PokerZoomグラインドへの案内状
はじめまして。PokerStarsでマイクロステークスのグラインダーをしているUSというものです(starsID:USentrance)。
さて今回は、最低レート(2NLz)からBRを築きつつ、次のレートを目指して駆け登る「グラインド」を目的とした人への記事です。これからポーカーを学ぶための方策を一つの記事で完結させています。
また、具体的なプレイ指針やハンドを解説するものではありません。
グラインドを行うにあたって要求されるツールや心構えなど、プレイ外のアプローチについて説明していきます。
グラインドには相当な根気が必要ですが、その一助になれば幸いです。
苦しいときもあれば嬉しいときもある
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1. セッションを行うにあたっての前提条件
・PC
下記のHUDというツールを扱うためPCは必須です。スマートフォンまたはタブレットしか所持していない人は購入しましょう。
ただし、所詮はトランプゲームなので、要求されるスペックは低いです。ポーカーアプリとHUDを同時に起動できれば問題ないのでノートPCでも構わないと思います。
後述するソルバーを導入する場合はその限りではありません。
・BR(バンクロール)
BRとはポーカーをする資金の呼称です。ポーカーは分散の大きいゲームなので、実力があっても運次第でBRを大きく減らすケースがあります。グラインドを続けていくためにも、BRの管理は重要です。
参入レートの30バイイン分は用意しましょう(2NLzでは$2×30=$60)。
・Preflop Range
配られたハンドについてプリフロップでどのように扱うか教えてくれます。記載されているプリフロップレンジは100BBのものです。実際にプレイする際にはオートリバイ機能を使うなどして、常に100BB周辺を保つことをオススメします(筆者は120BBを超えたら入り直してます)。
注意すべき点として、プリフロップレンジを絶対視し過ぎないことです。当然プリフロップレンジは重要ですが、標準から外れた相手に対しては普段と違う対応が求められることもあります。あくまでも基準として扱うのがいいですね。セッション中に確認できるよう工夫するとなお良いと思います。
Poker Snowie Preflop Advisor
Poker Snowieと呼ばれるAIがゲームを繰り返した末に完成したプリフロップレンジです。人間では扱いづらいシチュエーションも散見されますが、現在では標準的なプリフロップレンジの一つです。スマートフォンアプリ版もあり、UIも良い点が魅力の一つです。
ZeroS Preflop 100BBs
Run It OnceのコーチであるZeroSが、上記のPoker Snowie Preflop Advisorに手を加えたプリフロップレンジ。相手の額に対して非常に細かくハンドの扱いが設定されているので、具体的な指標としてとても優秀です。スプレッドシートを利用しているため、Snowie Preflop Advisorに比べて多少見づらいのが欠点です。
・HUD(Heads-Up Display)
オンラインポーカーでグラインドをするには必須のツールです。
プレイヤーの参加率やアクションなどの統計情報をセッション画面に映し出します。また、反省に必要不可欠なデータベース機能が備わっています。
セッション中の統計情報
セッションのデータ
プレイ履歴
現在主流なのはHoldemManager3とPokerTracker4です。どちらも機能的に大きな差異はありませんが、日本語に対応していた方がいいならHM3、Heads-UpやSPINを行うならPT4をオススメします。
Holdem Manager 3
Poker Tracker 4
・EquiLab
特定のハンド・レンジを設定し、それらのエクイティを計算してくれるツールです。また、特定のボードにおいて自分のエクイティを推測する練習ができるエクイティトレーナーも同梱されています。
反省時の検証、トレーニングに役立ちます。無料です。
