、ロシアのウクライナ侵攻と、あまり良いニュースがない一年でしたが、そんな状況とは反比例して、数多くの素敵な音楽に出会った年でした。オープニングに配した英国のシンガー・ソングライター、クリス・ブレインの『Bound To Rise』をはじめ、ブエノスアイレス出身のシンガー・ソングライター、デルフィーナ・マンカルドの『Octante』、カリフォルニア州出身で現在はチェコ共和国で活動するシンガー・ソングライター、アリソン・ウィーラーの『Winterspring』、そしてアイスランド、レイキャヴィック出身で現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、レイヴェイの『Everything I Know About Love』、ニューオーリンズ出身のタンク・アンド・ザ・バンガスのセカンド・アルバム『Red Balloon』は特に印象に残りました。来年も「生きているハンドメイド・チャンネル」として、皆様の心に響くような選曲をお届けしていきたいと思います。2023年が皆様にとって幸多き年となりますようにお祈り申し上げます。
Chris Brain『Bound To Rise』
Delfina Mancardo『Octante』
Allison Wheeler『Winterspring』
Laufey『Everything I Know About Love』
Tank And The Bangas『Red Balloon』
チャールズ・ステップニー(1931-1976)という偉大な音楽家が約50年前に自宅の地下スタジオに残していた貴重な音源集『Step On Step』が世に放たれ、ほぼ同時に、そのチャールズ・ステップニーの盟友であったラムゼイ・ルイスの訃報が届いた。そうして、さらに続いたファラオ・サンダース昇天の知らせ。それらは確実にひとつの節目となり、以降の選曲に大きな影響を及ぼすことになった。一方、サッカーのワールドカップが歓喜に沸く最中にも、ロシアによるウクライナ侵攻における悲しみの感情は日々重く積み上がっている。発生から3年が経過したCOVID-19をめぐる問題も、未だ収束してはいない。本ベスト・セレクションの締め切り間近に届いたSaultによる『Untitled (God)』を耳にしたとき、こうした2022年の出来事を抱擁しているように感じた。新たな年こそ、誰しもに愛と笑顔が溢れる平穏な世界が訪れることを心から祈りながら、1時間のミックスを丁寧に編んだ。
Sault『Untitled (God)』
3年前からベスト・セレクションが1時間の枠内で2種類作れることになり、今年もとても充実した気持ちで選曲に携われています。普段、僕は水曜日の12時から16時の時間帯を担当しているのですが、ベスト・セレクションはセレクター17人が選んだ1時間を、時間帯に応じてプロデューサー&ディレクターが振り分けます。2種類のセレクションが日替わりで同時間帯に放送されるので、できるだけテイストを合わせようと思っているのですが、結果的にはいつもFMライクなポップ・サイドと、より自分の好きなジャジー&メロウなサイドという感じになってしまいますね。もしよろしければ、2日続けて聴いていただければ嬉しいです(笑)。そのベスト・セレクション、昨年と一昨年のものを自分で聴き直したのですが、テイストが驚くほど変わらなくてびっくりしました(笑)。もちろん、同じ人間が選んでいるのですから当然と言えば当然ですし、よく言えば一定のクオリティーが保たれているということなのでしょうが、いわゆるR&Bの美学であるとされる“The Changing Same”ではなく、“Never Changing Same”ということかなあ(汗)……とちょっと考えさせられてもしまいました。
さて、2022年のベスト・アルバムはチャールズ・ステップニーの『Step On Step』でしょうか。彼はご存じの通り、EW&Fやラムゼイ・ルイス(R.I.P.)、ミニー・リパートンやテリー・キャリアーといった音楽史に名を遺す名ミュージシャンとの親交で知られるプロデューサー/アレンジャーです。『Step On Step』はシカゴの名門レーベル、インターナショナル・アンセムからリリースされた未発表音源集ですが、これが驚くほど2022年の空気感にフィットしていましたね。ジョン・キャロル・カービーや彼がプロデュースしたエディー・チャコンなど、ローファイな質感の曲と並べてよく選曲していました。若い頃に読んだ「Suburbia Suite」などにおいて、チャールズ・ステップニーの関連作は数多く取り上げられていて、僕自身も影響を受けたという意味もあって今回の選出としました。
waltzanova的ライジング・スターといえば、ネクスト・トム・ミッシュ的な存在感を見せるギター・ヒーロー、コナー・アルバートです(ドミ&JD・ベックとも迷いましたが、他のセレクターの方がエントリーしてくれるかと思い、次点としました)。フレッシュな抜けの良さを感じさせてくれた『Collage 2』はもちろん、ブルーノート・クラシックスをUKのアーティストがカヴァーした企画『Blue Note Re: imagined II』で取り上げていた、ボビ・ハンフリー「You Make Me Feel So Good」が素晴らしく、DJでも大活躍しました。ミカ・ミラーやヤズミン・レイシー、ヤヤ・ベイ、ムーンチャイルドといったネオ・ソウル的な感覚を持つ女性シンガーやグループも大好物でしたね。もちろん、ケンドリック・ラマーの感動作『Mr. Morale & The Big Steppers』や、一気に大量解禁されたSaultのアルバム群も忘れられません。曲単位では、齢73にして生涯現役感を漂わせるブラジリアン・AORの雄であるジャヴァンの「Num Mundo de Paz」、Q・ティップやエスペランサ・スポルディングをフィーチャーしたロバート・グラスパー「Why We Speak」(僕はどうしてもこの人のリベラル・ブラック・ミュージック的側面が好きなようです)や亜蘭知子の「Midnight Pretenders」をサンプリングしたウィークエンドの「Out Of Time」なども大好きでした。どの曲もFMライクな響きがありますよね。そして触れておかなくてはいけないのは、タンク・アンド・ザ・バンガスの「Cafe Du Monde」です。「usen for Cafe Apres-midi」ではもちろん、アプレミディのイヴェントでも頻繁にプレイされていて、新しいアンセムとなった感じがあります。来年もおそらくあまり変化のないスタンスだと思いますが(笑)、少しでも自分の選曲の枠を広げていきたいと思っています。ということで、今年も一年間ありがとうございました! +来たる新年もよろしくお願いいたします!
