ネタ本レビュー7「畜犬談―伊馬鵜平君に与える―」
★★★★★
5/5点満点
太宰治の犬に関するエッセイ、または小説です。
私は最初エッセイだと思っていたのですが、どうやらそうとも言い切れないようです。
『畜犬談』(ちくけんだん)は、太宰治の短編小説、あるいは随筆。
(中略)
作中の「私」は甲府に住む妻帯の小説家であるため太宰本人だと考えて間違いなさそうであるが、この小説の内容がすべて事実なのか、事実を基にしたフィクションなのか、あるいはまったくの創作であるのかは判らない。
(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/畜犬談
より引用)
Wikiではこのように解説していますが、独断と偏見と思い込みにより、ここでは主人公の「私」を太宰治本人と仮定します。
太宰先生は犬が大嫌いなようで、冒頭から犬畜生、猛獣、果ては醜怪と罵りまくってます。
私も犬は嫌いですが、流石にそこまで言わなくても…と諫めたくなるくらいのディスっぷりです。
そんな太宰先生は、大嫌いな犬に会う度に愛想笑いをしてやり過ごしていました。
…走って逃げた方が良い気がしますが。
そんな事をしていたせいか、ある日散歩していたら野良犬に気に入られ、家まで付いてこられてしまいます。
即処分するかと思いきや、太宰先生はその犬をポチと呼び、甲斐甲斐しく世話をします。
縁の下に寝床を作ったり、えさをわざわざ軟らかくしてから与えたり。
先生曰く、ポチが可愛いから養っているのではなくて復讐されるのが怖いから仕方なくやってるんだそうです。
…ご本人がそう仰るならそうなんでしょう。
そんなこんなで太宰家で暮らすポチですが、そんな彼にとんでもない災難が降りかかります!
その災難とは…!?
自称犬嫌いの太宰先生に文句を言われつつ可愛がられていたポチですが、何と病気にかかってしまいます。
ポチが、皮膚病にやられちゃった。
(本文より引用)
やられちゃった。て
今まで文豪らしい堅い文章で書き連ねていたのに、急に現代的なお言葉遣いになられましたよ。
頑張って大人びてたのにうっかり素が出ちゃった子供みたいです。
あまりに酷い皮膚病だったので、太宰先生はポチを処分する事にします。
ポチを拾った練兵場に連れて行き、毒を仕込んだ牛肉を与えました。
食べ終わるのを見届ける事なく、太宰先生はその場を後にします。
こうして先生の生活からポチが消えたのです。
と思いきや。
家について後ろを振り返ると、ポチがいました。
毒が効かなかったのか、先生の後をずっと付いてきたようです。
仕方なく太宰先生はその後もポチと一緒にいる事にしました。
この畜犬談、短くて読みやすいので普段読書しない方にもオススメです。Kindleなら無料で読めますし。
犬が大嫌いな方は共感出来るかもしれません。
犬と妙に意思疎通が出来ているような描写がそこかしこにあり、そこが冒頭でもあげたように実話か創作か判別出来ない理由でしょう。
「犬に愛想笑いしたからって向こうから寄ってくるか?」なんて突っ込みながら読むのもまた面白いです。
この話が実話だと仮定して、最後に一言言わして下さい。