https://ja.pokerstrategy.com/poker-software-tools/equilab-holdem/
ex. 便利なツール
・Stars Caption
HUD(データベース機能なし)やベッドサイズの拡張、ベットサイズの自動設定、プレイラインの表示など、セッション中に手広くサポートしてくれるツールです。
4面以上の多面打ちをするならオススメですが、必須ではありません。年間$24のサブスク制。10NL以下のリングゲームは無料で利用できます。
・PokerSnowie
ニューラルネットワークを利用したポーカーAI。Snowieと対戦するトレーニングモード、AIからのアドバイス、過去のセッションの分析ができます。
PokerSnowieの真髄は、タイムラグなく絶対的なプレイ指針が得られることです。そのため、メインターゲットとしてはオンラインポーカーのゲーム感を即座に吸収したい人になるかと思います。モバイルにも対応しており、手軽に利用できて継続的な学習に繋がることも魅力の一つでしょう。ライブでのポーカーしか打ったことのない人や、ゼロからポーカーを始める人にはオススメです。
欠点としては、25NLz以上のステークスでは役に立ちづらくなることです。既にPokerStarsZoom等で数十万ハンド打っていて、かつメインステークスでの収支がプラスである人にとっての必要性は薄いと考えています。
年間でのサブスク制です。
・Hand2Note
先程のHM3やPT4と同じくHUDの一つです。このツールの大きな特徴として、プレイヤープールにフィルタリングをかけて分析できる機能が追加されています。例えば、VPIP(参加率)が30%~35%の相手を対象としたフロップCB率を自分のデータベースをもとに抽出することができます。
具体的なスタッツから相手がどのような傾向にあるのか調査できる点は、特にZoomにおいては非常に大きな利点になると考えられます。
上級者向けのツールです。月ごとのサブスク制となっています。
・ソルバー(Pio solver, GTO+)
噛み砕いて言うと、ポーカーにおける絶対に搾取されない戦略を計算できるツールです。現代オンラインポーカーは、このツールをベースに成り立っています。
しかし、計算をする際の設定が非常に繊細で、上級者でなければ扱いきれません。また、お世辞にもUIが良いとは言えずそれなりの労力が必要です。
とにかく高性能のCPUとRAMが要求され、ハードウェア代も嵩みます。将来的にソルバーを使う展望を持っているなら、マルチスレッドでの性能が高いCPU、64GB以上のRAMを搭載したPCを準備するとよいでしょう。
膨大なコストが掛かるにもかかわらず現代ポーカーの礎となっていることが、このツールの凄まじさを物語っています。50NLz以上で勝ちたいのならば必要だと考えています。
Pio solver(Pro)のメリットはスクリプトに対応している点、およびプリフロップの計算が可能な点です。また日本でのユーザーがGTO+に比べて多く、解説記事が豊富な点も魅力の一つです。CPUは16スレッドまで対応しています。
GTO+のメリットはPio solverに比べて安く、動作が軽い点です。さらに、CPUのスレッド制限がありません。
Pio solver(Pro) $475(同時に二台まで可)
GTO+ $75(二台目以降+$20)
2. グラインドへの心構え
・考えることを(原則)止めない
セッションにおいても座学においても闇雲にやればいいというわけではありません。何も考えずに修練したところで長期的な実力には結びつかないでしょう。たとえその時点での結論が間違っていたとしても、考える習慣をつくることが肝要です。
ある課題について考える習慣をつけることでスキルが身につき、その点に割く脳内リソース量が減ります。これを繰り返すことで、考えられる領域が広がり、ステップアップに繋がります。
一点注意すべきなのは、ゲームの性質上仕方のない負けについて根を詰めすぎないことです(仕方のない負けか判断するのにもある程度の実力は必要なのですが)。実力に関係なく、負けてしまうことは避けられません。