Charles Stepney『Step On Step』
世界的な流行性感冒が始まってから、時間のスピードがいやに増していることに気づきました(自分の歳のせいではないか、と問われればお返しする言葉はないのだけれども)。ここ数年をふりかえれば、音楽もファッションも原点回帰みたいなところに落ち着いている気がするのですが、それは「レトロスペクティヴ」や「オールドタイミー」「ヴィンテージ」といったありきたりの形容ではなく、過去を見直しつつもどこかしら未来志向を感じられる、ポジティヴな空気を伴っているところに力強さを感じます。適切な言葉と感じるのは「オーセンティック」かな? 今年選んだ音楽も、そんな気分を感じさせるものが多かったように思います。
ヴィジュアルに統一された美意識を感じさせる、北欧のAmp Music & Recordsからはヨハンナ・リンネア・ヤコブソンのファースト・アルバムを。シンガー・ソングライターという肩書きながら豪快にブロウするサックスも味わい深く、才女の片鱗を感じさせる一枚。ビートルズの「She’s Leaving Home」をこんなにもかっこよく三拍子でカヴァーした例を私はしりません。
バーバラ・バルザン&トーマス・シルヴェストリの『A Gentle Smile』は80年代初期のラフ・トレード・レーベルを彷彿とさせるヴィジュアルも素晴らしく、ここ数年の欧州ジャズの中でも本アルバムに収録された「Wooing」は五指に入るほどのお気に入り。清冽な音色とアンサンブル、柔らかさの中に毅然とした意思を感じるバーバラ・バルザンのヴォーカルなど、どこから食べてもクリスピー。
その他、リオデジャネイロにおけるショーロやクラシックなサンバを深化/継承するゼロ年代の音楽家たちにも期待しています。リスナーの皆様もよいお年をお迎えください!
Johanna Linnea Jakobsson『Alone Together』
Barbara Balzan & Thomas Silvestri『A Gentle Smile』
昨年に引き続き1時間×2枠選曲させてもらいましたが、全然時間が足りず、主に24時以降に選曲しているアンビエント系の作品は省かせてもらいました。年々アルバム単位で聴くというよりかは自分でプレイリストを組んで聴くことが多くなっていて、ベスト・アルバムを問われるとぼんやりとしてしまいますが、ベスト・ソングならDuval Timothyの「Ash」を挙げたいと思います。Max RichterとパートナーのYulia Mahrによる新たなスタジオで1日で録音されたそうですが、果てしなく続く壮大な世界観に強い衝撃を受けました。国境なき医師団への寄付を増やすための"Vinyl Campaign”が元日までBandcampで行われているので、ぜひチェックしてみてください。
V.A.『Studio Richter Mahr - Free & Equal Vol. 1』
Lean Year『Sides』
Nosaj Thing『Continua』
Abunai『Chryalis』
Naji『Favorites』
Tony Njoku『Our New Bloom』
Kingsley Ibeneche『Udo』
Samora Pinderhughes『Grief』
Takuro Okada『Betsu No Jikan』
Shabaka『Afrikan Culture』
Jasmine Myra『Horizons』
Forgiveness『Next Time Could Be Your Last Time』
Misha Panfilov『Momentum』
Laufey『Everything I Know About Love』
Jamie Drake『New Girl』
Victoria Victoria & Charlie Hunter『To The Wayside』
Alex Siegel『Courage』
Lydia Persaud『Moody31』
Katie Tupper『Towards The End』
Moons『Best Kept Secret』
Sunni Colón『JúJú & The Flowerbug』
Danny Scott Lane『Wave To Mikey』
John Carroll Kirby『Dance Ancestral』
iogi & Rejoicer『Too Much Too Soon』
Shivum Sharma『In Transit』
Beau Diako『Nylon』
Jackson Mico Milas『Blu Terra』
The Charles Géne Suite『Suite Nites』
Ernest Hood『Back To The Woodlands』
自己主張こそ正義であるかのような世の中でUSENは奥ゆかしいとさえ思えるほど控えめな音楽メディアだ。これでもかと再生回数に執着したり、「いいね」を半ば強要したり、頼んでもいないオススメを押し付けてきたりするアレやコレやソレとは根本的なあり方からして異なる。聴き流されることを前提に、しかしながら入念に、丁寧に、真剣に選ばれた曲たち。
無駄? 非効率? 自己満足? いや、これこそが贅沢というもの。閉塞感に静かに確かに楔を打つ遊び心が形を変えたものと言い換えてもいい。なくても困らないものをあったら嬉しいものに。それが選曲の仕事なのかもしれない。
POSS『Proteja Os Seus Sonhos, Vol.2』