もし疑問に思ったハンドがあれば、自分よりも確実に上手いと思う、信用に足るプレイヤー(長期的な成績で実力が証明できる人)に意見を求めましょう。
・万全の状態で挑む
かなり軽視されがちですが、体調管理はポーカーに取り組むにあたって相当重要な要素の一つです。プレイに関してのアプローチももちろん重要ですが、それを取り巻く環境も同じく重要だと考えています。
身体の調子やメンタルが悪いときには、良いプレイができないと断言できます(筆者は眠いときにプレイした結果、一瞬で1200BB溶けたことがあります)。
ルーティンをつくってプレイするのは良いことだと思いますが、だからといって無理にプレイしないようにしましょう。
また、セッション中に悪い状態になることも考えられます(ティルト)。ティルトしたときのプレイクオリティは目も当てられない程です。これはほとんどの人に当てはまるでしょう。感情が昂ぶって物を壊す人もいます(筆者は台パンした結果、手元のコーヒーがこぼれてPCがイカれ、-40000BB近くペイしました)。
これらの問題に立ち向かう手法を著した書籍が『メンタルゲーム』です。
個人的に、自分が読んできたポーカー系書籍の中で一二を争うほど役立ちました。ポーカーの勉強の土壌をつくる手助けにも貢献してくれます。
正直な話、オンラインポーカーを始めるにあたって最初に読みたい内容だと思います。
・座学をしっかり
ポーカーをプレイすることは楽しいので、セッションばかりやってしまう気持ちは理解できます。しかし、定期的に自分のプレイを見返すことは上達に欠かせない要素の一つです。
セッションが終わったあとには、タイミングを見計らってHUDを利用したレビューを行いましょう。前のセッションのレビューが終わっていないのに次のセッションを行うことがないようにしたいですね。上手くなりたいのであれば、セッションと座学の比率は1:1か、座学多めがベターです。
座学の内容としては自分のプレイを反省することがメインになると思います。レビュー以外で得た知識を自分のプレイに反映させるのは難易度が高いと考えているので、特に最初のうちは自分のプレイを見返してリークを減らすことが最重要だと思います。
プレイについて熟考したり、EquiLabで計算したり、Snowieで分析したり、ソルバーで検証したり、人によって方法は変わってくるでしょう。自分に合った書籍を読むのもいいと思います(古いもの、特に実戦的な書籍は参考にならないことが多いです)。
注意すべきなのは、インターネットの記事です(当記事も該当しますが……)。内容が玉石混交なので、自分で信頼性の可否がつかないうちは触れないのがベストです。情報の取捨選択を正しく行うには、相当なスキルが必要だと思います。
近頃では高額な値段で初心者をダシにする情報商材屋も増えているので気をつけましょう。
・勝てるレートを見つける
これに関して強く言及された記事を見た経験がないのですが、グラインドを行う上では重要です。BRの崩壊は金銭的損失だけでなく、モチベーションの低下を招き、ポーカーから離れる要因にも成りえます。
勝てるレートを見つけることはBRの安定だけでなく、精神面の安定にも大きく寄与するのです。
しかし、PokerStarsのZoomは険しく、2NLzでさえ勝ち組になるには相当な実力が必要だと思っています。これは私見ですが、2NLzで収支プラスの実力があるならば、日本のプレイヤープールでは上位5%以下にも入るのではないかと考えています。
もしZoomで勝てる実力がついていないと思うのであれば、通常のキャッシュゲームを回しましょう。
3. モチベーションを上げる
・目標の設定
目標を設けることで、明確な目的・意義を自らに認識させ、モチベーションの向上に繋がります。より具体的な目標であるほど良いでしょう。具体性に富んでいるほど、集中すべき点や成果が目に見えてわかりやすくなります。また、フィードバックが容易になるのも利点の一つです。
目標の設定について、自分は短期的・中期的・長期的なものに分類しています。
・短期的目標:セッションごとで意識すべき点
・中期的目標:月ごと、年ごとでクリアすべき課題
・長期的目標:将来的な展望
難易度の高すぎる目標は実践前から達成が困難であると認識してしまい、モチベーションの維持に寄与しません。セッションの動機づけになるような小さなものから設定すると良いでしょう。
・ポーカー以外の趣味で息抜きをする
負けセッションが続いているときにプレイするポーカーほど精神的に辛いものはありません。パラノイアや強迫観念に苛まれて、最善のプレイができないケースも多々あります。
ポーカー狂人はここで座学をしますが、普通の人はメンタルをリセットするためにも、息抜きをした方がいいように思います。
(筆者の趣味)
ポーカーを続けていく上で付き合い方を考えるのは永遠の課題です。長く付き合っていくためには、根を詰めすぎないことも肝要だと思います。
これはあくまでも経験上での話ですが、リフレッシュをすることによって固定観念や視点がリセットされ新たな知見が得られることもあるでしょう。
・コミュニティ
他者の介在が不可欠なので上記の方法に比べて扱いが非常に難しいです。既存のコミュニティに入ることは簡単ですが、メンバーのクオリティが担保されているかは著しい問題です。
とはいえ、自分でコミュニティを創設するには、多大な労力に加えてコミュニケーション能力が要求されます。質の良いメンバーを集めた後にも、自ら進んでコミュニティの管轄を行わなければなりません。また、ただの仲良しグループになってしまうケースも考えられます。もちろんそれが悪いわけではありませんが、プレイの向上を目的としたメンバーの中には離れてしまう人も出てくるでしょう。
コミュニティは、メンバーそれぞれにメリットがなければ成立しません。
さて、コミュニティの難しさについて語り尽くしたわけですが、もし自分に合ったコミュニティに所属できた場合には非常に強い武器になります。同程度の実力を持つ者同士で切磋琢磨できる環境であれば、メンタル面においてもプレイ面においても多大な恩恵が得られることでしょう。
以上の条件を満たせるコミュニティは、大抵の場合クローズドかつ所属メンバーが少数であると考えられます。
再三繰り返しますが、コミュニティはハイリスクであることを念頭に置きましょう。
おまけ: 2~25NLzの雑な特徴
・2NL
雑多なプレイヤープールで、レート全体の指向性あまり存在しないカオスな環境だと思っています。最低レートなので、勝つことを目的としていないような無茶苦茶なプレイをするプレイヤーも散見されます。
ひたすらバリューベットの練習をしましょう。
・5NL
2NLから上がってきた真面目なグラインダーが多いです(マイクロでは結構特異点です)。そのためひたすらバリューベットを打ってきます。特にリバーのベットはバリューオンリーだと言っても過言ではありません。
このレートではフォールドをすることが課題になってくるでしょう。
・10NL
5NLとは違ってレクリエーショナルもよく見かけます。バリューをひたすら打つパッシヴなプレイヤーとブラフをひたすら打つアグロなプレイヤーにキッチリ二分されているように感じますね。
自分のオープンに対してIPでコールドコールをしてくるプレイヤーが多いので、レンジの深い理解が要求されます。
・16NL
人数が少ないです。基本的に25NLzから落ちてきたプレイヤーが多いと思います。
プレイヤープールの狭さもあり、エクスプロイトの練習になります。
・25NL
上記の総合力が求められます。25NLzから始めるプレイヤーも多いようなので、そのような相手に対してはキッチリとバリューを取りたいですね。
このレートから明らかにプレイの良いプレイヤーが出てきます。
おわりに
オンラインポーカーを始めるにあたって、一つの記事で完結したものを見た経験がなかったので、今回このような記事を書く運びになりました。
現在、ポーカーの情報は有用なものから有害なものまで溢れかえっており、初心者が得たい情報にアクセスできないこともあると思います。そのような問題を解決すべく、簡素ではありますが、より詳細な情報へとアプローチするための構成を採りました。内容に関しては私見ではあるものの、できるだけ平易かつ簡潔に述べたつもりです。当記事がオンラインポーカー入門者にとっての受け皿になってくれれば幸いです。
わかりにくい点、フィードバック等ありましたらお知らせください。
読んでいただきありがとうございました。